第4話 姉妹
次の日、俺は朝早くに目覚めた。
起きる時間を言っておくべきだったか、廊下に出てうろうろしていると寝起きのリーゼさんに会った。欠伸をしていて少し眠そうだ。
「おはようございます。」
「ふぁ~あ……。あっ!ロイ様!起きていらっしゃったんですね!少しお待ちください!」
バタバタと行ってしまった。待てって言われたからうろうろせずにここで待つか。
しばらくするとルナさんがメイド服のスカートの裾を持ちながら走ってきた。
「すみませんロイ様。朝食の準備ができました。」
「こっちこそごめん。朝何時に起きるかとか言っといたほうがよかったね。」
「そうですね。おっしゃってくだされば朝勃ちの処理に参りましたのに。」
「……そういうのはまだいいです。」
「“まだ”ですか。」
「今後お願いするかもしれません。」
「まぁ。」
ルナさんについていく。俺は会話の主導権を完全に奪われないようにセクハラはセクハラで返してみる。内心必死だ。
ルナは俺に対して好意的に接してくれるが、これは“ラブ”ではなく“ライク”の気持ちしか抱いていないだろう。勘違いしてしまいそうだが、これがサキュバスの会話のノリなのだ。慣れるのは大変そうである。
それにしてもこの人走って来たのに息が乱れてないんだけど、これがメイドスキルなのだろうか。
「そういえば、一日三食が主流なの?」
「ええ、基本的にそうですね。人間の冒険者とかだと一日二食の人も多いと聞きます。」
「なるほど。」
食堂に到着するとリーゼさんがいた。
リーゼさんと一緒に朝食をとる。
朝食のメニューはパンとスープでパンはライ麦のパン――いわゆる黒パンで固い。味は嫌いではないが。
スープはめちゃくちゃおいしかった。聞いてみるとルナさんが作ったのだとか。
「今日の予定で希望ありますか?」
「俺は城とか見て回りたいな。」
「ええ、勿論構いませんよ、ミーナを案内につけます」
「ありがとうございます。」
朝食を食べ終えて廊下に出るとミーナさんが立っていた
「城を案内するよう言われてます。どこに行きます?」
「じゃあまずは宝物庫かな。」
「……今あそこほぼ何もないですよ?」
「いいからいいから。」
ミーナさんと宝物庫に向かう
「ここが一応宝物庫になります。」
宝物庫に入ってみると言われた通りあまり物自体おいていなかった。
その一区画に埃のかぶったガラクタのようなものばかり置かれている場所があった。
「これは?」
「ええっと……色々と売りに出した時に価値がつかなそうだから売られなかったものですね。ほとんど価値はないです。」
「へぇ……。」
ガラクタ達を見て回るとボロい壺のようなものが置いてあったのに目を引かれた。
「ここにあるものってもらっていい?」
「?どうするんです??」
「いや、スキルの実験台にしようと思って、多分壊れちゃったりするから」
「構いませんよ~どーせ価値がないものですし、処分するのもめんどくさくて放置されてるだけですから。」
了承も得たところでスキルを使ってみる。
《ユニークスキル「真の王の器」が発動しました。》
《「見る目の分かる人にはわかる素晴らしい壺」を取り込みました。スキル「鑑定Lv10」を獲得しました。》
……絶句した。
凄い掘り出し物だった。芸術なんてわかんないし適当なのにスキル使ったのに奇跡が起きた。
自分には芸術センスはない。名画と呼ばれるものを見ても良さがわからないし、現代アートなんて更に意味が分からない。
前に現代アートで「天井から糸でペンキの缶を吊るし、缶に穴を空け、揺らしてペンキを紙に垂らしたやつ」っていう絵なのかすらわからないやつが1億円以上の価値がついたというのを聞いたが自分にはまったく意味が分からなかったし。
まあ、結果オーライってことでスキル詳細を見てみよう
詳細
スキル「鑑定Lv10」・・・物の名前、詳細や人のステータス、その詳細を閲覧できる。自分より低レベルの鑑定の無効化する。
……ステータス閲覧って貴重な魔道具が必要って聞いたんだけどこのスキル凄すぎないか?たぶんLv10だからなのだろうが、ステータスを見る方法で鑑定スキルの方法が聞かされていなかったから、鑑定Lv10は持っている人がいない、もしくは持っている人が少しがいるが隠している。のどちらかだろう。ありふれたスキルではない。
「あの……どうされました?壺消えちゃいましたけど。」
「あ~スキルで消えちゃった。別に何ともなってないよ。」
適当にごまかした。ユニークスキルは隠した方がいいだろうからな。
「どんなスキルなんですか?」
「さぁ?物に作用するってことしか分からなくて」
うまくごまかせない。どうすれば。
「ん~?……まあいいですけど。」
言いたくないらしいことを察したのかスルーしてくれた。
さて、まだ掘り出し物があるかもしれないから鑑定Lv10を使ってみよう
「錆びた燭台」「ボロい木の箱」「ただのいし」
色々鑑定してみるが碌なものがないな、最初の壺が凄すぎただけか?
半ばあきらめながら鑑定を続けていると掘り出し物っぽいやつを見つけた。
「伝説の魔導師の杖」・・・太古の伝説の魔導師が使っていた杖。見た目はボロイが凄い力を持っている。
これは凄そうだ。取り込んでみよう。
《ユニークスキル「真の王の器」が発動しました。》
《「伝説の魔導師の杖」を取り込みました。スキル「全属性魔法適正」を獲得しました。》
詳細
スキル「全属性魔法適正」・・・全属性の魔法が手に入る才能、適性がないと魔法を使うことはできない。
適性がないと魔法使えないのか。女神に能力が欲しいとは言ったけど下手したら魔法使えなかったな。
例えるとゲームの本体が手に入らなかったらソフトあってもどうしようもないし。
今は本体が手に入ったけどソフトがない微妙な気持ちだ。
まあ、必須スキルだろうし。よかったよかった。
「うん。もう一通り見たかな。」
「そうですか。次はどこに行きます?」
「んー?武器庫かなー。」
「……はい。ではこちらです。」
ミーナさんが案内してくれる。なんか微妙なところを回っているせいでミーナさんのテンションも上がらない。
そうだ。ミーナさんを鑑定してみよう。
ステータス
名前:ミーナ
種族:サキュバス
職業:メイド
Lv:1(経験値0/10)
年齢:119
HP:200/200
MP:300/300
筋力:110
耐久:105
素早さ:120
称号:なし
魔法:「初級無属性魔法」
スキル:スキル「掃除Lv2(熟練度7/20)」「性技Lv5(熟練度0/50)」「浮遊Lv1(熟練度2/10)」「火属性魔法適正」「無属性魔法適正」
耐性:なし
状態:なし
おお、非戦闘員の人族のステータスより軒並み高い。
スキルの熟練度表示が気になる。これは熟練度がたまるとレベルが上がるということでいいのだろう。
Lv1からLv2に上げるのに熟練度10、Lv2からLv3に上げるのに熟練度20が必要。といった感じのようだ。
そうするとおそらく鑑定Lv10に熟練度表示がなかったのは……カンストしていたのか。
あの壺本当に凄かったんだなぁ。
後、気になるのは浮遊Lv1か
詳細
スキル「浮遊Lv1」・・・地面から一定の高さを浮遊できる、移動速度は非常に遅い。
これはレベルが上がると移動速度が上がるパターンか。
便利そうなスキルなのになんで使わないんだろう。
「あのさ、その翼だけど……」
「ああ、これ?飾りですよ。ご先祖様は飛べたとかいうけど私たちはできないから。」
「え、じゃあ飛べないの?」
「浮くことぐらいはできるけど移動速度が遅すぎて全く使えないです。」
そうか。仮説だが「飛行」かなんかのスキルの遺伝とかで弱まって「浮遊」になった可能性があるな。
熟練度でスキルのLvが上がることが浸透していないのか?
「浮く練習したら早く動けるようになったりしないの?」
「ステータス見たことないからこれがレベルのある――成長するスキルなのかわからないですし、まずこの遅さじゃレベルが上がっても高が知れてるから練習する人なんていないですねー。」
「なるほど。」
そういう感じなのか。確かに前の世界では努力をあきらめる人も大勢いたけど、熟練度ってシステムはおそらくやっただけそのまま結果が出るだろうし努力に無駄が全くなさそうなのにな。
その後武器庫も見たところ一応それなりにってところだった。
鉄の装備はちゃんとあったが、相手がミスリルなどの装備だとどうしても差が大きいらしい。
兵法などは確立されているのか聞いたところ、あまり発達していないらしい。
というのも人族は作戦を立てて戦うことはあるらしいが魔族は作戦などあってもなくても対して変わらないという思想が強いらしい。
これはいいことを聞いた。
「武器庫の次はどこ行きます?」
「んー、ミーナさんのおすすめスポットを聞きたいな。」
「ミーナって呼び捨てで呼んでくださいよ。[ミーナさん]って[皆さん]が間延びしたみたいじゃないですか。なんか違和感ありますし。」
「ミーナがそういうなら。」
「はいロイ様。それでおすすめの場所でしたか……。色々ありますよー。」
「じゃあ色々行ってみよっか、案内よろしくね。」
「はい!」
ちょっとミーナのテンションが上がった。ルナさんとは反対で感情が読みやすい人だな。
「そういえば武器庫見てて思ったけどこの国って鍛冶屋とかいるの?」
「今はいないですね。あ、でも出来る人なら心当たりありますし工房もまだ残ってますけど。」
「そうなんだ。」
なんとなくだけど取るべき方策が見えてきたかな。
その後ミーナといろんなところを回った。「ここがサボりスポットでして~」とかいろいろ教えてくれたし、退屈しなかったのでミーナが案内でよかったなと思った。
「ルナさんにも聞いたけどミーナってなんでまだ城仕えしてるの?はっきり言ってこの国に未来があるようには見えないでしょ?」
「そうですね……。なんとなく?というか。母親もずっとここで仕事してたのでこの場所が好きなんですよ。」
「そっか。」
今日だけでもミーナがこの場所を凄く好きなことは伝わってきてた。
「あ、でもお姉ちゃんがいるからってのもありますね。喧嘩することもありますけどお姉ちゃん子なので。」
「そっかそっか。」
凄くいい姉妹だな。羨ましいほどだ。
この国を好きになれそうな、そんな気がした。
9/5 「状態異常」の項目を「状態」に修正
9/23 ミーナの口調の変更
10/19 少し表現を変更