天神 -天族について-⑩
「そうだ。お前には私の息子としてしっかり成長してもらいたい。そうすれば2人で暮らすのも楽しい筈だ。そうは思わんかね?」
一体何の話をしているのだ?死んでてもおかしくない程の大怪我を負っているヴァッツを心配する素振りも見せずにア=レイが楽しそうに問いかける姿は異常でしかない。
「・・・オ、オレに親はいない・・・お前は、親なんかじゃない・・・」
「あらら。随分と嫌われているみたいだね。しかし私達は間違いなく親子だ。それは人間のふりをして16年間生きてきたお前なら良く良くわかっているだろう?」
見比べてみると確かに蒼い髪の毛は似ているのか。雰囲気も強者の威圧感ではなく、ヴァッツに似た全てを包み込みそうな優しいものだ。なのに何故これ程の違和感を覚えるのだろう?
「な、何が?」
「わかりやすい所だと今まで食事も睡眠も全く必要だと感じなかった筈だ。なのに何故人間はそんな事をするのかってね?」
「・・・・・」
「それは彼らが生き物だからだ。命を繋ぐ為の食事と睡眠が必ず必要なのさ。しかし私達は違う。好きな時に好きなだけ、好きな事が出来る。わかるだろう?」
内容からもまるで自ら生物ではないと言っているように聞こえるが、もしア=レイの話が本当なら彼らは何者なのだ?不可思議なやりとりに口を挟める者はおらず、ただ破格達の行く末を見守っていると遂にヴァッツが動きを見せた。
「・・・ふんっ!!!!」
何と大きく開いた自分の胸の傷に右手を突っ込んでそこから光源らしきものを無理矢理引っこ抜いたのだ。光と血が液体として滴り、手指もまるで火傷のような状態になったが全く気にする様子はない。
むしろ彼を苦しめていた物体を排除出来たお陰か、胸元と顔色が瞬時に回復したので目を丸くしていると次に『闇を統べる者』の力を発動する。
だが右手から出る具現化した闇が一度はそれを飲み込むも弾けて消えてしまった。
「どうだね?私の力は?」
「・・・何となく嫌な予感はしてたんだ。遠くでも近くでもない場所でずっと照らし続けてきたこの光・・・これがお前の正体なんだな?」
「そうだ。お前が『闇を統べる者』と名乗るのであればさしずめ私は『光を統べる者』と言ったところかな?」
その力がどれ程の物なのかは皆目見当がつかない。ただここまでのやり取りで彼らが破格の親子であり、間違いなくヴァッツの方が弱いという信じられない事実だけは揺るがないようだ。
「お前には私の息子として対等な力と意思を持ってくれればそれでよかった。その為に人間と接触させていたんだが染まり過ぎているようだ。」
「・・・・・オレは、人間だよ?」
「これは重症だな。ソ=ノ=フォウド、『天族』を残らず処分してみてくれ。少しヴァッツを揺さぶってみよう。」
親子ながら性格は全く似ていないらしい。突然非情な提案が出ると名指しされた本人でさえ一瞬きょとんとしたがア=レイに仕えたい彼は見返りを期待して一気に力を解放する。
そこに『闇を統べる者』の力が働くと世界が真っ暗な闇に包まれたのだから『神族』はおろか、『天族』達も自分の力が全く発揮出来なくなった。
「・・・ア=レイ。お前は危険過ぎる。あんまりこういう言葉は使いたくないんだけど・・・オレはお前を【ころす】。」
「おお?いいねぇ?!一度反抗期の息子と接してみたかったんだ!さぁさぁ、遠慮はいらないぞ?」
純粋という意味では似ているのか?ただア=レイは己の興味を最優先し、ヴァッツは危機感と優しい心で動いている。ここには決して交わらない大きな壁が存在するのだろう。
「闇に・・・沈め・・・」
そんな彼が怒りと僅かな悲しみを浮かべつつ右手をかざした後に拳を作ると計り知れない規模の闇が大きな力によって動いている気がした。いや、実際ア=レイがそれに飲み込まれたらしく、その姿が完全に消え去った。
「やはり駄目か。思考と感情が邪魔をしているようだな。」
ところが全く意に介さない声が聞こえてくると先程自身の胸から引っ張り出した光の玉が突然現れた後、再びヴァッツの胸元に直撃した事でセイラム達は瞬時に元の世界に戻された。
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