『梅香る庭の決断と、二つの家族が重なる日』
『梅香る庭の決断と、二つの家族が重なる日』
### 1. 庭に響く、新しい足音
「コタロウ、チビ。今日はね、大事なお話があるの」
サチコさんが、リビングに僕とチビを座らせて、まっすぐ目を見て言った。
最近、あの「料理上手な男性」とアーサー先輩が、この家に遊びに来る頻度が増えていた。庭の松ぼっくりの上を歩く足音が、二人分、いや、「二人と二匹分」に定着しつつある。
「……これから、アーサーさんたちと一緒に、ここで暮らすことになったの。みんなで、もっと賑やかな家族になりましょう?」
サチコさんの言葉に、チビが「わあ!」と声を上げて尻尾をプロペラのように回した。
けれど、僕は少しだけ複雑な気持ちだった。
(僕のナワバリに、あの威厳あるアーサー先輩が……。警備体制はどうなるんだ?)
### 2. ルークの「組織再編」アドバイス
生垣の会議室。ルークはいつも以上に背筋を伸ばしていた。
「コタロウ、これは組織の合併だ。警備局長としての君の立場が危うくなるわけではない。むしろ、アーサー先輩という『最高顧問』を迎えることで、この家のセキュリティレベルはSSランクに到達するだろう」
「……SSランクか。悪くないな」
「それに見てごらん。君の飼い主は、今、人生で一番幸せな波形を描いている」
ルークの言う通りだった。荷物を運び込む男性の横で、サチコさんはこれまでに見たことがないほど、キラキラとした瞳で笑っていた。
### 3. 「顧問」との深夜のパトロール
合流初日の夜。サチコさんたちが寝静まった後、リビングには僕とチビ、そしてアーサー先輩が並んだ。
先輩はゆっくりと、自分の居場所を確かめるように床の感触を味わい、僕の目を見た。
「コタロウ。今日からこの家は、私にとっても守るべき聖域だ。……だが、実務は引き続きお前に任せたい。私は、お前が疲れた時に寄りかかる『壁』になろう」
その言葉に、僕の肩の力がふっと抜けた。
僕は、先輩を庭の「あの場所」へ案内した。
ミミズクが守り、僕が松ぼっくりを埋め、タイムカプセルが眠っていた、この庭の心臓部だ。
「ほう……。良い『気』が流れている。ここには、歴代の守護者たちの愛が詰まっているな」
アーサー先輩は松ぼっくりの上にそっと鼻を寄せ、静かに祈りを捧げた。
### 4. 警備保障、新体制始動
翌朝。庭には賑やかな光景が広がっていた。
ソラが空から新入居を祝い、チビはアーサー先輩の大きな背中に乗って「高い高い!」と大喜び。
サチコさんと男性が、二人で庭のハーブに水を撒いている。
ルークはフェンス越しに「お隣さん」ではなく「親戚」のような顔で、僕たちに敬礼を送った。
「先輩、家族が増えると、警備する場所も増えるけど、温かい場所も増えるね!」
チビが鼻先を梅の花に近づけて叫ぶ。
「ああ。これからは、僕たちが守る『陽だまり』の範囲が、二倍になるんだ」
### 5. 永遠に続く、今日の任務
僕は玄関のマットの上に座り、新しい家族の靴が二足並んでいるのを眺めた。
サイズは違うけれど、どちらもこの家を愛している足跡だ。
陽だまりの警備保障。
局長:コタロウ(柴犬)
実動部隊:チビ(黒猫)
最高顧問:アーサー(レトリーバー)
広報・通信:ソラ(オナガ)
技術協力:ルーク(サモエド)
最強のチームがここに完成した。
たとえ季節が巡り、風景が変わっても、この庭に流れる「温もり」だけは、僕たちが一丸となって守り抜く。
「ワフッ!(本日も、異常なし!)」
僕は空高く吠えた。
それに応えるように、春の風が庭の桜の蕾を優しく揺らした。
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