カガリの妻の治療
空間を抜けた三人の目の前に、タウロの町が広がっていた。
「う~ん・・・・こんなことがあるのか」
ゼルダは呟いて振り向いた。
空間の向こうには紫音の部屋が見えていた。
「さぁ、行きましょう」
紫音は空間を閉じ、歩きだした。
町に着き、ゼルダが門番に名前を告げると、門番はしばらくお待ちください、と言って走っていった。
しばらくして迎えがやってきた。
「お待たせしました。私はカガリ国王の部下でハビエルと申します」
「ハシバ国王の息子のゼルダです。こちらが紫音様で、こちらは紫音様のお供のシュリです」
「三人だけでいらっしゃったのですか?警護の者も連れずに?」
「わたくしが、ゼルダ王子様にそうお願いしたのです。大勢で来るのは嫌でしたので」
「そうでしたか。でもお気をつけ下さい。この辺りにもバルカ国の兵がいるようですから」
「お気遣いありがとうございます」
「ではまいりましょうか」
三人はハビエルに案内されて城の中へと入って行き、応接室に通され、ハビエルは出て行った。
しばらくして国王のカガリと息子のガゼルがやって来て、五人は挨拶を交わしあった。
「実は私の妻が病気なのです」
挨拶が終わり、カガリが口を開いた
「医者には、余命幾ばくもないと言われました。何とか治して頂けないでしょうか?」
「取りあえず診てみましょう」
「ご案内します」
紫音達が通された部屋には、痩せ細った女性が寝ていた。
紫音は女性に近寄り、毛布をめくって着衣の上から身体に触れ、全身を調べた。
右の肝臓に癌の腫瘍が出来ていた。
「右の肝臓に悪い瘤が出来ていますね。今から治療します。捨ててもいい毛布を一枚用意してもらえますか?」
ガゼルが部屋の外で待機している侍従にそのことを告げ、すぐに戻ってきた。
毛布がくる間、紫音は女性の着衣を脱がせて、さらに詳しく全身を調べた。
「他に悪い瘤はないようですから、肝臓だけ治療すれば大丈夫です。お婆さん、毛布を体の下に敷いて下さい」
シュリ婆は届けられた毛布を受け取り、女性の体を少し浮かせてその下に敷いた」
紫音は女性のお腹に手を当てて目を閉じた。
紫音の身体から紫色の霧が出て煌めき、旋律を奏でた。
「おぉ・・・これは・・・」
カガリ国王とガゼルは、感嘆の声を漏らしてそれを見つめた。
紫音は右肝臓の正常な細胞に、癌細胞との結合を切り離すよう命令した。
癌細胞は徐々に肝臓から剥がれ、やがて肝臓から切り離された。
紫音は癌細胞の塊を脇腹の内壁へ押し付けた。
癌細胞が触れた皮膚の層の組織がそれを飲み込むように左右に開き、ゆっくりと体外へ押し出していった。
女性の脇腹からは、赤黒い肉片が皮膚から染み出てくるように段々と大きくなり、やがてぼとりと布の上に落ちた。
「これが奥様の肝臓に出来ていた悪い瘤です」
カガリ国王は、妻の身体から出てきた肉片をじっと見つめていた。
「これが妻を苦しめていた物ですか」
「そうです。これで大丈夫ですが、身体の衰弱がひどいですね」
「ここ何日間かは、ろくに食事も食べていませんでしたから・・・」
「そうでしょうね。あるだけの種類の果物を持ってきてもらえませんか?」
紫音はそう言ってから女性の枕元の椅子に座った。
そして女性の心に意識を重ね、暗く雲がかかっている様になっている彼女の心に、自分の生命力を注いだ。
暫くして彼女の心の中は雲がなくなり、ほんのりと明るくなってきた。
女性は目を覚まし、心配そうに見守っていたカガリを見た
「あなた・・・」
「おぉ、目が覚めたか。気分はどうだ?」
「今、何かとても温かい物が入ってきました。それでとても気分が良くなって・・・身体の痛みも不思議に無くなっています」
「そうか。良かった、良かった・・・」




