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紫音の少女  作者: 柊 潤一
宿命
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ゼルダの戸惑い

(あの星の群れの中の一つが地球です。この宇宙にはあの様な星の群れがいくつもあります)


(ううむ・・・紫音殿、この宇宙というのは一体どれだけの広さなのだ。私たちの住む星でさえちっぽけなものじゃないか。あそこにいる私たちにすれば、あの地球はとてつもなく広いぞ。その地球さえちっぽけなものなら・・・)


(それは、途方もない広さとしか言えません。この宇宙には、あのような星の群れが数限りなくあります。ただ・・・)


(ただ・・・なんだ?)


(広いとか大きいとか・・・・そんな考え方は捨てた方がいいと思います。大きい小さいやそのほかの尺度は、この世で体を持つ者の目から見たものですから。例えばあなたの心に大きさはありますか?)


(いや、それは・・・・大きいか小さいかわからぬ)


(心のように形のないものには、大きい小さいはないのです。時間もです。時間というのは、物が変化していく過程を表していますが、心が感じる時間は長くもあり短くもあります。それは心には時間がないからです。時間がないということは始まりもなく終わりもない永遠ということなのです)


(それでは、そういう心を持つ私達は一体何者なのだ?なにかの拍子で生まれて、死ねば消えていく。それだけじゃないのか?)


(あなたは今、この宇宙を見ています。あなたの心の中にこの広い宇宙が収まっているのです)


(言い換えると、あなたの生命がこの宇宙を感じているのです。それが出来るのは、始まりの無い遠い昔からあなたがこの宇宙と共にいたからです)


 紫音はもう一度ゼルダを地球の前に連れていった。


(この星もあなたも同じ生命を持っています。この世界で形のあるものは五つの要素を持っています。それは地と水と火と風と(くう)です)


(地とは体です。地球は水をあの体に蓄えています。あなたの体にも水があります。地球はマグマを燃やして熱を持っています。あなたの体も熱を持っています。地球は気圧の差で風を起こしています。あなたも息をして風を起こしています。そしてそれらを活動させているのが空、生命です。ゼルダ様、あなたもこの星も同じなのです。)


(それでは俺も、この地球のような星の形に生まれることがあるというのか)


(それはその生命の性格によります。生き物は活動している時に様々なことをします。それが生命に刻まれて癖になるのです。そして死ねば生命も消えるのではなく宇宙に溶け込むのです。そしてまた生まれて・・・を永遠に繰り返しているのです。)


(この宇宙はすべて原因と結果で成り立っています。その仲立ちをしているのが縁というものです。あなたが一国の王の子として生まれたのも、あなたが王になるものを持っていて、イシュタル国でするべき事があって、ハシバ王に縁があって生まれてきたのです。)


 ゼルダは紫音の話を聞いているのではなく、紫音が思っている事を直接心で感じ、理解しているのだった。


(人間が素晴らしい生き物なのは、過去にとらわれず今からの行動で未来を変えていけるからです)


 ゼルダは考え込んでいた。


 たまたま国王の息子として生まれてきて、いずれは父の後をついで国王として生きて、死んでいくとしか考えていなかったものが、根底から覆されたような気分だった。


(もう戻りましょうね。目を開けてください)


 紫音とゼルダは、目を開けて部屋に戻って来た。


 ゼルダは戸惑っていた。


「紫音殿、私は国王の息子になど、生まれてきたくはなかった。もっとのんびりとした人生を過ごしたいのだ。」


「望む望まないに関わらず、あなたは民の主となるべきものを持っているのです。それがあなたの宿命です。たとえあなたがこの国を出てどこかに行っても、そういうものを持っている限り、またその場所で多くの人たちの主となるでしょう。」


 ゼルダは黙っていた。


「国王になる辛さが嫌なら、あなたが変わって下さい。あなたが変わらない限り、環境も変わりません」


ゼルダはしばらく考え込んでいたが


「そろそろ帰りましょうか」


 と、唐突に言って立ち上がった。


「送ります」


二人は連れ立って歩いた。


 紫音の部屋まで来たゼルダは、おやすみなさいと言って立ち去っていった。


紫音は、ゼルダの後ろ姿が見えなくなるまで見つめていた。

ゼルダ王子は言葉少なに帰っていきました。

見送る紫音の心境はいかに・・・

紫音がいじらしくて、少し可哀想ですね。

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