Episode:24日後……
この惨劇がはじまって24日が経った――
ビル内にあるPCをなんとか起動させてネットで現状を探る。やはりこの国は崩壊したとみていいようだ。一部地域では感染を免れながら軍人や保安官などの職人が統治しているようだが、それも人道に基づいた統治なのかどうか。
「美味しい♡ レジーありがとう♡」
「どういたしまして。君が笑ってくれると俺も嬉しいよ」
レジーたちはビルの屋上や最上階を使って路上生活ならぬ屋上生活を続けた。最上階には1つの大広間と2つの部屋があるが、元々あまり使われなかったのか質素で何もない空間だった。そこへ色んな物品を調達する役目をレジーが担う。特に食料品や飲料水の調達には骨が折れる。そういった物品があるスーパーには感染者が溢れかえっていたのだ。
さらにレジー達には特殊な事情が重なる。セラはトッドの子供を妊娠していたのだ。その為に必要な物を近くの病院などからレジーが調達する事もある。
レジーは常に拳闘で襲い掛かる感染者を倒し続けた。ある日、感染者から服を引っ張られてしまう事があり、厄介だと思った彼は上半身何も着ない姿で毎日を過ごすようになる。
まるで原始時代に還ったような生活だ。
彼は屋上から「アーアー」という呻き声に溢れた街を見下ろして溜息をつく。
そんな日々の癒しと言えば、少しずつ膨れてきたセラのお腹とボクシングの話が通じるトムとの雑談。そして段々と喋るようになって胸襟を開くようになったカリンという可愛い娘のような存在。
「レジー、私にも何かできないかな?」
「何だって?」
「私もみんなの力になりたい。その為にはどうしてもしなくちゃいけないことがあって……」
「気持ちは嬉しいが、君は未成年だ。君のようなコの命を危険に晒すことなんて俺たちには出来ない」
「私は忍者なのよ?」
「はい?」
「だから忍者なの。そういう習い事をしていて。武器があればアナタに負けない活躍が見込めるわ」
突然喋りだすようになったかと思えば、飛んだことを話す娘だ。
思わず苦笑いしたレジーだったが、彼女を傷つけていけないとも思った。
「分かった。トムと相談してみる。それで共に行くことになったのなら、忍者のお手並み拝見だな」
ホットドッグを食べきってケチャップが口元に残る彼女の頭をポンっと叩いて彼はトムのところへ向かった。
トムから反対の意見はでなかった。むしろレジーに何かあった時の事を考えて遠征に出られる存在を増やす事は有意義だと言ってきたのだ。そう彼が話す彼も御年53になる老獪な黒人。その体型から運動神経が良さそうだとも言えず……。彼の役割は医者であることを活かした知的な生活支援。いわば参謀だ。
「褒め言葉だと受けとめるよ。ただレジーだけでない2人組で動くなら、私の車を使ってショッピングモールまで行ってくれるか?」
「おいおい、冗談止せよ。感染者の数はここの比じゃないぞ? いくら俺だって生きて帰ってこられる自信はない。それにヤツらは車のウインドウだって壊せる怪力の持ち主だ。そりゃあ必要な物は腐る程あるかもしれないが、ヤツらが手につけていたのなら、腐るほど腐ってしまっているだけだぞ?」
「誰が中に入ってくれと言ったのさ?」
「そう言っているように聴こえるが?」
「様子をみてくれるだけでいい。アンタだって見たのだろう? 南の方角にあるあそこで火の手が数日おきにあがっているのを」
「何かの爆発なだけかもしれないぞ?」
「そう思うなら、それでいい。行かなくてもいいさ、ちょっと老体には堪えるが私がカレンと行くことにしよう」
懐から車のキーを取り出してレジーへ手渡そうとしたトムはその手を引っ込め、重い腰をあげた。
最後の言葉がレジーには我慢ならない。
「分かったよ! アンタがいくな! 俺がカレンと行くよ! アンタがいないとセラがどうなるか分かったものじゃない……」
「ふふ、私の覚悟を受けとめてくれるか……」
トムはニンマリとして強引に車のキーをレジーに握らせた。
レジーは首を横に振りながら、やれやれと笑うしかなかった。
翌日、レジーとカレンはビルを発った。驚く事にカレンの身のこなしはまるで国家機動隊のそれを彷彿とさせるようなもので。拳銃の使い方を心得ている戦士そのものだ。
ビルの近くにあるトムの働く病院の駐車場まで思ったほど難なく進めることができた。
トムの車に乗るやいなやカレンはレジーに唇を重ねようと迫る。しかし、彼は「やめろ」と彼女のことを払った。
「どうして? ゾンビを倒すレジーがカッコいいと思ったのに!」
「今はそういうことをする時じゃない。油断をみせればこの車の窓だって彼らは破ってくるぞ……!」
レジーがそう言うやいなや感染者の群れが凄い勢いで窓にへばりつく。あっという間に窓には夥しい皹が入った。
彼は「いくぞぉ!!!」と大声をあげてエンジンをかけ、アクセル全開に車を発車させた――
車は火の手が定期的にあがるショッピングモールへ向かう。しかし、どうにも道中の途中から違和感が。
ショッピングモールが近づくにつれて感染者の数が徐々に、いや、あきらかに減ってきているのだ。目前となった時には全く誰もいない静寂の街を目にする事となる。
「誰もいないわね?」
「ああ、だが油断は禁物だ。変な事を考えたりするなよ」
「今こそチャンスだと思うのに」
「男を選ぶならノリじゃなくて心で選べ。尻軽に生きていたら、自分を見失うぞ」
「私は寂しいだけ」
「ん?」
「寂しいだけだよ」
「そうか。悪かったな。だが、このデパートに誰かがいるなら君が今欲している物はきっと入手できそうだ」
「そう、だったら良かった。私は後悔しているわ」
「何を?」
「ワクチンを打たなかった事。家族のいうことをそのまま聞いたこと」
「…………それぞれ事情はある。それはそうと君は何者だ? あそこまで銃撃戦なんかに慣れている女の子なんて初めてみたぞ。メキシコのギャングの娘なんかでもあるまいし」
「忍術を学んでいたから。まだ信じてくれてないのね?」
「忍者なんてファンタジーだろう。韓国の古来に伝わる」
「韓国じゃないわよ。日本」
「わかった。わるかったよ」
そんな会話をしているうちに地下駐車場に到着する。あたりに血痕が残ってはいるのだが、肝心の遺体は見当たらない。
関係者出入り口のインターホンをレジーは押す。
なんとスグに反応があった。
『誰だ?』
「非感染者だ。ここで数日おきに火の手があがるのをみて来た」
『誰だと聞いている』
「レジー・タピアだ。俺の横にいるコはカレン・ミヨシ。ロス生まれの女の子だ」
そこで背後から物音がした。
スケボーの音。
「両手をあげろ」
白人の青年だ。彼は拳銃を腰に何丁も差し込んでおり、その1つを取り出して構えている。そして足元にはスケボー。これで移動しているようだ。
溜息をついたレジーは両手をあげる。
『イーサン、そいつらは何者だ』
「男はギャングっぽいな。チャカを持ってないのが不思議だが。でも、女の方が持っている。一般人って感じがしない」
『わかった。イーサンが交渉してくれ。役にたちそうにないならお前が始末しろ』
そこで無線が切れる。
「感染者より非感染者のほうが恐ろしい世の中になったようだな」
レジーは呆れた顏で言い放つ。しかし目の前にいるイーサンという青年はただ冷酷に返す。
「いくら払える?」
「いくら払えばいい?」
「最低1万ドルはいる」
「わかった。じゃあ10万ドルをキャッシュでやってやる」
イーサンは目を丸くした。「冗談を言うなよ?」と言いつつも、動揺を隠せないようだ。レジーは「こんなもの、いくらあったって何にもならないだろうに」とポケットからカードを取り出して地べたに投げた。
イーサンは銃口をレジー達に向けながらも、カードを拾う。
銃口を向けているのはイーサンだけでない。カレンもそうだ。
その拳銃を下ろしたのはカレンのほうだった。
「ずっと狙っていたのに。残念」
カレンの何気ない言葉に今度はレジーが目を丸くする。するとインターホンの無線が再び繋がった。
『どうだ? イーサン?』
「10万ドルが手に入りそうだ。マコト、レジー・タピアって知っているか?」
『いや……聞いたことはあるが。ステアーズの友達のサッカー選手だったかな』
「お前ら若い野郎どもはボクシングを観ないのだな。人生半分損しているぜ?」
このやり取りをするうち、イーサンも拳銃を自然と下ろしていた。
やがてそのドアが開く。
イーサンの案内に従い、ショッピングモールの中へと入ってゆく。
そのエントランスにある光景は地獄そのものだ。
天井ガラスは落下したヘリコプターに破られおり、無惨な姿と化しているヘリコプターの周りから何まで人骨の塔が何十本、いや、何百本と建てられていた――
∀・)うん、28日後シリーズ感がでてきました(笑)
∀・)カレンはちょっと違うかもしれないけど、バイオのエイダを幼くしたイメージで書いています(笑)
∀・)いや「忍術ってなんなの?」って感じですけど(笑)このあとの話で明らかになるのでしょうか?




