第2話 国が滅びそう
メイドに「ロイ様」と呼ばれるのに前話で主人公がメイドへの自己紹介を省いていた矛盾が発生したので前話を修正しました。名前を名乗るだけなんで読まなくても全く問題ないです。先が思いやられます。
「えっ!!どういうこと!?」
「えっと、順番に説明しますね。この国は半島とはいえ海に強大な魔物が縄張りを持っておりまして漁業ができません。」
ふむふむ、ファンタジー世界ならではの問題ですな。
「それで農業とミスリルの採掘で生計を立てていたんですが、農業がうまくいかず、このへんの土地で簡単にとれて高く売れるミスリルの採掘に人々が皆移り、ミスリルの輸出、他の物全て輸入の状態で暮らしていたのですが、ミスリルを堀り尽くしてしまったようで……。」
ああ、そんな国聞いたことあるわ。人々が簡易的に金が入りすぎて「他の仕事はしたくない。」って言い張るから問題になってるとかなんとか。
「そして農業に全面的に移っても全くと言っていいほど生計が立てれず……。」
そらそーよ。
「奴隷として国民をオーク国に輸出して生計を立てていまして……。」
マジでか。国家として終わりしか見えない。
「先日オーク国に宣戦布告されました。もうダメです。」
リーゼさんが泣き崩れる。
双子も涙を浮かべている。
「…………。」
凄い深刻だった。ヤバい。あの女神なんてとこに送ってくれたんだ。魔王になってエンジョイライフじゃなかったんか。
「その…………降伏とかしないんですか?」
「オーク国の奴隷の扱いは最悪です。ならもういっそのこと戦って死んだ方が楽なのではという状態です。」
そんなところに奴隷を輸出するしかなかった辺りでダメじゃんか。
俺はどうしたらいいのか……。
「ええっと……今後の身の振り方にしても情報がとにかくほしいのですが。」
何ができるかわからんけどもとりあえず情報だ。
全く何していいのかわからん。
「……はい。前王は奴隷輸出が始まってから即位されたのですが、細かく文書だけは作っておられたので。ルナ、取ってきて」
「はい、かしこまりました。」
ルナさんが退出する。
一気にお通夜ムードだ。
「あの、お茶美味しいですね。」
気まずい、会話を続けたい。
「そうですね、ミスリルを採掘していた時は最高級品を輸入していたのですが。」
リーゼさんが遠い目をしながら言う。
お通夜ムードが変わらない、なんとかならんのか。
「でもでも、おいしいですよね、そのお茶」
ミーナさんがフォローしてくれるええ子や……。
「ミーナさんはいつからここで働いてるの?」
「お母さんがここで働いていたので、子供の頃から働いてましたよ。110年前かな?」
お茶吹いた。人間とスケールが違ったっぽい。
「ああ、失礼ですがミーナさんはおいくつ?」
「すみません人間とは寿命が違いますもんね。119歳です、120歳で成人ですのでもうすぐ成人します。」
その年齢で未成年なのか……。
「ちなみに処女です。」
お茶吹きそうになった。
ちなみにリーゼさんは無反応だ、サキュバスの下ネタ耐性は高さそうだ。
「えっとリーゼさんは。」
「永遠の120歳です。」
……永遠の18歳的なフレーズで返された。
「えとえと、ロイ様は?」
「俺?…………22です。」
「若っ!……っていうか幼っ……。」
「元人間だしなぁ……。」
この国で年功序列最下層だな俺。
「そういえばロイ様は違う世界から来られたのでしたよね?どんなところなのでしょうか??」
ミーナさんが目を輝かせて訪ねてきた。
「そうだなぁ……魔法がなかった。魔族がいなかった。」
「ええっ!……。」
「ちょっと想像がつきませんね……。」
凄く驚かれた。魔法で文明発達してたら想像つかないよなぁ。ものすごく原始人な想像されてそう。
「ええっと……魔法がなかったために科学という分野が発達していまして、電気……雷の力などを利用して手紙を一瞬で世界中に届けたり、人間の走る速度の何百倍もの速さで移動する乗り物とかがあって……。」
「…………凄いんですのね。すごく興味が湧きました。」
「発達した世界だったし、俺のいた国は俺が生まれてからずっと平和だったよ。」
やっぱり普段何気なく利用してたけどすごいよなぁ……。
あとリーゼさんの理解の速さ、この人絶対頭いいだろ。ミーナさんは「何言ってんだこいつ」って感じの反応だけど。
「資料を持ってまいりました。」
ルナさんが戻って来た。書類の量はかなり多い
「ありがとうございます。」
書類が机に積まれる。目を通すにも大変そうだ。
「それじゃあこの書類を一通り読もうかと。」
「あ、はい。王の寝室に案内するのでそちらで読まれればよいかと。夕食の時にはお呼びしますので。」
「わかりました。」
「ルナ、案内を。」
「かしこまりました。」
書類を持ってルナさんと廊下に出る。
「書類は私がお持ちします。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。魔王だからかいつもより重いと感じません。」
「メイドを気遣って好感度を上げることで私の貞操を狙っておられるのですね。そんなことされずとも今夜お呼びいただければ。」
「そんなこと考えてませんから!」
ルナさんからの魅力的な誘いは置いといて、結構な書類の量なのに軽く感じる。
魔王効果なのかな。
「でも、初対面の時から私の乳房に視線を注がれていらっしゃいますよね?女性はそういうのに敏感なんですよ。あ、私めは特に乳首が敏感で」
「すみませんでした。許してください。」
「ウブなんですのね。」
ルナさんは微笑みを浮かべている。
この人間違いなくドSだ。
「さっき話してたんですけど……リーゼさんって何歳なんですかね?」
気になったので聞いてみた。
「あの方は私が生まれたときからいらっしゃるのですが……。サキュバスは容姿が若い期間が長いのでわかりませんね。」
「そうなんですか。」
「私はミーアの5歳上です。サキュバスには珍しく父親と母親が同じなので似ているとよく言われます。」
ってことはルナさんは124歳になるのか。みんな途方もない長さ生きてるんだよなぁ。なんか不思議な感じだ。
「ルナさんはこの国の現状どう思います?」
「そうですね、もう100パーセントに近い確率でダメでしょうね。死ぬか一生オークの慰み物として生きるかってとこでしょう。」
「そう思ってるなら何故まだ城仕えを?」
「今までお世話になっているからとか、いろいろ理由はありますが、1番は妹がいるからでしょうか。妹が希望をなくさないために自分が希望を失ったらいけないって思ってます。」
「なんとなくわかりますよ、人生ホームレスになるよりホープレスになるほうが怖いですしね。」
「そうですよね。」
ルナさんが笑っている。さっき資料をちらっと見たとき普通に日本語だったし、言葉遊びが通じているところを見ると言語が日本語だとしか考えられないんだが……。そういえばあの女神に言語理解出来るようにって頼んだら「その辺はやっておきます。」って返されたな……。もしかして世界の言語が日本語になってるとか?
「まあ私は魔王様が何かを齎してくれるんじゃないかと思ってますよ、私の勘は当たるんです。」
そんな感じで談笑していると、目的地に到着したようだ。
「ロイ様のお部屋はこちらになります。」
王の部屋と聞いて凄い豪華なのを想像していたが全然そんなことはなかった。後で資料を見てみると財政が厳しくなった時に城から金になるものは早々に売り払ったらしい。そういう判断ができてなぜミスリルの枯渇を予想できなかったのか。
「それでは夕食の時にお呼びしますね。」
ルナさんが退出する。目の前には積まれた資料。
さて、どうしたもんかね……。
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