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生徒会会計の憂鬱な日々  作者: とみお
春、崩壊した日常に希望はあるか
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武蔵小太郎の革命*武蔵視点




最近、光の傍にいるのが疲れる。


確かに光は好きだ。


この図体と顔つきでよく絡まれて、それを蹴散らしていたら、いつのまにか不良のレッテルを貼られていた俺。


一人が好きだったし、それで人が近付かないのは良かったが、俺は人間に敏感になっていた。


だからいきなり部屋に入って来た光を警戒して、つい――殴りかかってしまった。


そんな俺を光は床へ這い蹲らせ、且つ俺を認める。


初めてだった、新鮮で、世界が変わった。


それから俺は――憧れに近い恋慕の情を、光に抱いたんだと思う。


でもその世界は朽ちようとしていた。


光の周りには自然に人が集まる――駿河もその一人だ。


普段は三人でつるんでいたが、光に目を付けた生徒会の連中がよくちょっかいをかけに来るようになり、光の周りは騒がしくなった。御世辞にも光も静かな性格とは言えねぇし。


俺はその騒がしいのが嫌いで、一人どこか行こうとすると、光が「どこ行くんだよ!」と俺を放してはくれない。


――嗚呼、うぜぇ


時折そう思うようになってしまった自分が居やがった。


俺は光が好きなんじゃねぇのかよ。


そんな疑問を持つ日々が続いたある日、アイツに会った。


食堂で、光が駆け寄った相手――金髪のアイツ。


光が笑顔なのに対して、その金髪のアイツは薄っすらと目の下に隈があり、何処か疲れた笑みを浮かべていた。

そして光はその相手に向かって、とんでもねぇことを口に出した。


「ずっと思ってたんだけど、孝彦その笑い方やめろよ!気色悪いぞ!」


馬鹿か。


俺はそう思うしかなかった。流石にこれはねぇだろ。

金髪――光が言う孝彦って生徒会会計は、笑顔のままで固まってやがる。

まぁ、その気持ちも分かる。


一気に俺の中の何かが冷めだした。


変わりに、あの疲れた顔をした金髪が――やけに頭の中に残る。


アイツは学校内でもチャラいと有名で、俺も聞いたことはあった。

が、んな感じはしねぇし――何者だ?


光は光で、その頃からよくその金髪の話をしやがるし、駿河の野郎も何だか挙動不審だし。


まじうぜぇ。全部、何もかもだ。


そんな時だった――お袋から連絡が来たのは


「今度私の舞台の奏者をやらない?一回だけでいいから」


俺のお袋は日本舞踊や笛――琴などをよろずにやっている。


日本だけではなく、世界中飛び回って公演をしているお袋に会うのは年に数えられる程度しかない。

お袋がいうには笛の奏者が突如一人欠けてしまったらしい。


それで俺に白羽のが矢が立った。


別に俺も笛を吹くのは嫌いじゃねーし、気分も変わるかと思い了承し、そこまで最近熱心に練習してなかったから、勘を取り戻そうと俺いつも以上に練習することにした。


だが同室である光の前では練習はしたくねぇ気分だった俺は、人気がない林ですることに。


そして、その練習を続けていると目に入ったのは金色。


きょろきょろ周りを見回している相手が足を止めると、俺がいる木を見上げてきた。


「誰が吹いてんだろ」


俺はおもわず手を止めそうになった。


いつもとは違う雰囲気を纏い、いつもの調子良さそうな口調とは違うアイツ。


俺は視力が良いので顔までちゃんと見える。


あれは間違いねぇ――生徒会会計だ。


俺は暫くアイツを観察しながら演奏していたが、相手が食事を終えたところで笛から口を離す。

するとアイツは俺に声を掛けてきた。


「良い音聞かせてくれてありがとーな何だか癒された、これ置いておくからよかったら持ってってくれ」


いつもの声で、全く違う調子の言葉を紡ぐアイツ。

そしてけして押し付けない態度に、なんだか落ち着く。


俺はアイツの去る姿を目で追い、姿が見えなくなると木から降り、アイツが残していった飴を取り、袋を開けると中身を口に含んだ。


口の中に広がる甘さが、心地良い。







次の日もアイツはやって来て今度は弁当を俺に置いていった。


アイツは弁当をちゃんと食べていたから、貰ったか何かしたんだろう。


それにしても見た目とのギャップが激しい奴。

まぁ嫌いじゃねぇけど。


学校で猫被ってんのだって、何か事情でもあんだろうしな。


アイツは俺に必要以上に踏み込んでこねぇし、俺も踏み込むことはしない。


だから今木の上と下での俺らの関係は成立している。


しかしそれも――終わりを告げた。


俺は光に隠れて弁当箱を洗い、巾着とかも洗濯をして乾かした。

多分アイツは今日もくるだろう――結果を見るために。


俺は何だか気分が高揚していた。柄じゃねぇが俺はアイツに会うのが楽しみらしい。


午前の授業が終わると、俺は光に呼び止められる前に林へと向かう。

俺の方が早く行かねぇと俺のことバレるし。相手は多分光と一緒にいる俺を良くは思ってねぇだろ。


しかし、そう上手くいかなかった。


既にアイツは木の下にいた――眠ってはいたが。


俺はゆっくりと気付かれないように足音を忍ばせてアイツの傍まで行く。


いつもとは違って下ろしている髪は風に揺られると絹の糸の様に綺麗に靡き、目が閉じられていてはっきりと見える睫毛は思ったよりも長くて、俺は一人驚いた。


そしてアイツの手には書類がある。


その書類は風紀からの報告書で――それは本来生徒会で処理すべきもの。


俺は嗚呼、なんだ。と納得した。


コイツがいつも疲れた顔をしているのは、仕事をちゃんとやってるからか。

光はコイツが仕事してるとは思ってねぇみてーだけど。


隠れたところでちゃんとやっていた。


俺は薄っすらと笑みを浮かべ、アイツの横へと腰を下ろし、相手の頭を自分の方へと寄せる。

服越しに感じる相手の髪が何だかくすぐってぇ。


俺はアイツに邪魔にならない程度に音を抑えて笛を吹き始める。息があまり吹き込めないから、音にもなってねぇとは思うが、運指の練習にはなるだろう。


起きたら何を話すか。

とりあえずは俺の名前からだろ。

俺もアイツのことを知りてぇし。


それでもっと――


って何思ってんだ俺。本当、柄じゃねぇんだよこういうのは。


俺の正体を知ってもアイツは俺の前から去らないだろうか、と少し不安にはなったが、それは目を覚ましたアイツによって掻き消される。


寧ろアイツもそうだったみたいだ。俺に何で優しいんだって聞いてくる位だしな。


何か、おもしれぇ奴。


外見と中身のギャップは激しいし、中身は中身で演技してるときとの差があり過ぎる。


けど――そういうのは嫌いじゃねぇ。


俺は光が傍にいるから、普段はコイツに近づけはしねぇけど。


でも、コイツが望むなら――俺はコイツの癒しになってやる。


コイツの――甲斐孝彦の為だけに笛を吹いてやる。


逃げ場所位あってもいいだろう。甲斐――孝彦には。


俺の世界はまた――変わる。


光でもない甲斐孝彦に。



俺は携帯に登録された相手の名前を見て、一人笑った。





武蔵視点......end



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