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あなたがすき、だったから……。  作者: 友坂 悠


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20/25

結婚。

 ◇◇◇



 彼は、約束を守ってくれた。


 あれだけあった借金も、伯母さんたちの分も、全て肩代わりしてくれたのだ。

 まあでも、ケープロック家は一番上の伯母さんの、次男さん、従兄のフレッドが継ぐこととなった。

 一応わたしと養子縁組する形にし、フレッドに継承権をあげた形。


 その代わりに。

 かあさんを必ず大事にしてもらうよう、念押しして。


 まあ、親戚連中にとってみれば願ってもない形に落ち着くこととなった。

 借金もなくなり、ケイプロック家の血筋の男子に男爵位を継がせることができたのだ。

「これで先祖の墓に言い訳ができる」

 だなんていう親類たち。

 まあ、もしとうさんの件がなくたって、きっとわたしにあてがわれた伴侶はこのフレッドだったのだろうから、わたしとしてもこういう結果になって良かったのかも知れない。



 結婚式は、かなり派手に行われた。


 まあでもこれは、侯爵家としての矜持もあるのだろう。

 地味な結婚式では沽券に関わる、といったところだろうか?


 それに。

 エドワードは、誰にも偽装結婚だと言っていないのだろうか?

 ううん、そうとも限らない。近しい人にはちゃんと話してるんじゃないかな?

 そうじゃなきゃ、騙したようにもなりかねないもの。

 まあ、三年の期限までは言ってないかも知れないけれどね。



 わたしが夜の街で働いていたことは、流石に内緒にしてくれたらしい。

 まあ、侯爵夫人がそんないかがわしいお店で働いていた人間だなんて、知られたくはないだろう。


 それでも。


 わたし自身は社会の底辺の住人だったのだとしても、彼はそんなわたしでいいって思ってくれたのだ。

 ううん、もしかしたら、こんな契約婚、偽装婚を受けてくれるような女性を探してああいうお店に来たのかも知れない。

 もともと、利用しようと思って近づいてきたのかも知れない。でも……。

 それでも、いいわ。

 彼がわたしのことをどう思っているかなんて、彼がしてくれたことと秤にかけたら全部どうだっていいことだもの。



 わたしは……。

 エドワードから受けた恩を、返さなきゃいけない。


 少しでも。


 彼に、この三年間をいい思い出で埋め尽くしてもらえたら……。

 わたしと結婚して良かったと、そう思ってもらえたら……。


 それだけで満足だ。


「あなたが好きです」

 この言葉は、わたしの心の奥底に、しまって。









「ふん! 何よ! お飾りのくせに!!」


 結婚式のパーティの、終わりぎわ、だった。

 わたしが一人の時を見計らうかのように、一人の令嬢がそんな言葉を吐き捨てるようにして、ギッと睨みつけてきたのは。






 驚いたわたしが振り向いて彼女の方を見ると、彼女はギッと睨み。


「どこの馬の骨とも、貴族の血を引いているかも怪しいあんたみたいな女なんて、私は絶対に認めないわ!!」


 そう吐き捨ててプイッと身を翻すと、そのまま離れていった。


「どうした? フローラ」

 背後からエドワードが歩いてくる。


 それに気がついて逃げた?

 そうかも知れないけれど……。


 あの人、わたしの噂を知っているのかな……。

 とうさんや伯母さんたちが、そんな噂を流していたのだろうか……?


 まあ、伯母さんたちも色々他家に嫁いでいて、そこでの交流関係もあるのだろう。

 そういったところにわたしが不義の子であるだなんて噂が広まっているのだとしたら、エドワードに迷惑がかかるんじゃないか、って、それだけが心配。


 彼女は……。

 先ほどの親族の紹介の場に、確かいた。

 イライザ・ラウル。

 ラウル伯爵家の令嬢で、嫡子だという話だったっけ。

 彼女の妹アニータがエドワードの亡くなったお兄様アルバート様の奥様で、そんなアニータ様を娶れという圧から逃れるために、お飾りの妻を探していたってエドワードから聞いた。

 そして。


 アニータ様の子、アンソニー。

 アルバート様の子、アンソニーを養子に迎え、彼を跡取りにするのがエドワードの目的なのだという。

 そのためにも形だけの妻を選び、侯爵家を継いで、アンソニーと三人の家庭を作るのだ、って。

 まあアンソニーはアニータ様の子供だっていうのは隠すつもりはないそうで、彼女はずっと同じお屋敷で過ごすことになるらしい。


 そういう意味でも、普通のちゃんとした結婚はしたくなかったんだって言ってた。

 まあ、そうだよね。

 子供もいらない。

 お飾りの妻。

 そんなものになりたいという人は、まともじゃない。


 そんな、ただのお仕事のような関係は、普通の令嬢にはきっと耐えられなかっただろう。

 そう、わたしじゃあるまいし、だ。





 結婚披露宴が終わって。


 わたしが案内されたお部屋は、エドワードの隣の部屋だった。


 白が基調の豪奢な家具。

 ベージュ色の毛足の長い絨毯に、フリルがいっぱいなカーテン。

 フリフリの金の飾りがついた天蓋付きの、お姫様が寝るようなベッドもある。


 綺麗な真っ白なカバーがかかった、ふかふかのお布団はとても暖かくて。




 ひとり寝はちょっとだけ寂しかったけど、それもこれもわたしが望んだことだから。

 だから、文句は言えない。

 ううん、言っちゃいけない。


 わたしは、幸せだ。

 きっと、多分、絶対。


 好きな人が隣の部屋で寝ている。

 そう思うだけで、心が温かくなるのを感じて。


 ◇◇◇


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