『放課後のソプラノと、庭の「わんわん」アンサンブル』
『放課後のソプラノと、庭の「わんわん」アンサンブル』
### 1. 指揮官、新兵器「縦笛」のチューニング
「……ピーッ! ピーーッ! ……こたぅ、変な音になっちゃう」
庭の縁側に座ったハル君が、リコーダーと格闘しています。まだ小さな指では、全ての穴を完璧に塞ぐのが難しく、音楽というよりは「警告音」に近い音が庭に響き渡ります。
「局長、高周波による音響攻撃を感知! 指揮官、左手の親指(0番穴)の密閉が甘いです。そこを塞がないと、美しい旋律は生まれません!」
チビが、リコーダーの先から漏れる空気の流れを、ヒゲで鋭くセンサーのように感知して指導(?)しています。
### 2. ルークの「ソウルフル」な共鳴
生垣の向こうでは、ルークが首を長くして待機していました。
「コタロウ、聞け! 音楽とは魂の叫びだ! ハル君、その『ピー!』に合わせて、私がこの路地一番の低音を重ねよう。……さあ、心のままに吹くのだ! ワォォォォン!」
アーサー先輩は、耳をパタパタとさせながら、静かに目を閉じました。
「ハル。音を出すのではない。自分の呼吸を、笛の中に預けるのだ。焦れば音は尖り、落ち着けば音は丸くなる」
### 3. 事件:ついに奏でられた「シ・ラ・ソ」
ハル君は一度リコーダーを膝に置き、僕の背中を撫でて深呼吸をしました。
「……よし。こたぅ、いくよ」
今度は、優しく。
「シ――、ラ――、ソ――」
少し震えてはいたけれど、それは確かな音楽でした。
「ギィーッ! 旋律の安定を確認! 庭園コンサート、開幕だ!」
ソラが指揮者のように翼を振り、庭の木々がザワザワと拍手のように揺れました。
僕は、その柔らかな音色に応えるように、短く「ワンッ」と合いの手を入れました。
(ハル、いい音だ。去年の鍵盤ハーモニカより、ずっと優しくて、お前らしい音がするよ)
### 4. 庭の「カエルの合唱」大セッション
自信をつけたハル君は、得意の『カエルの合唱』を吹き始めました。
ハル君が吹き、僕が低く唸り、ルークが遠吠えを重ね、チビが鈴のついた首輪を鳴らして跳ねる。
それは、教科書には載っていない、陽だまりの警備保障・特別音楽隊による、世界で一番賑やかなセッションでした。
「……あはは! こたぅ、みんなで歌ってるみたいだね!」
ハル君の笑顔が、リコーダーの銀色のジョイントよりもキラキラと輝きました。
### 5. 陽だまりの警備保障、音響訓練任務・完了
夕暮れ時、ハル君はリコーダーを丁寧に布で拭き、ケースにしまいました。
「明日ね、音楽の時間にテストがあるんだ。こたぅとの練習を思い出して、吹いてくるね」
陽だまりの警備保障、リコーダー防衛任務・名誉完遂。
ハル君の指先には、練習でついた小さな「穴の跡」が残っていました。それは、彼が一生懸命、新しい言葉(音楽)を学ぼうとした努力の証。
八巡目の夏が、もうすぐそこ。
三代目のひまわりは、ハル君の奏でるメロディを聞いて育ったせいか、心なしか去年よりも優雅に、空へと伸びていくのでした。
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