追加された番号
「でもバレるなんてなー」
「嫌か?」
「んー別に」
別にバレるのは嫌じゃなかった。
まぁ喜美花に申し訳なくはなるけどよ。
肩の荷が下りた感じがして、清々しくもあるし。
「演技のアンタより、こっちの方がいいぜ」
俺を否定しない武蔵くん。寧ろ肯定してくれた武蔵くん。
いい奴だ。
演技してるのはどうしてか聞かないでさ。ただの俺を見てくれる。
「サンキュ」
俺はお礼をいい頭を軽く下げると、武蔵くんは俺に携帯を差し出してきた。
「俺だって毎日笛吹くわけじゃねぇから――聴きたくなったら連絡しろ」
「え?何だそれ俺の為に吹いてくれんの?」
「……ああ」
だよな。
普通毎日外で笛吹かないよな。
何度かこの林に来たことはあったけど、笛の音とか聞こえたことなかったし。
何か事情があって吹いてるのかもしんねぇ。
でもそれより何より――俺の為に吹いてくれるってのが嬉しかった。
武蔵くんが言う俺は素の俺だから。チャラい俺じゃねぇから。
俺は携帯を取り出すと、互いの番号やIDを交換する。
っていうか俺知り合いで交換すんの初めてかも。
生徒会は何だかんだ用事や呼び出す時に知っていなければならなかった。
だから会長、副会長、書記、双子庶務のは知っている。
けどクラスメイトの連絡先を俺は知らない。
ちなみに委員長のも知らない。授業変更だとかあった場合、寮の掲示板とかに貼られるし。
特に必要に感じたことがない。――寂しい交友関係だな。
親族や中学時代の友人の連絡先しか入っていない携帯に――武蔵小太郎の名前。
何かすっげー違和感。
「ありがとな武蔵くん」
「武蔵でいい、アンタ一応先輩だろ」
武蔵くん――武蔵か。
武蔵って名字格好良いな。うん。
顔も目付きはちょっと悪いけど背は高いし格好良いし。
目だけで俺をみる武蔵は何だか独特な色気というか、雰囲気があるような気がする。
「了解、っていうか一応って何だ敬えっての」
「無理だな」
「うっわ生意気」
こんな風に話せるなんて思ってもなかった。
壱岐とも違う会話のリズムだ。
年下なのに友達感覚っていうか。
っていうか全然不良じゃなくね?最初笛吹きとして同じ空間を共有していたからか、全然怖くねーし。
本人もいい奴だし。ま、ちょっと生意気だけどな。
俺は予鈴の音が聞こえると、武蔵に別れを告げ、ズボンについた草を払い歩き出した。
武蔵はもう少ししてから行くらしい。まぁ俺と一緒に行ったら変に思われるしな。
とりあえず、今度――武蔵にメッセージを送ってみよう。




