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NEVER END ONLINE〜少女、終わりなき世界の攻略者〜  作者: 無色


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10.荒くれ者のお茶会(前編)

 金曜日の放課後。青葉高等学校。


「では、ホームルームを終わります。皆さん、気を付けて帰ってください」


 一日の授業を終え、解放された生徒たちが教室から出ていく中、アリスも帰り支度を整えた。


「アリスー帰ろー」


 制服の下にピンクのパーカーを着たココアこと綾戸(あやと)心愛(ここあ)が後ろから声をかける。

 二人は同じ学校、同じクラスである。


「今日バイト休みだしどっか寄ってこーよ。お腹すいたー」

「いいよ。雫ちゃんも誘おうね」

「うえーアリスとデートの邪魔ー」

「何食べる?」

「牛丼かラーメン」

「ガッツリ過ぎない? いいけどさ」


 いいんだ、とは周りのクラスメイトたちの声である。

 大人しめのアリスと派手めの心愛は、周りからは異色のコンビに思われていた。

 尤もその声に気付いているのは心愛だけなのだが。

 シズクこと双海(ふたみ)(しずく)とは駅前で合流した。

 ブレザーの制服の二人とは打って変わり、清楚なワンピース型の制服を纏っている。

 国内有数のお嬢様学校のものだ。


「お待たせ雫ちゃん、待った?」

「いいえ。今来たところです。今日も麗しいですねアリスさん。……なんでいるんですか? 心愛さん」

「あたしが誘ったんだっつーの。帰れよ」

「そっちが帰りなさい」

「雫ちゃんは牛丼とラーメンだったらどっちの気分?」

「食べ盛りの男子学生のようなチョイスなんなんですか?」


 結局牛丼にした。

 安心安全、万人に愛されるチェーン店だ。


「あたし高菜明太マヨの特盛」

「おろしポン酢を特盛でお願いします」

「じゃあチーズ牛丼にしようかな。特盛で」


 周りの大人たちが息を飲む健啖家ぶり。

 ゲームで消費するため実質カロリーはゼロだ。


「はむっ。んーほいひぃ」

「世が世なら罰せられる可愛さ」

「アリスさん、こちらもどうぞ」

「あーむっ。ん〜さっぱり」

「天使ここに在りです」


 頭を押さえて悶える両脇の二人に、アリスはきょとんとした。

 お腹が落ち着いたところで公園に移動。

 自販機のお茶を手に、三人は明後日に控えたNEOのイベントに思いを馳せた。

 

「明後日かーマジ楽しみなんだけど。うーめっちゃテンション上がるー」

「アハハ、そうだね」

「これでやっと、始まりですね」

「ぜーったい負けない。意地でも一位取りに行くよ。【不思議の国のアリス】の公式戦デビューじゃ」

「でも強い人もいっぱい参加するんだろうなぁ」

「弱気禁止ー。てか大丈夫っしょ」


 不安そうにするアリスに、心愛は笑顔で言葉を返した。


「だってあたしら強いもん」


 驕りでない。

 実力に裏打ちされた純度の高い自信だ。


「てか、こんなとこで躓いてちゃ、どのみち人生ゲームオーバーなんだしさ」


 心愛は缶を力いっぱい握ってひしゃげさせ、設置されたゴミ箱に缶を投げ入れた。

 表情には苦悩が浮かんでいる。


「ですね」


 雫も同じく。

 ペットボトルを挟む両手が微かに震えている。


「次のイベントで優勝出来なかったらウチは夢を諦めて、雫は親が決めたどこかの誰かと結婚だっけ。改めてさーマジふざけんなって話だよね」

「前時代的な考えの弊害です。写真見ますか? 思わず笑ってしまいますよ。私より二周りも歳上のおじ様なのですから。優勝したところで、問題の先延ばしなのかもしれませんが。だとしても負けられない。必ず優勝します」


 認めてもらうために戦う。

 そこが自分たちの居場所だと主張するように。

 二人の意気込みに気圧されつつも、せいいっぱい力になるよと、アリスも気概を見せた。


「ぜ、絶対勝とうね! 私頑張るから! 二人みたいに人生賭けてるわけじゃないけど……でも、勝ちたいって気持ちは本物だから!」


 二人は顔を見合わせると、小さく吹き出した。


「アリスだって夢持ってるじゃん」

「ええ。私たちのために戦ってくれるのは喜ばしいですが。ご自身の夢も大切にしてください。いいえ、アリスさんの夢が私たちの夢でもあるんですから。頼りにしていますよ、リーダー」

「なんたってアリスがウチらん中で一番強いしね。世界で一番。最強のゲーマー。ウチら全員で最強を、世界の果てを目指す。いっちょなってやろーぜっ、伝説にさ」

「はいっ!」

「うんっ!」


 少女たちは戦う。

 夢を、自由を、意志を賭けて。

 数多が蠢く終わりのない世界で。




 




 その日、NEOの空に星のように花火が上がった。

 街は飾りつけられ紙吹雪が舞う。

 【ROWDY TEA PARTY】、ギルド対抗イベント開始三十分前にして、参加者は今か今かと始まりを待った。

 非参加勢はそこかしこで、どこのギルドが優勝を勝ち取るかを予想し合っている。


「普通にプロチームも参加するんだろ? 【SCREAM】とか【ROSELIA】とか。これ一般のギルドは勝算無くね?」

「【ACTORS】も【JKロリポップ】も、【ナイトオブラウンズ】もか。今回は出ないって聞いてるぜ。見どころってどこよ」

「有名なとこだと【RedEnd】、【コードオブファンタジア】、【十天】、【ちゃおちゃお】、【セイレーンの瞳】とかか?」

「そういや【セイレーンの瞳】で思い出したけど、あのギルドも出るんだろ」

「ああ。女の子だけのヤバ強んとこだろ。なんだっけ?【不思議の国のバルス】とかいう」

「【不思議の国のアリス】なんですけどー」


 広場のモニターを見上げていた男たちの後ろで、ココアが不機嫌そうに腰に手を当てる。

 男たちは驚いて後ろを振り返った。

 同じく不機嫌そうなシズクと、申し訳無さそうにするアリスもそこにいた。


「お兄さんたち、ちゃんと見といてよね。イベントが終わる頃には、あたしらのこと、忘れらんないようにしてあげるから」


 イタズラっぽくウインクを一つして去っていく。

 シズクは最後までツンとして、アリスはゴメンなさいと苦笑いした。


「……かっわい」

「なんていうかもう、うん、好き」


 男たちの推しが決まった瞬間である。








 和気あいあい、または一触触発の空気が充満した頃。

 参加者へのアナウンスが響いた。


『改めて今イベントのルールをご説明致します』


 特設広域フィールド【虹色薔薇の庭園】。

 その各所に咲いた色とりどりの薔薇を集めると、それに応じて自陣に設置されたティーポットに紅茶が溜まっていく。

 いち早くティーポットを満たしたギルドが優勝であるが、荒くれ者のお茶会の名は伊達ではない。

 HPがゼロになればフィールドから退場させられ、以降復活は出来ない。

 それのみならず、メンバーが退場させられる度にそれまで集めた紅茶が減る仕様。

 またギルドの参加人数によって一つの薔薇で溜まる紅茶の量が変わる。

 人数が多いほど紅茶は少なく、人数が少ないほど多くなるため、一概に人数が多いギルドが有利というわけではないのだ。

 

「薔薇集めに専念するも良し、他のギルメンぶっ潰すも良し。はーやっばい楽しくなってきた。はやく始まんないかな」

「こんにちは。【不思議の国のアリス】の皆さん」

「ミオさん!」


 やって来たのは【セイレーンの瞳】のメインメンバー、エレン、オーマ、リリーシア、ミルフィの四人。


「今日は負けませんよ。フィールドで遭遇したら遠慮無く斬ります。と言っても参加しているギルドはどこも実力者揃い。接敵するかどうかもわかりませんが」

「アハハ、お手柔らかに」

「そっちこそ、ウチらの前に姿見せたら狩られないようにねー。逃げてもヤっちゃうけど」

「誰が逃げるかっての。今のうちにほざいてなさい」


 今にも中指を立てそうな険悪な雰囲気。

 リリーシアは敵意剥き出しにココアに噛み付いた。


「それでは、戦場で」

「はい」


 開始五分前。

 参加者は【虹色薔薇の庭園】へと転移した。


「ふわぁー、キレー」


 一面に咲き誇る薔薇の庭園に目を奪われた。

 高低差を利用出来るほど目立った起伏は無い。

 アリスたちがスポーンしたのは庭園の隅のようだ。


「めっちゃ映える」

「どこかに潜んでというのは難しそうですね。私も前線に出るプレイングをします」

「イモんな。せっかくのお祭りだし。ゴリゴリに前出てけ」

「私たちみんなアタッカーだもんね。支援職ゼロ」

「個性の集団と、良い風に捉えておきましょう。それで作戦ですが」

「それなんだけどさー、普通にギルド潰していった方が早くない?」

「気が合いますね。いかがですか、アリスさん」

「うん、わかった。勝ちに行こう、私たちらしく。夢のために」


 すぅー…と大きく息を吸い、


「世界の果てを目指して! We are!!」

「「「Alice in WonderLand!!!」」」

 イベント開始のブザーが鳴る。


 直後、それぞれのギルドが黒いドームに覆われた。


「?」

「なんこれ? どーゆー演出?」

「何やら様子が……」


 そして、約半数のギルド脱落のログが流れたのを見て三人は目を丸くした。


「え?! もうこんなに?!」

「回線落ちかバグ? いえ……だとしたらタイミングが同じすぎます。サーバーダウンでもない」

「何が起きてんだ」






 ――――――――






 同時刻、運営。

「ちょっ、これいいんスか? 前告知無しッスよね?」

「知らないわよ。思いつきはいつものことだし」

「社長好きだよなこういうの」


 三人は専用フルダイブマシンに腰掛ける男性に困り顔を浮かべた。


「さあ、どうする?」


 ご愛読いただき感謝いたします。


 僭越ながら、高評価、ブックマーク、感想、レビューにて応援いただけましたら幸いです。

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