天神 -天族について-⑪
「・・・これはもう一度作り直すべきかな。」
ア=レイの口からまるで砂遊びに飽きた子供のような発言が飛び出してくる。そしてこの中で唯一子を持つ立場のセイラムは再び苦しみながら倒れるヴァッツを前に怒りを放った。
「貴様・・・それでも親か?」
「親のはずだよ?だってほら?」
だがこちらの真意は伝わらなかったらしい。むしろ証拠として右手を軽くかざすと彼の目の前には蒼い髪の青年がいきなり現れたではないか。
「ね?子はいくらでも作れるんだ。ただ、何が原因かはわからないがどうにも人形のようなものしか生み出せなくてね?その点ヴァッツには様々な工夫を凝らしたんだよ?己の意思と強さを両立してもらいたくてね?」
確かにア=レイと並んで立つ新しい息子、だろうか?眼に光はなく、表情も鉄面皮で人形と例えられる理由がわかってしまう。
「少なくとも感情を抱いている時点で私が興味を持つに十分値する。人間が蔓延る世界に産み落としたのも自立や意思の成長を期待してだった。でもまさかそれが力を阻害するとは夢にも思わなかったよ。」
「ア=レイよ。貴様は何もわかっていないようだな?」
そういう事か。ア=レイの異常性に怒りの限界を迎えたセイラムは答えに辿り着くと再び問いかける。何故奴の言動がこうも腹立たしいのか。それはエルティーマやアルヴィーヌ、イルフォシアを強く愛しているセイラムにしかわからないのかもしれない。
「何をわかっていないって?」
「黙って聞いていれば貴様は自分の事ばかり。子が親を思う気持ちを考えはしないのか?子に対する愛情はないのか?」
「・・・それは君が地上に愛娘を預けた話と関係あるのかい?」
「ああ。私は力不足で娘達を遠ざけるしかなかった。しかし貴様のように興味本位ではない。泣く泣くだ。離れていても出来得る限り娘達の成長を見護っていたし愛している。亡くした妻と同じようにな。」
「・・・・・それで?」
「例えヴァッツが貴様から生み出された存在でも所有物としか捉えられない貴様に、愛を知らぬ貴様に親を名乗る資格はないという事だ。」
「ふむ。しかし実際私の所有物なんだよ?君達と違って私は自分の意思でいくらでも生み出せるのだから。」
「ならば愛情も同じくらい生み出して見せるが良い。そうすればヴァッツは必ず応えてくれるだろう。出来るものならな?」
そこまで言うとやっと大きく一線を越えた事に気が付く。恐らくア=レイが何かをするだけで自身は命を失うだろうと。ただアルヴィーヌの夫となるヴァッツを、婿になるはずの青年を蔑ろにする言動の数々がどうしても許せなかったのだ。
「愛、ね。確かに私の中にはないのかもしれない。だったらセイラム、お前を参考にしてみようか。」
その台詞が何を物語っているのかさっぱりわからなかったが、何故か奴の動きが手に取るように見えていたセイラムは全力で拳を放つ。
ぱきゅんっ!!!
すると破裂音が幾重にも重なり、可愛い音が小さく響くとア=レイの頬に自分の右拳が深く突き刺さったので大いに驚いた。ヴァッツと似たような存在にまさか己の攻撃が当たるとは。
「こ、これは・・・」
「なるほど、人体を強化しているのか。面白い力の使い方だが元が弱いのだ。それが私に通用するとは思っていないだろう?」
しかし自分を良く知るセイラムだからすぐに理解する。辺りが再び闇に包まれた事も踏まえるとどうやらヴァッツがセイラムの能力を格段に上げてくれたのが原因のようだ。
ただア=レイも少し驚いただけでその仕掛けをすぐに見抜くと先程生み出した新しい息子に反撃を委ねてきた。
ぱちんっ!!
相変わらず周囲には可愛く小さい音しか響かないがそれを防御した腕は肉が破裂し、骨が粉々になって露出する。
「・・・ヴァッツッ!!私の娘達を、頼んだぞっ!!」
長期戦にはなるまい。恐らく自分は今人生で最も強い力を身に着けている。にも拘らずア=レイが突然生み出した青年の前には無力に等しいのだ。
せめてこの短い戦いの間にヴァッツが退避してくれれば。そう強く願いながら決死の攻撃を繰り出すも再び相手の攻撃を喰らった時には上半身が肉片と化して消えていた。
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