『冬の星座と、銀色のパトロール』
『冬の星座と、銀色のパトロール』
### 1. 「星の欠片」が降る夜
「今夜は冷え込むわね。コタロウ、チビ、毛布をもう一枚出しましょうか」
サチコさんが寝室へ向かった後、僕は窓の外の夜空を見上げた。
吸い込まれそうなほど深い紺色の空に、ダイヤモンドの粉を撒いたような星々。
「先輩、見て! 今、星が一個、隣のルークさんの庭に落ちたよ!」
チビが興奮して窓を叩く。
ルークの庭を見ると、サモエドの白い毛を月光で銀色に輝かせたルークが、静かに天を仰いでいた。
「コタロウ、聞いたか。今夜は『ふたご座流星群』のピークだ。天空の警備体制が一時的に緩和され、星たちが地上へ遊びに来ているんだ」
### 2. 銀世界の緊急招集
僕たちはこっそり庭へ繰り出した。
そこには、空の案内人・ソラと、冬眠中のはずが「喉が渇いた」と一瞬だけ顔を出したカメくん、そしてアーサー先輩までが勢揃いしていた。
「若き守護者たちよ。冬の夜空を見上げることは、我ら犬族の大切な儀式だ」
アーサー先輩の白い眉毛に、霜がキラキラと付いている。
「星が流れる瞬間、我らはこの一年の感謝を土に伝え、次の春への力を蓄えるのだ」
その時、本当に大きな流れ星が、尾を引いてゆっくりと流れた。
### 3. 庭の「中心」で光るもの
星が流れた直後、僕たちの庭の「あの場所」——松ぼっくりが埋まっている場所が、ぼうっと淡い黄金色に光った気がした。
「……あ、光ってる!」
チビが駆け寄る。
そこには、雪の結晶とも違う、星の光をそのまま閉じ込めたような小さな「氷の粒」が、土の上にちょこんと乗っていた。
ソラが空から舞い降り、不思議そうにそれを突っつく。
「ギィーッ。これはただの氷じゃない。庭の主たちの『想い』が凍って、星の光と混ざり合ったものだ」
僕たちはその小さな光を囲んで、円になった。
柴犬、猫、サモエド、オナガ、そしてカメ。
言葉は交わさなくても、僕たちの心は一つだった。
(サチコさんが、明日も、来年も、ずっと笑っていられますように)
### 4. 最高の「朝の贈り物」
翌朝。
サチコさんが庭に出てきて、一番にその場所へ向かった。
「あら……? ここだけ雪が溶けて、小さな虹ができてる」
昨夜の「星の粒」は溶けていたけれど、その場所には、冬の間は枯れているはずのハーブが、一箇所だけ青々と瑞々しい葉を広げていた。
「不思議ね。……なんだか、見守られている気がするわ」
サチコさんはそう言って、僕とチビを優しく抱き寄せた。
僕の首元には、去年のクリスマスにサチコさんが編んでくれたチェックのマフラー。
その布地には、昨夜の星の光と、僕たちの願いがしっかりと編み込まれているような、そんな温かさがあった。
### 5. 陽だまりの警備保障、越冬任務
冬は厳しい。けれど、冬があるからこそ、僕たちは「温もり」の本当の価値を知ることができる。
ルークが自分の庭から、誇らしげに鼻を鳴らした。
「コタロウ。今夜の天体パトロールも異常なしだね」
「ああ、完璧だ。……さあ、チビ。サチコさんが温かいスープを作ってくれるぞ。家に戻ろう」
陽だまりの警備保障。
僕たちは、たとえ雪に閉ざされる日があっても、心の火を消さずにこの家を守り続ける。
庭の底では、松ぼっくりが春の夢を見ながら、静かに、力強く鼓動していた。
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