天神 -残される人々-②
チュチュがさらりと言った内容は決して誇張ではない。
その内容にはメイが蘇った事も含まれており一瞬で『天族』が滅ぼされた事、兄が信じて疑わない破格の大将軍ヴァッツが二度も大怪我を負った事、『神族』が力を取り戻し東にある国『モ=カ=ダス』へ攻め入った事等々どれも予断を許さない状況なのだ。
「・・・この先、私はお役に立てるのかな・・・」
今では『闇の血族』の力に制限が掛かっていない為、いざとなれば寿命を気にすることなく戦えるのは知っている。
だが女王姉妹の同族である『天族』ですら歯牙にもかけないという『神族』とはどれ程の強さを持っているのか。ヴァッツに手傷を負わせるア=レイという存在はともかく、他の危機にすら対応出来ないかもしれないという漠然とした不安はメイの口から言葉となって零れてしまう。
「そんな情けない事言ってたらクンシェオルト様が悲しむぞ?」
仕方なく2人でぎりぎりの立ち合い稽古をした後、休憩がてら空を仰ぎながら横になっているとドラーヘムに聞こえてしまったらしい。覗き込むように近づいてきたので苛立ちと共に表情も切り替える。
「わかってるわよ。でも実際相手の強さが桁違いなのよ?そこに無理矢理突っ込んだ所で無駄死にするだけじゃない。」
ところが想定する相手というものにずれがあったらしい。彼は少年らしい表情で小首を傾げた後、腕を組みながら隣に座り込んだ。
「う~ん・・・でもメイなら相当強い相手じゃなきゃ何とかなりそうだけどな。」
「・・・・・」
そのせいか褒められたのか慰められたのか良くわからない発言が気になって悩みが吹き飛んでしまった。そうなのだ。彼は強さを求める姿勢からもわかるようにとても純粋な部分がある。
だからメイも彼が他の人間に怪我を負わせないようにという理由とは別に立ち合い稽古にも付き合ってあげるのだ。チュチュも言っていたようにドラーヘムの決意はきっと実を結ぶだろうと信じて。
「・・・私ももっと強くならないとね。」
「お?!やる気だな?!だったら僕も全力で稽古していいかな?!」
彼はまだまだお子ちゃまだけど素質は十分にあるのだ。であれば自身の力をつけるだけでなく年上としてもドラーヘムを導いてあげなければならないだろう。
「何度も言うけど稽古で相手に怪我させちゃ駄目よ?私達はいざっていう時『トリスト』を、世界を護る為に力を合わせて戦わなきゃいけないんだから!」
「わ、わかってるよ!でも・・・」
どがんっ!!!
少しずつだが説得には応じてきている。そんな手応えを感じていると隣ではその教えと真逆の出来事が起こったのだから堪ったものではない。しかもそれが上官にあたるとなれば開いた口もふさがらなくなるというものだ。
「おいクレイス!!気持ちはわかるがもうちょい気合入れろよ?!」
「・・・ってて・・・わ、わかってるよ。」
それにしてもいくら親友だからといって将軍が次期国王に怪我を負わす程の稽古をしてもよいのだろうか?不思議に思っていると再び2人の思考は想定外のずれ方から妙な着地点に落ち着いた。
「・・・よし、せめて僕はもう少し加減しよう!」
下手をすると骨折か内臓を少し痛めたのかもしれない。クレイスが多少口から血を流している姿を反面教師にしたドラーヘムが目を輝かせて頷いた事に多少の安堵を覚えるも、気が気でなかったメイは周囲に咎められそうな人物がいない為、彼へ促す筈だった小言を2人に向けて強く言い放った。
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