状況説明
今の状況を説明するってーと、
えーっと……生徒会のメンバーが新しく選抜されて本格的に生徒会が始動していい感じになってきたって時に転校生がきたんだよねぇー。
名前は確か、若狭 光。
その転校生くんの容姿ってのが瓶底眼鏡にボサボサ頭。顔が髪に覆われててほとんど表情とか分かんないの。
口と鼻がなんとか見えるくらい?周りは皆オタクオタクって罵ってたなー。
何で皆騒ぐかってのはバイとかゲイが多いってのもあるんだけど、まぁ時期ハズレの転校生ってのもある。
んでもってその転校生を案内していたのが我等が副会長ってわけ。
この学校で絶大な人気を誇る人物の一人が案内役ってだけで妬まれる対象だってのにそんな外見じゃあ……ねぇ?
しかもその転校生を副会長が気に入っゃったってわけ。
んでもってその話に興味を持った会長も食堂で生意気な口をきく転校生をまたえらく気に入りキスをぶちかました。あ、もちろん口チュー。
同じクラスになった無口な生徒会書記も手懐け、かつこりゃまた同じクラスの生徒会庶務な双子を見分けて気に入られる始末。
そして転校生の同室の一匹狼な不良くんも、スポーツ特待生な爽やかクラスメイトくんも
みーんなみーんな彼を好きになってしまいました。ちゃんちゃん。
え?一人だけ生徒会で彼の虜になってない人間がいるって?
そりゃそうだよねぇー。
それって俺のことだし
てなわけで、俺の名前は甲斐 孝彦。
投票で三位に選ばれて生徒会会計になっちゃった男デース。よろしくねぇー。
なんで俺がその転校生に惚れてないかって?
それは俺が……
異性愛者だからです。
本当に男とか興味ないから、告白されても困るからまじで。
勘弁してくださいって感じだ。
さっきとキャラがすっげー違うのは俺はこっちが地だから。
本当はゆるいキャラじゃないのよ俺。確かに髪はほぼキンパだし、ピアスも開けてるけど。
それもこれもすべて――
「ねぇ彦、高校決めた?」
「いや、決めてねぇけど」
俺のことを上目遣いで見上げて来たのは従兄妹である喜美花だ。
ぱっちりとした二重の目に長い睫。ぷっくりとしたピンクの唇。
正直、身内贔屓抜きにしても喜美花は美少女だと思う。
俺は昔から喜美花に弱く、頼みを断れた覚えがない。まぁ理由もあるっちゃああるんだが――そう、この時もそうだった。
「ならさぁ藤ヶ咲学園にいってよ!」
「はぁ?!あの偏差値めっちゃ高ぇとこ?!無理だって!」
「大丈夫!彦は成績も内申もいいって叔母さん言ってたもの!」
喜美花は俺の腕を両腕でがっちりと掴み離さない。
その瞳はギラギラとなんだが少し怖かった。
俺は藤ヶ咲という名前を聞いて目を丸くする。藤ヶ咲っていったらエリート校で有名だったからだ。
それに全寮制だし。めっちゃ遠いし。合格範囲内ではあるけどそんなんならチャリで十五分の高校にと思っていた。
「っていうか何で?」
「えっ……それはね……」
そう、俺はこの後の言葉を聞かなきゃ良かったと心底後悔する羽目になる。
「全寮制で男子校なんてBLパラダイスじゃない!行って私を楽しませてよ!」
……幼い頃の可愛い可愛い喜美花を返してくれ。
爛々と目を輝かせている喜美花に俺は若干引きながらも口を開いた。
「いや、無理……」
「駄目……?」
無理と言ったのに。無理って言ったのに!
喜美花は諦めずに今度は瞳をうるうると潤ませながら俺をジーッと見つめる。
その瞳は段々と水分を増していきその大きな目から雫が零れ落ちようとしていた。
「――っ……!」
「彦ぉ……」
ああ、もう。
弱々しく俺の名前を呼ぶ従兄妹には本当に敵わない。
「わ、分かったよ……合格できたら、な」
「本当?!」
俺が観念し溜息を吐きながら了承すると、喜美花から涙がスウッと消え去る。
……あまりにも引くのが早過ぎるそれに俺は嵌められたことに気付いたのだった。
しかしそれはもう遅い。
「それじゃあ折角なんだから生徒会とか入っちゃってー彦は顔がいいからチャラ男っぽいのもいいかも!」
そこから、喜美花による俺の改造計画が始まり
俺は喜美花にほぼ金に髪を染められ、ピアスを開けられ、口調もそれらしくするように特訓させられた。
合格通知が届く頃――俺は人前では完璧にチャラ男で通せるようになったのだった。




