捕虜の処遇4
「あの者達は、死んだのではないのですか?」
ハシバ国王がたずねた。
「いえ、違う次元に飛ばしただけです。
彼らに恐怖を植え付けるためにああいう演出をしましたが、今頃は帰る場所もわからず、さ迷っているといると思います。
国王様は、さっきの場所に兵を連れて来てください。そして、彼らと共にバルカ国へ行って、城を占領して下さい。私も行きますので、バルカ国に着くまでに城を攻める方法を相談しましょう。」
「わかりました」
「それじゃ行きます。ゼルダ様も一緒に行ってくださ
いますわね?」
「もちろん、お供します」
「じゃ、行きましょう」
紫音はゼルダと手をつないだ。
ハシバは、そんな二人を微笑ましそうに見ていた。
やがて二人は、空気に溶け込むように消えていった。
(さて、わしも準備をしないと・・・)
ハシバは、メイチを牢屋ではなく見張りを置いて城の
部屋に入れることにした。
彼は、部下にメイチを城の部屋に連れていき、見張り
を付けるように命じた後、部隊を連れて見晴らし岩へ
行く準備を始めた。
バルカ国の兵士達はさ迷っていた。
さ迷うと言うより、同じ場所から抜け出せないでいた。
地面が割れて、その中へ落ちたと思った彼等は、気が
付くと同じ場所に立っていた。
「ここはさっきの場所じゃないか」
「地面の中に落ちたんじゃなかったのか?」
「いったいどうなってるんだ?」
彼等は口々に言い合っていたが、メイチ国王がいない今はタノールの城に戻るしかないと思い、城に向かって歩き出した。
ところが、いつまでたっても城が見えてこなかった。
よく見ると周りの景色も変わっていなくて、後ろを振り返ると見張らし岩が見えていた。
不思議に思って足元を見ると、体と足は動いているのに地面は動いていなかった。
彼等は試しに後戻りをしてみた。
見張らし岩が近付いて、それを右手に見ながら通り過ぎ、見張らし岩を振り返りながら歩いて行くと、ある場所からぴたりと、岩の大きさが変わらなくなった。
彼等は各々、あちらこちらと行ってみたが、結局見張らし岩を中心にある一定の距離以上は行けないことが分かり、みな途方にくれて、岩のそばにうずくまってしまった。
かなりの時間がたった時ふと陽がかげり、彼等は空を見上げて仰天した。
空を覆うほど巨大な顔が二つ、彼等を見下ろしていた。
「よく聞きなさい」
辺りを、圧する声が聞こえた。
紫音の声だった。
その隣にはゼルダがじっと彼等を見ていた。
「メイチ国王は、イシュタル国の捕虜となりました。
バルカ国は、今からイシュタル国のものとなります。素直に降伏するならば、元の世界へ戻してあげましょう。その気がないのなら、このままこの世界で朽ち果てていきなさい。」
彼等は悟った。
この人は普通の人間ではない。
神か、或いはそれに等しい者だと思い、とても敵うものではないと思った。
彼等は、口々に降伏を述べ、紫音に従うことを誓った。
彼等が紫音に誓い終えた瞬間に、世界が暗くなり、そして元の景色に戻った。
ただ違っていたのは、周りをイシュタル国の兵士達に取り囲まれていたことだった。




