天神 -備えあれば患いなし-③
もしこの時、ヴァッツに問い質せばその真意を教えてくれただろうか。
だが今は自分の事で精一杯だったカズキは一先ずルマーとカーヘンを連れて登城するとそこで見知った顔と遭遇する。
「おや?カズキ様ではありませんか。今日は4将としてお勤めですか?」
「ああ、しばらくここで力を蓄えようと思ってな。お前こそこんな所で何してんだ?」
ナジュナメジナは大実業家であり、その内容も多岐にわたるので『ネ=ウィン』にいても何ら不思議ではない。それでも質問したのは普段お供を付けない彼が妙に雰囲気のある蒼い髪の青年を従えていたからだ。
「はい。実は兵士達の衣服を新調したいというお話を頂きましてね。今回試作品をお持ちしたのです。是非カズキ様や『剣撃士団』の皆様もお試しください。」
一体何者だ?
自分から尋ねておいて、その答えが全く耳に届いていないカズキに彼も気が付いたらしい。
「ああ、彼ですか。彼はツヴァイ。私の護衛を任せております。」
寡黙な人物なのか。ナジュナメジナから紹介されても軽く会釈するだけで声はもちろん、どのような人物なのか全くわからなかったが只者でない事は本能からびんびんと伝わってくる。
「ほう?人を連れて歩かないあんたが護衛に付けるって事は相当強いんだろうな。どうだ?その新商品を試すがてら、一度立ち合ってみてくれねぇか?」
なので戦闘狂らしい提案がなされるのも当然なのだ。
「ちょっとカズキ?!」
「ははは。よろしいですよ。ただ、カズキ様の御期待に添える程強くありません。怪我だけはさせないよう約束して頂けますか?」
「おう!それじゃちょっと寄り道だ!」
気分も落ちていたので丁度いい。早速カズキは訓練場に向かうとまずは忘れないうちにナジュナメジナが用意した衣服に着替えてみる。
「おお。しっかりした厚さは感じるのに随分柔らかいな。これで攻撃は凌げるか?」
「よければその辺りも試してみて下さい。カズキ様でしたらツヴァイの攻撃程度でお怪我もされないでしょう。」
しかしナジュナメジナがツヴァイを随分と過小評価している点は気になる所だ。彼が付き従えさせるのだから猛者だというのは短絡的過ぎたか?それでも己の本能を信じて木刀を片手に向かい合うと妙な既視感が脳裏を過った。
いつだったか。彼とは一度立ち合ったような気がする。
何故そんな風に思ったのかはわからない。ただツヴァイがぎこちなく木刀を構えたので疑いを晴らす為にまずは自分なりに軽く打ち込んでみた。
がんっ!!
すると彼の手から一瞬でそれが弾き飛ばされるので周囲も目を丸くする。カズキは基本的に自身が認めた猛者としか立ち合わない。
つまり今の内容からツヴァイはそれに値しないのでは?と誰もが思ったのだ。
「なるほど・・・よし。それじゃツヴァイ、俺に打ち込んできてくれ。」
何か引っかかる。このままでは終われないカズキはナジュナメジナの用意した衣服の防御性を調べるべく、攻撃を促すと予想をはるかに下回る攻撃が飛んで来たので驚きつつもわざと当たってみた。
「・・・むぅ。まぁ木刀だからってのもあるが悪くはないな。」
「それはよかった。」
おかしい。見た目通りの軟弱な剣閃には非常に納得が行かない。もっと強いと思っていたのだが自分の見当違いか?
これで互いの約束は果たしたものの、相手が弱すぎて既視感の正体を忘れていたカズキは衣服の感想だけを残すとその場を後にするのだった。
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