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紫音の少女  作者: 柊 潤一
宿命
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ゼルダの決意

夕食後、ゼルダは部屋で紫音の事を考えていた。


 あの日、紫音に連れられて宇宙へ行き、二人の時間を過ごし、知らなかった事を知り部屋へ戻ってから自分のことを考えてみた。


 父と母の愛を受け、何不自由なく気ままに暮らしていたが、我が身の将来を思い悩む頃に、慕っていた母が亡くなった。


 心の支えを失くした気がして、母を奪った何かを呪い、自暴自棄になった時もあった。


 死について考えてもみた。


 しかしわからない事だらけであった。


 自分はどこから来てどこへ行くのか。


 自分は何者なのか。


 国王の息子という立場に生まれ、何不自由のない生活だったが、国王になるのは嫌だった。


 この国の民から慕われている父が、常にイシュタル国の事で悩み苦労している姿と、母がそれを陰から支えている姿をいつも見ていた。


 そんな二人を誇らしく思っていたが、自分はもっと静かな人生を送りたいと思った。


 父の期待を重荷に感じるときもあった。


 そこへ紫音が現れた。


 どこかしら母に似ている彼女にゼルダは惹かれた。


 その紫音があの日に言った、あなたが変わって下さい、という言葉の意味を、あれからずっと考えていた。


 彼女は、国王になるべきものを持っているからこのような所に生まれた、とも言った。


 持っているものとはいったい何なのか?


 それは当然父も持っているのだろう。


 父はいつも国民のことを話していた。


 豊作で喜んでいる者達のことを、母や側近の者達に嬉しそうに話していた。


 また、不幸な者たちの話を聞くと我が事のように悲しみ、その者達が不幸を乗り越えた話を聞くと我が事のように喜んだ。


 そんな時の父と母は本当に幸せそうな顔をしていた。


 そんな二人を見てゼルダは、母の様な素敵な女性と人生を共にするのが幸せなのだと思っていた。


 そして紫音と知り合い、彼女が治療した人達が喜んでいるのを見る彼女の顔が、幸せそうに輝いているのを見て、この人と人生を共にしたいとゼルダは願ったのだった。


その彼女に教えられた事で、彼は父の後を継ごうと思った。


朝、町を歩きながらその思いでザイールの町の人々を見れば、以前から抱いていた思いであったが、すべての人々が尚更いとおしく思えた。


ゼルダの事を見知っている者達と挨拶を交わしながらゼルダは気がついた。


父も母も苦労していたのは、そして母がいない今、父が孤軍奮闘しているのは、この国の王として生まれ、その王の妻として生まれ、この国の人達の安全を守り生活を支えていく事を幸せに思っていたのだと。


ゼルダは紫音の言った言葉の意味をいま噛みしめていた。


自分も又国王になることが生まれてきた意味ならば、それを全うしようという決意と共に、自然と紫音の事が浮かんだ。


彼女もまた、患者に尽くすことを幸せに思っていたのだ。


彼女と共に、この国の人達のために生きていきたい。

 

ゼルダはこの二日間、自分の気持ちを確かめるために紫音には会わずにいたが、いま無性に彼女に会いたかった。 

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