プロローグ
某県の山に囲まれた土地の中に全寮制の藤ヶ咲学園という学園がある。
偏差値が高等部になると70を越すといわれる学園は成績優秀な者や、一芸に秀でた者、学園のスポンサーである裕福な家庭な人間が多い。
一見ただのエリート校に見える学園だったが、一つ問題があるとすれば幼等部から高等部までで構成するそれは男子校だった事。
幼等部からの持ち上がりが多い学園では日常生活で滅多に女性と接する機会もなく、
思春期になると否応なく襲い来る性欲と言う名の欲――
それを発散させてくれるのは周りにいる同性だけであった。
そう――この学園には両性愛者や同性愛者が多い。圧倒的に。
異性愛者は一割いくかいかないか。
幼等部からの持ち上がりはほぼ両性愛者か同性愛者といっても過言ではない。
――数少ない異性愛者は中途入学した者に多い。
隔離された中にある学園だからか、情報が漏れることもなくエリート校と名を馳せている藤ヶ咲学園に中途入学する者も少なくない。
倍率が高く、受け入れる人数もあまり多くはないがしかし、その中でもバイやゲイが多いと知らず入学してくる者がほとんどだった。
――そして話は変わるが藤ヶ咲学園には二大勢力というものがある。
生徒会と、風紀委員会。
藤ヶ咲学園の生徒会のメンバーの選抜の仕方は別名人気投票。
立候補などで決めるのではなく無記名で生徒会に選抜したい――つまり自分が好きな人間の名前を書き投票箱に入れる。
その人数が多い順から会長、副会長、会計、書記、庶務と振り分けていくのだ。
投票は一年に一度、ゴールデンウィーク前に行われ、三年が生徒会メンバーに選抜された場合冬休みより学業を優先をして良いことと定められている。
生徒会メンバーはその人間が卒業するまでほぼ変わることはない。現高等部の生徒会メンバーもそうであった。
生徒会長である大和 貴一、副会長の和泉 聖夜は中等部から生徒会に在籍しており、
高等部に入学しても一年から生徒会入りを果たし、三年である今も生徒会の役職に就いている。
そしてこの物語は高等部から中途入学し――その容姿や性格から入学当初から人々に注目され見事生徒会入りした
生徒会会計――甲斐 孝彦の物語である。