Episode:24週後A.M.……
この惨劇がはじまって24週後。もう数えるのも馬鹿馬鹿しい――
レジーたちはクリスチャン・ジョンソンを擁するニューニューヨークと合流した。この奇妙な3人組もとい組織はクリスチャンという不愛想な男、マコト・イトウという日本人に地元出身のイーサン・ジョブスを加えたトリオだ。クリスチャンやマコトは機関銃を所持しており、それで感染者を一掃した。始末した感染者はショッピングモールのエントランスホールで焼却して弔う。この気味が悪い儀式はクリスチャンがいきなり始めた。その真意はマコトにもイーサンにも分かっていない。
「頭が可笑しくなっているのだろうな」
相変わらず儀式を続けるクリスチャンを横目にレジーが呟く。
「だけど。頼りにはなる。彼の戦闘力がなければ僕もやられていた」
髭面の日本人であるマコトは日本を含めたアジアが崩壊する数年前に美容師の修行で渡米した。アジア崩壊の際はひどく落ち込んだらしいが、一念発起して米国人としての人生を歩み始める。
「でも、この国もこうなってしまったからにはなぁ。クリスチャンにお願いして何とかヨーロッパに行くことを考えたいものだよ」
「あんなイカレた野郎にお願いするのか? めでたい奴だ」
「それはそうとレジー。ステアーズの奥さんは無事出産できたのか?」
「こないだ話したばかりだろ? ああ、無事生まれた。男の子さ。お前にも見せてあげたいものだ」
「そうだな。あははは」
レジーはニューニューヨークと同盟を組むようになる。首長なるクリスチャンはヨーロッパにある非公的機関と法外に連絡を取り合っているらしく。国外脱出も叶うかもしれないと全員から期待を寄せられる。もっとも、必ずしもそうなると信じられている訳でもなく。
ショッピングモールとビルの行き来は常に命がけだ。レジーは感染者の頭部を仕留めるつもりで殴り倒してきたが、それで絶命した個体は全体の3割にも届くことがないだろう。銃撃で倒すのが効果的なようだが、ヘッドショットを大きな弾丸でかましたにも関わらず動き続けている個体もあるとイーサンが言う。
それもここ最近になってのことだ。
「マコト、パトロール交代してくれ」
「ああ、ゆっくり休めよ。イーサン」
「こんな墓場で休みたくないが……」
ニューニューヨークの拠点はこの人骨塔が無数にたつエントランスホールらしい。他に使おうと思えば使える場所なんていくらでもあるのだが、どこからか紛れこんできた感染者が襲って来る事や酷く荒らす事もあるから、パトロールだけを実施している。不思議にも感染者は何故かこのエントランスホールには寄りつかない。その理由は分からない。何か彼らに対して効果があると言うのだろうか?
もの想いに耽っているレジーは儀式を終えたクリスチャンが手招きしてくるのをみた。
俺に? と彼は自分の顔を指さす。
クリスチャンは頷いて返した。
「どうした? 手伝って欲しいことでもあるのか?」
「いま、マコトはここからでていったか?」
「ん? ああ。パトロールをイーサンと交代したよ」
「今から大事な事を話す。もしかしたらイーサンも怪しいかもしれない。アンタも何か話すならコレぐらいサイレントに話せ。いいな」
ただでさえ小声なクリスチャンがさらに声を潜めて話す。
彼の語る真実はあまりにも空想的が過ぎた。
「レジー。アンタは聖水ってものを知っているか?」
どこかの国の研究機関が人間の身体能力を極限まで高める成分を発見したが、それには酷い副作用を伴う事が判明する。しかし、この副作用を凶器として採用する戦術を別の国の諜報機関がやってみせた。最初の犠牲はアフリカ大陸にある小国が対象に。あっという間に感染が広まり、その小国は事実上解体。最近独立を果たしたばかりの小さな自治体が治める小国で、そのモルモットとしては最適であったのだ。
ここにつけてアジアで南北の緊張が高まり、戦争が始まろうとしていた。米国諜報機関は軍と連携し「聖水作戦」を実行する。これは米国と対立する国のみに甚大な被害を与える目的で実行されたが、不幸にも同盟国にすら被害を与えた。
そして米国また世界は東アジアを見放す事に。これに激怒したのは生き残った東アジア諸国の人々だ。彼らは米国に復讐をせんと立ち上がる。修羅の国で生き延びながら、その計画を着々と尚迅速に進める。
「まさか……でも聖水ってオカルトかよ」
「俺はその手の家系なのさ。科学は踏み込んでいけないところに踏みこんできた。そしてアジアの残党ってヤツは俺たちの身近にいる」
「そんな……映画みたいな」
「このパンデミックが始まるまで若者に流行っていたモノを知っているか?」
「テイクテイクか?」
「違う……ったく、これだからアメリカは嫌いなんだ」
「忍術か?」
「正解。そんな廃れた筈の文化がこのアメリカで不自然に花開くものか? 俺の話を聞けば誰が怪しいのか分かるだろう。お前さんたちがいるビルにも変な女がいるよな? 俺は黄色人種で妙に生き延びている野郎がいたら疑うことにしている。奴らはまた牙を向いてくるぞ? ヨーロッパの連中と妙な事を企んでいる」
そこでマコトが帰って来た。思っていたよりも早い。
クリスチャンはそれをみるやいなやレジーからスッと離れた。
クリスチャンが話した事は真実か?
元々可笑しな奴だとレジーも思ってやまなかった。
精神異常者の話す事だと思えばいいようなものだが……
「レジー。クリスチャンと何か話していたって?」
「え? ああ、天使と大魔神がどうとか。俺にはサッパリな話さ」
「あまり真に受けるなよ。アイツの話している事は僕にも謎だよ」
「はは。大丈夫だよ。今度俺たちのビルにも来てくれ」
「そうだな。レジーが今度ここに来たら、そっちに行ってみる。セラさんの歌はよく聴いていたもので。その歌が聴けるなら夢のようさ。そうだ。もうここに非感染者はいないと思うけど、コレを持っていってくれ」
「コレは?」
「ワクチンさ。でも、そろそろ期限が切れる。もしも非感染者で未投与の人間がいたら、カレンみたいに投与してあげてくれ」
「ああ、そうしよう。マコト、1つ聞いていいか?」
「どうした?」
「お前ってこのパンデミックの前に忍者ブームにハマっていたりしていたか?」
「ああ、そうだけど? 日本を思い出す事もあったしなぁ……」
マコトは目を細める。その様子にレジーは何かを感じ取った。
「カレンもロサンゼルスでそういう習い事をしていたらしくてね」
「へぇ。本場じゃないか。話が弾みそうだ」
「もっと気軽に友達として語り合えば良かったな」
「ははは、そうだよなぁ。あの時にもっと彼女と話したかったな」
「ありがとう。マコト」
レジーは軽く注射器を持ち上げてマコトに礼を言った。
翌日、行き来に使っているバイクを走らせてセラたちのいるビルへ向かう。
ビルに向かうたびに感染者が増している気がした。
やがてマイホームに辿りつく。
そこで目にしたのはビルの前に群がる感染者の大群だ。
その夥しい大群はレジーの拳で始末しようにも始末できそうになかった。
「どうすれば……」
うろたえるレジー。でも、違和感がある。このゾンビの大群はビル屋上にいるセラ達に執着しているのだ。離れた位置で留まるレジーに興味を持つ個体が一体としていない。
そこでビルの屋上からガソリンのタンクが落ちてきた。
続けざまに大炎上が発生する。
咄嗟にバイクを発車したレジーはその場を一旦離れた。
「カレン!!! トディ!!! セラ!!! トム!!!」
大火災の死線をかろうじて潜り抜けたレジーは血の繋がらない家族たちの名を大声で叫ぶ。そしてバイクを乗り捨てて炎のなかを駆け足でゆく。
その時にクリスチャンたちのいるショッピングモールの方から大きなサイレンが鳴った。すると感染者の大群がレジーを無視して轟音のするほうへと向かう。燃え上がる個体も含めてだ。
これに動じないレジーでもなかったが、火傷を負ってでも炎が燃え広がるビル最上階へとその足を必死で進めた――
∀・)はい。まさかフェニックス大がマコト・イトウとして登場(笑)
∀・)これをやったのはあくまでこの作品が「創りモノだよ」ってみせる為でもあります。じゃあ他の面々も俳優やってんのか?って話になるのですが、これは劇団になろうフェスの作品ではありません。なので、そこのメタも合わせたパラレルワールドとしてみて貰えれば。少なくともイーサンとかクリスチャンていう俳優はいないですからね。あとカレンっていう女優も。多分。なので賛否は分かれると思うのですけども、そういうものだとみて欲しく思います。ここは作品メッセージと絡むところでもあるし。
;・∀・)で、思いのほか長くなったので前編と後編に分けております(笑)ご了承を☆☆☆彡




