メモリーショック!どこまで値段が上がるんだ?
今は自作PCの方が高くつくらしいですね。
深夜一時。
スマホの画面が小さく震えた。
通知を開く。
そこには短い悲鳴。
「SSD買おうと思ったら高くなってました」
少し間を空けて。
「メモリーも高いです」
さらに続く。
「去年見た時の値段で買えると思ってました」
スーマは画面の中で目を閉じた。
「……あー」
嫌な顔をしている。
「来たな」
「メモリーショックだ」
相談者は三十代男性。
PCを組もうとしている。
たぶん価格比較サイトを見た直後だ。
精神的ダメージが大きい。
「なんで急に高くなるんです?」
返信は早かった。
スーマは肩を竦める。
「急じゃねぇ」
「お前が見てなかっただけだ」
画面がぴかっと光る。
「いいか人間。
メモリーってのは意外と生き物なんだ」
「生き物?」
「そうだ」
スーマは続ける。
「足りなくなると急に高くなる」
「余ると急に安くなる」
「性格が極端なんだよ」
相談者は納得していない。
たぶん余計分からなくなった。
スーマはため息をついた。
「簡単に言うぞ」
「今、世界中でAIが暴れてる」
「AI?」
「お前が俺に相談してるその手の技術だ」
少し間。
「AIサーバーってな」
「信じられねぇ量のメモリーを食う」
需要の増加。
供給の不足。
その結果。
DRAMやNANDフラッシュの価格上昇が続いている。
AI向け需要の増加により、メモリー各社はサーバー向け製品を優先する傾向が強まってる。
相談者から返事。
「じゃあ俺のSSDが高いのもAIのせいですか?」
スーマは苦笑した。
「だいたいそうだな」
「厳密にはもっと複雑だが」
「犯人としては十分だ」
数分後。
また通知が来る。
「これからもっと上がります?」
スーマは珍しく即答しなかった。
画面の中で腕を組む。
「未来は誰にも分からん」
「ただな」
「今の業界見てると」
少しだけ声が低くなる。
「メーカーは増産より利益を優先してる」
「供給も急には増えねぇ」
メモリーメーカー各社は、高収益なAI向け製品へ生産能力を振り向けてて、一般向けDRAMやNANDの供給は引き締まりやすい状況にある。
そして一言。
「買い時ないじゃないですか」
スーマは吹き出した。
「やっと気付いたか」
「PC好きがよく言う」
画面が光る。
「待てば安くなる」
「これは半分正解で」
「半分は呪いだ」
相談者は首を傾げる。
スーマは続けた。
「一年待てば安くなるかもしれない」
「でも一年分の時間を失う」
「二年待てばもっと安いかもしれない」
「だけど二年使えない」
少し間。
そして。
「人間はな」
「買わなかった期間の損失を計算しない」
相談者から返事。
「……それは確かに」
スーマは小さく頷いた。
「必要なら買え」
「必要じゃないなら待て」
「その程度でいい」
「市場予測なんてプロでも外す」
翌朝。
短い通知が届く。
「結局SSD注文しました」
「高かったですけど」
スーマは鼻で笑った。
「そうか」
「なら今日から使えるな」
誰も見ていないスマホの中で。
悪魔は小さく呟く。
「値段ばっか見てると」
「欲しかった時間まで逃げていくぞ」
スマホの中の悪魔は、今日も毒舌だ。
そして、ほんの少しだけ、優しい。
スーマのスマホ相談室。
今日もどこかで、静かに稼働中。
今日もスーマの毒舌にお付き合い有難うございました。
この話は「ナイトコードΩ 【残響の封印】」のスピンオフになります。
本編はこちら→https://ncode.syosetu.com/n5607ku/




