天神 -備えあれば患いなし-⑤
「先に断っておきます。私の力は本来の半分程しか出せませんので、その辺りも考慮して下さい。」
その話はヴァッツからも聞いているので問題ない。他にも彼女は『豊穣』を司る神らしく、あまり戦いが得意ではない事も知っていた。
なのでカズキも戦いは戦いとして、最も知りたい『魔法』が通じるかどうかに焦点を当てていたのだ。
「ルマー、一回目は手加減して使ってみてくれ。もしイェ=イレィ様への効果が薄いと感じたら全力も試すんだ。」
「えぇえっ?!だ、大丈夫かな?」
「何言ってんだ。ここでしっかり効果があるのかどうか見極めておかないと、他の『神族』達との戦いにも活用出来ないんだぞ?」
「では、行きます。」
こうして始まった模擬戦はまず陽動の意味でもカズキが単騎で突っ込む。カーヘンは周囲から隙を見て切り込む形で動き、ルマーが後方から全体の流れを見て『魔法』を放つ布陣だ。
彼女の『魔法』は補助という系統なので味方の動きを補佐する意味で有用なのは知っている。
ただ、カズキが期待しているのは時折悪戯にかけてくる真逆の効果、相手の動きを鈍くする『魔法』だ。もしこれが通れば相当劣勢に追い込める筈なのだ。
人間の力は『神族』に通用するのか。
そういった意味からもカズキが珍しく闘志を抑えて検証に臨んだのだが結果はすぐに表れた。
「む?何か仕掛けてますね?銀ちゃん!」
恐らく何かの異変を感じたのだろう。銀の鷹を飛ばしてきたのでそれを左手で鷲掴みにしつつ、追い込む意味でも右手に握った刀で攻撃に転ずる。
カズキの眼から見て明確な変化は感じられなかった。後方にいるルマーも今どの程度の『魔法』を飛ばしているのか、その2つは彼女達にしかわからない。
ただイェ=イレィも『豊穣』の力を使ってこちらの足首にかなり強力な蔦を巻き付けてきた事からある程度の焦りは読み取れた。
であれば、ここからは少し楽しもう。
カズキはそれを素早く切り抜けた後、一気に走ると驚愕を浮かべるイェ=イレィを眼前に捉える。
「鷹はお返しします。」
そこで闘志を収めて跪き、家族を丁重にお返しすると少し気に障ってくれたらしい。何もない地面から槍のような鋭い木々が一気に伸び始めたのでカーヘンは距離を取り、カズキは向けられた殺意を歓喜に変えながらそれらを全て叩っ斬る。
「中々やるわね?!流石はヴァッツ様の御友人!!」
「ありがとうございます。」
イェ=イレィもカズキの能力を相当高く買ってくれたのだろう。
今度は体をすっぽり隠す程の大樹を自らの足元から突然生えさせるとその太い枝に乗ってぐんぐんと上空へ上っていく。流石は『神族』だ。
見た事のない動きの応酬に戦闘狂でさえ感心せざるを得なかったが彼女の狙いはここからなのだ。
どうやら自分の愛する銀の鷹を鷲掴みにされた事を相当根に持っているらしい。
空をも覆う木々の枝から似たような鷹が急降下して襲ってきたので斬り捨てる訳にもいかないカズキは慌てて納刀するが、その勢いや数に衰えはない。よって今度は全て躱す事でいらぬ遺恨を生まないよう立ち回って見せた。
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