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紫音の少女  作者: 柊 潤一
宿命
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不穏な動き

「メイチ様、ハウラから手紙が届きました」


 モハドはそう言って、ハウラから送られてきた手紙を差し出した。


 メイチというのは、イシュタル国と戦火を交えているバルカ国の国王で、腹心の部下がモハドであった。


 二人は今、メイチの執務室で密談の最中だった。


 メイチは渡された手紙を読むと


「紫音と言う娘は不思議な術を使って病を治すらしい」


 と言いながら手紙をモハドに渡した。


「そのようでございますな」


 モハドは手紙を読んでメイチに返した。


「わしのところへ連れてくると言っておる。手土産のつもりらしい」


「ハウラの言うのがまことならば、その娘使えますな」


「なに、嘘であっても美しければわしのものにするまでじゃ。まことであればなお良いがの」


 メイチは猪のような顔に下卑た笑いを浮かべた。


 メイチはずんぐりとした体に首が短く、痘痕の浮いた顔に鼻が大きくて逆に目が小さいため、受ける印象が猪であり無類の女好きであった。


「ハウラがその時には力を貸して欲しいといっておる。お主、打ち合わせをして力を貸してやれ」


「承知いたしました」


 バルカ国は元々小さな国で土地も痩せていて取れる作物も少なく国力もなかったが、5年前にモハドがこの国を乗っ取ってからは、近隣諸国を攻めては併呑していき、今やイシュタル国に匹敵するほど大きくなっていた。


 モハドという男は頭が良く(はかりごと)に長けていて、メイチの部下になってからはその才能でメイチの右腕になっていた。


 ハウラをバルカ国へ寝返らせたのもモハドであった。


 一方イシュタル国は、国も大きく土地も肥えていた為に国力もあり、ハシバ国王の代になってからは兵力にも力を注いだ為、武力も並々ならぬ物を持っていた


「しかしイシュタル国は手強いのぉ。町をひとつ落としたくらいではびくともせんわ」


「ここはやはり気長に待つのが得策でしょうな。正面からぶつかっていっても損害が大きくなるばかりで何の得もありませぬ」


「うむ、わしもそう思う」


「ハシバの部下に裏切らせるのが一番よいのですが、ハシバという男はよほど部下に信頼されていると見えて、めぼしいのがおりませぬ」


「うむ……まぁ、あわてることもあるまい。この国も今やイシュタルと肩を並べるくらいに大きくなったからな。ゆっくり待てばよいわ」


「そのうちハウラが何かしてくれるやもしれませぬ」


「あの男も紫音と云う娘が現れてから切羽詰まっておるからな。わしの所へ来るにも手ぶらでは来れんのじゃろ」


「左様でございますな」


「わしは出かける。後は頼むぞ」


「承知いたしました」


 バルカは、メイチが部屋を出て行った後も暫く一人で何やら思案していたが、やがて部屋を出て自室に戻り、要請があり次第すぐに兵を差し向ける旨の返事をハウラに書き、部屋を出て行った。

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