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紫音の少女  作者: 柊 潤一
宿命
37/75

他国へ治療に行く

いよいよ、紫音とゼルダ王子の仲が深くなっていきます。

二人の最初のデートは・・・


 国王からの晩餐を受けた次の日から、再び紫音の治療が始まった。


 そして紫音の噂は他国にも伝わっていった。


「父上、何かご用事でしょうか」


「おお、ゼルダか。まぁそこに座ってくれ」


昼もだいぶ過ぎた頃ハシバ王に呼ばれたゼルダがやって来た。

 

執務室で机に向かっていたハシバ国王は、ゼルダにソファーに座るように勧め、執事を呼んでお茶の用意をさせた。


「実はな、紫音様の事が他国にも伝わっているらしいのだ。いくつかの国から、紫音様の治療を受けさせて欲しいという申し出がきている。重病人で動かせぬゆえ来て欲しいという国もある。お前はどう思う?」


「ふむ・・・行っていただくのは危険だと思いますし、来てもらうにしてもわが国は今、戦争の最中ですからね」


「うむ。どうしたものかの」


「戦争中だと言って申し出を断っても、いつかは紫音様の耳にも入るでしょう。そうなると多分気を悪くされると思います」


「そうじゃの・・・黙っているわけにもいかんし、行くというのを止めるわけにもいかんし」


「事情を説明して、紫音様の判断に任すしか仕方ないと思います」


「うむ。やはりそうするしかなさそうじゃな」


 ゼルダはじっと何かを考えていた


「父上、お願いがあります」


「ん?なんじゃな?」


「紫音様が他国へ行かれる時は、私も護衛として一緒に行かせてください」


「護衛といっても・・・部下に行かせれば良いではないか。お前はこの国にとっては無くてはならないのだぞ」


 ハシバ国王はゼルダ王子をじっと見つめた。


「お前・・・紫音様に惚れたか?」


「お願いします。父上」


 ゼルダ王子も視線に耐え、見返していた。


「仕方ない。お前の好きにしろ」


「我儘を言って申し訳ありません」


「だが忘れるな。お前はこの国の跡継ぎなのじゃ。気を付けてくれ」


「分かっております」


「では紫音様の事はお前に任す。報告はしてくれ」


 ハシバ国王は机に行き手紙の束を持ってきてゼルダに渡した。


「頼むぞ」


「分かりました。ではさっそく紫音様の所へ行って参ります」


 紫音は全ての患者の治療を終えて一息入れていた。


 そこへゼルダ王子がやって来た。


「お邪魔してよろしいでしょうか?」


「あ、ゼルダ様。いま治療が終わったところですのよ」


「そうですか。それはちょうど良かった」


「何かご用時ですか?」


「ええ。しかし用事がなければ来ては駄目ですかな?紫音殿に会いたいから来たという理由では、駄目ですか?」


「まぁ、ゼルダ様ったら・・・いつからそんな意地悪になられたの?」


 [ははは、いやこれは失礼しました。実は他国から紫音殿に治療をして欲しいという申し出がきているのです」


 ゼルダ王子は手紙を紫音に渡し、読み終わると他国に行くのが危険な事と、来てもらうことの難しさを説明した。


「他の国に行く途中で襲われるかもしれません。もちろん護衛は付けますが、私も紫音殿をお守りする為に一緒にまいります。」


「まぁ・・・ゼルダ様自らこられるのですか?」


「はい。紫音殿は私にとっても大切な方ですから」


 紫音はゼルダ王子を見つめ、何かを決意した。


 紫音の紫の瞳の色が少し深くなった。


「どうされますか?行かれますか」


「もちろん行きますわ。それと、護衛はゼルダ王子様だけにしていただけますか?」


「私だけでは、何かあったときに守りきれません。もちろん、私は命に代えても紫音殿をお守りしますが」


「他の方に私のことを知られたくないのです。出来るならゼルダ様も来ていただかないほうがいいのですが・・・」


「それはいけません。私が困ります。」


「ではゼルダ様だけにしてください」


 ゼルダ王子は困惑した顔で紫音を見た。


「仕方ない・・・ではそうします。それで、いつ行かれますか?」


「ゴダード国とファルアーク国に重病人がいます。近いほうの国を午前中に、もう一つの国を午後からにしましょうか。明日にでも行きますから連絡を取っていただけますか?」


 ゼルダ王子は驚いた。


「一日に二つも行かれるのですか?それは無理です。移動するだけで二日はかかります」


「大丈夫ですのよ。お願いですから私の言う通りにして下さい」


「そうですか・・・じゃすぐに連絡をしますが・・・」


「お願いします。その他の国もこちらから行きます。二つの国が終わってから連絡をお願いしますね」


「わかりました・・・」


 ゼルダ王子はしぶしぶ返事をし、部屋を出ていった。


 ゼルダ王子を見送ったあと紫音は、シュリ婆の部屋へ行きドアをノックした。


「お婆様、入っていい?」


 ドアが開いてシュリ婆が顔をのぞかせた。 

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