天神 -手の平で踊れ-⑤
「やはり私は強いな。」
まるで他人事のように呟いたフロウを他所に体中の痛みからか、『神族』の2人は肩で息をしている。
「ま、まさかたかが『悪魔』如きか・・・面白い。それじゃあ世界ごと燃やし尽くしてやるよ!!」
「待って待って!!それだったらあたしが先にイェ=イレィごと世界を沈めてやる!!でないと気が済まない!!」
まさか自分でも『悪魔族』に希望を見出すとは夢にも思わなかった。もしかするとこの場面を切り抜けられるのか?と甘い考えが脳裏を過るが彼は彼なりの理由があって戦っている。そこをはき違えて楽観視しない方がよいだろう。
「貴様、面白そうだな。」
更にこの場面はいらない人物の闘争心に火をつけてしまったらしい。『神族』の中でも戦いに特化した神、ヘル=ラーが目をぎらつかせたのだがフロウの方はとてもつまらないといった様子で軽くため息をついている。
「私はあまり面白くないがな。この世界への破壊行為は非常に腹立たしい。お前達を八つ裂きにしても収まるかどうかわからん。」
彼がある程度強いのは理解したがヘル=ラーをも巻き込む判断には流石に苦言を呈したい。奴は特別な力を持っている訳ではないのだが絶対に死なず、老いず、そして人間を軽く凌駕する膂力はまさしく『神』そのものなのだ。
ちなみにヴァッツによって『神族』の力を奪われた後は彼のような存在が幅を利かせていた。ただヘル=ラーは戦いへの興味からしか動く事が無かったので大勢が決した後は大人しく暮らしていたらしい。
「・・・フロウもこう言っているんだから貴方達も無駄に散る前に諦めて『神界』へ帰ったらどう?」
それでも己の命が狙われているのだからこそこそしている訳にもいかない。
イェ=イレィもフロウに倣ってため息交じりに提案すると誰よりも彼女を許せなかったのだろう。イラが怒りと共に海を呼び始めたので再び焦りが込み上げてくるとそこに意外な人物が仲裁に入って来た。
「そこまでじゃ!!」
何と久しぶりに聞く声と姿は紛れもなくザジウスだ。彼もまたイェ=イレィやヴァッツに相当な憎悪を抱いているのは間違いない。そう思ってこちらも迎撃態勢を取るが何やら様子がおかしい。
まず最初の違和感はこちらにその背中を向けている点にある。もし敵対するのであればイラ達と同じ位置に立つべきなのに何故だ?
「ザジウス・・・何だ?『神界』での覇権争いに敗れて逃げて来たのか?」
「今は休戦協定を結んで収まっておるよ。」
話の内容も話し方もとても落ち着いていて以前の彼を知るイェ=イレィは別人かと考えた程だ。ただその声に姿形、何より見栄えの悪い杖から感じる確かな力は紛れもなく『神族』の頂点に立つ証だろう。
「イェ=イレィよ。壊れた国はわしが直す。ソ=ノ=フォウド達も引き揚げさせるのでな。それで許してはもらえぬか?」
「「「は?!」」」
それにしても今度は絶対に聞けなかったであろう妥協案が提示されたのでイェ=イレィもソ=ノ=フォウドやイラと同じように驚きから声を漏らしてしまった。あまりにも突拍子のない話に力を取り戻しただけでなく操られてるのではないかと疑わずにはいられない。
「・・・そうか。やはり『神界』から追放されたんだな?!そうだろう?!」
ソ=ノ=フォウドの推論に思わず頷いてしまったがザジウスから余裕が感じられるのが余計に不気味だ。
「わしが力を取り戻しておるのじゃぞ?そんな訳がなかろう。ただ・・・この世界とヴァッツに関わりたくないだけじゃ。」
なるほど。彼もまた力を奪われた事によってその畏怖を深く刻み込まれている『神族』の一人らしい。怒りに塗れていたイラでさえもその本心を聞くとたじろぐ様子を見せたという事は思う所があるのだろう。
「・・・・・イェ=イレィの扱いはどうするの?」
「どうもせん。そのままじゃ。さぁ帰るぞ。すまなかったな。『悪魔族』の王よ。」
「混乱が収まっていないのなら仕方あるまい。」
そうして二人の王が言葉を交わした事で終戦を迎えるとヘル=ラーは誰よりも先に姿を消し、最も感情を抑えていた筈のソ=ノ=フォウドが妙に悔しそうな表情を浮かべながら立ち去って行った。
いつもご愛読いただきありがとうございます。
本作品への質問、誤字などございましたらお気軽にご連絡下さい。
あと登場人物を描いて上げたりしています。
よろしければ一度覗いてみて下さい。↓(´・ω・`)
https://twitter.com/@yoshioka_garyu




