1945年の手紙 ― 私の内なる力
タクシーはもう遠くへ行ってしまった。赤い泥で滑るタイヤの音が小さくなり、そして消えた。静寂。バサの森の19時以降にしかない、厚い静寂だった。コオロギも、ヒキガエルも、蚊もいない。森さえも息を潜めていた。
ケンジは震えていた。リュックを抱きしめている。東京の白いシャツは汗でびっしょりだった。クロエはiPhoneを両手で持ち、懐中電灯をつけていたが、白い光は1メートル先しか照らさない。その先は、すべてを飲み込む黒だった。
Googleの写真で見たことがある。赤くて、綺麗で、清潔な日本の鳥居。でもこれは...生きていた。木は赤い、しかし乾いた血のような黒に近い赤だった。二人分の太さ。そして緑色の大きなバサの蔦に覆われていた。ゆっくりと呼吸するように動いていた。第2章A:赤い鳥居とバサの守護者 [2/4]
ケンジが震える声で言った。「ありえない...これは私の家族の神社の鳥居だ。福岡の。1945年に焼けたはずだ。なぜここに?カメルーンに?」
クロエがしゃがみ込んだ。木に近づいて光を当てた。「彫刻がある...私の刀の鞘と同じ文字。父は古いアフリカの方言だと言っていた。これはバサ語?」
彼女はゆっくりと読んだ。「三つの血が戻る時、守護者は目覚める。」
背筋が凍った。三つの血。私たちは三人だった。日本人、フランス人、そしてボナベリのバサ人である私。
その時、地面が揺れた。鳥居の向こうから声がした。まず日本語で、ケンジが真っ青になった。「供え物なしに門を越えるのは誰だ、と言っている。」
次にバサ語で。「Nje i bañal mbay len ?」
そしてフランス語で。「供え物なしに門を越えるのは誰だ?」
影から男が出てきた。私は彼を知っていた。バサの交差点でマンゴーを売っていた老人だ。皆が狂っていると言っていた男。だが今は、白と黒の着物を着ていた。青いンドップの布で繕われた着物を。足は泥の中に裸だった。第2章A:赤い鳥居とバサの守護者 [3/4]
「私は最後の守護者だ。私はバサ人だ。だが父は1945年にタケシからこの刀を受け取った。81年間待っていた。81年間、忘れられないようにこの交差点でマンゴーを売ってきた。」
彼は叱る父親のように私たちを見た。「刀を恥じる日本人。自分がカメルーン人だと知らないフランス人。そして自分が継承者だと知らないカメルーン人。お前たちはまだ準備ができていない。」
クロエが一歩前に出た。「え?私がカメルーン人?父はずっと100%フランス人だと言っていたのに!」
「父はお前を守るために嘘をついた。母はバサ人だった。マンガ・ベルの一族だ。サミュエルのように。父はお前を守るためフランスに連れて行ったのだ。」クロエは泣き始めた。
守護者は目を閉じた。空気が変わった。火薬の匂いがした。1945年だった。若く傷ついた日本兵、タケシ・ナカムラが、光を吸い込む黒い刀を若いバサの男に差し出していた。
「この刀を隠してくれ。フランス人が狙っている。もし私の孫が来なければ、バサの血が守ってくれ。なぜここに?この刀の鉄はこの土地のものだからだ。バサの鉄だ。200年前、私の祖先はお前の祖先からこの鉄を買った。家に帰ってきたのだ。」
私はもううんざりして、腹が減っていた。朝6時にボナベリを出てから、ベニエを一つしか食べていなかった。
私はバサ人らしい最もバサ人らしいことをした。座ったのだ。地面に。泥の中に。
「おじいちゃん、ドゥアラからここまで歩いてきたんだ、腹が減った。まず食べないか?パンとイワシがある。刀だって81年経ったら腹が減るだろう?」
沈黙。ケンジとクロエは私が狂ったかのように見た。
そして守護者は...初めて笑った。
「そうだ。やっとバサ人のように考える者が来た。腹で考える。だから刀はお前を選んだのだ。」
彼は鳥居の向こうの見えない小さな小屋に入れてくれた。中央に黒い石。そこに刀が突き刺さっていた。光を飲み込む黒い刀。
「これが...」私たちは一緒に言った。「バサの夜の刀。鍛えられたのではない。400年前にこの森で見つかったのだ。」
ケンジが手を置いた。「チッ!熱い!」
「試しているのだ。お前は怖がっている。」
クロエが手を置いた。刀が震え、泣くような音を立てた。「泣いてるの?」涙が頬を伝った。
そして私。左腕の生まれた時からの小さな月と十字の傷跡が、青く輝き始めた。
守護者はひざまずいた。「マンガ・ベルの印!お前が純血だ!」
第2章Bへ続く。明日16時50分...第2章A:赤い鳥居とバサの守護者
タクシーは遠くへ行った。赤い泥で滑るタイヤの音が消えた。静寂。バサの森の19時以降の厚い静寂だ。虫の声もない。森さえ息を潜めていた。
ケンジは震えていた。リュックを抱きしめ、白いシャツは汗で濡れていた。クロエはiPhoneのライトで1メートル先しか照らせない。その先は全てを飲む黒だった。
目の前に鳥居があった。Googleで見た綺麗な赤い鳥居ではない。これは生きていた。乾いた血のような黒い赤。二人分の太さで、緑の棘のあるバサの蔦に覆われ、呼吸するように動いていた。ケンジが言った。「これは家族の神社の鳥居だ。福岡の。1945年に焼けたはず。なぜカメルーンに?」
クロエが読んだ。「三つの血が戻る時、守護者は目覚める。」三つの血。私達は三人。日本人、フランス人、ボナベリのバサ人。
地面が揺れた。声がした。日本語で「供え物なしに門を越えるのは誰だ?」バサ語で「Nje i bañal mbay len ?」フランス語で同じ言葉。
影から男が出た。バサの交差点でマンゴーを売る老人だ。白黒の着物を着、青いンドップ布で繕い、裸足で泥に立っていた。「私は最後の守護者だ。父は1945年にタケシから刀を受けた。81年間待った。」
「おじいちゃん?」
「刀を恥じる日本人。自分がカメルーン人と知らないフランス人。継承者と知らないカメルーン人。まだ未熟だ。」
クロエ「私がカメルーン人?父は100%フランス人と言った!」
「母はバサ人。マンガ・ベル一族。サミュエルと同じだ。父は守るため嘘をついた。」
守護者は目を閉じた。1945年。若い傷ついた兵士タケシ・ナカムラが黒い刀を差し出す。「隠してくれ。フランス人が狙う。この鉄はバサの鉄だ。200年前祖先が買った鉄。家に帰ってきた。」私は腹が減った。朝6時からベニエ一つだけ。最もバサ人らしい事をした。泥の地面に座った。
「おじいちゃん、ドゥアラから歩いて腹減った。まず食べないか?パンとイワシある。刀だって81年で腹減るだろ?」
沈黙。皆が狂ったように見た。守護者は初めて笑った。
「そうだ。腹で考える者。だから刀はお前を選んだ。」
小屋の中央、黒い石に光を飲む黒い刀が刺さっていた。「バサの夜の刀。鍛えられず400年前に森で見つかった。」
ケンジが触れ「熱い!」クロエが触れ刀が泣いた。私の左腕の月と十字の傷が青く輝いた。守護者は跪いた。「マンガ・ベルの印!純血だ!」第2章B:マンガ・ベルの印
「純血だ!」守護者は跪いた。ケンジ「ありえない!僕は毎朝5時から剣道してきた!」クロエ「私も1000ユーロ払って来た!なぜパン好きな彼なの!」
私の傷は青く光っていた。
守護者「刀は選んでいない。認識しただけだ。だが資格が必要だ。一人で名誉、博物館、空腹で持てば死ぬ。三人で兄弟のように持てば光になる。」
「今夜森で眠れ。逃げてドゥアラに戻れば負けで刀は100年地中に戻る。朝鶏が鳴くまで一緒にいれば合格だ。」
「獣と?」
「獣より悪いもの。お前の中の祖先とだ。」彼は煙のように消えた。真っ暗闇。囁きが聞こえた。日本語の声「帰れケンジ恥をかかせた。」フランス語「お前は仲間ではないクロエ何者でもない。」バサ語で祖父の声「サミュエル土地を売ったのか。」
ケンジは子供のように泣いた。「ごめんなさい祖父さん。」クロエは震え「怖いカメルーン知らない!」
私は妹のように抱いた。「大丈夫ここは家だ。祖母は言う、バサとは言葉ではなく逃げない心だと。」
三人で手を繋ぎ石の周りに座った。「違う国でも同じ怖さだ。親に恥かかせるのが怖い。朝まで一緒にいよう。」
その時1945年以来刀が青く光った。遠くで守護者「よくやった第一の試練に勝った。第二が始まる。1945年から狙う者達が来る。」
森で数十の黄色いライト。鉈の音。白ヘルメットの植民地フランス兵の列。司令官「刀をフランスへ返せ!バサ人を見つけ森を焼け!」




