天神 -天族について-⑧
時間を止めるというのは能力として考えても破格のものだ。故にそれが使えるのは一日に一回だけ。つまり零時を跨がねば再び使用する事は叶わない。
ただ止めていられる時間に制限はほぼ無い。発動してしまえば自分が解除するまでは必ず止めていられるのだ。
「地上へ行け。お前の速さならすぐに伝えられるだろう。」
ウォルトの能力はその速度だ。恐らく時を止めなければセイラムも彼には勝てまい。更に聡明なので移動の最中にはこの騒動についてある程度の考察や今後の行動についても答えを導き出せる筈だ。
既に死を覚悟したセイラムはそう信じて頼れる側近を送り出すがソ=ノ=フォウドは気にも留めていない。これは余裕があるからか興味はア=レイにしかないからなのか。
「まだ400人ほどいるのか。これを半分も殺せばア=レイは出て来てくれるだろうか?」
「さっきから随分ア=レイに執着しているな。貴様の目的は何だ?」
だがそれならそれで良い。時間を止めても普通に会話出来ている事から能力を解除したセイラムは次に時間を稼ぐ方へ移行するとソ=ノ=フォウドは全く気にせず答え始めた。
「私達の力を戻す条件として『天界』を荒らすという内容が奴から提示されたらしい。ところが長であるザジウスが断ったにも拘らず私達は力を取り戻した。その真意を直接確かめたくてな。」
「『神族』であれば人間の1人や2人、すぐに探し出せるだろう?」
「うむ。そう思っていたのだが何故か見つからない。ヴァッツの姿はしっかり捉えられるのに何故か。そこで私は考えた。恐らくア=レイとはヴァッツ以上の力を保有している、とな。」
そんな馬鹿な、と言いたいが実際『神族』に力を戻した事実を踏まえると反論が難しい。更に彼らが親子だという話も事実であれば信ぴょう性は増すばかりだ。
「そんな危険な存在に近づいてどうする?」
ではソ=ノ=フォウドの目的は何だろう?気分次第で力を奪ったり戻したりするような存在に近づいて何を確かめようというのだ?
「正式に仕えるつもりだ。」
これは予想外過ぎた。セイラムを始め、全ての『天族』が唖然としてしまったが『神族』にもそれなりの理由があるらしい。
「仮にも『神族』だろう?誇りはないのか?」
「あるさ。だからこそだよ。」
「???」
どうやらまだ時間を稼げそうだ。素直に疑問が浮かぶやりとりを利用しつつセイラムは小首を傾げて見せるとソ=ノ=フォウドはここで初めて満面の笑みを浮かべて声の大きさも一段階上げてきた。
「ザジウスのような老害では駄目なんだ。これからの『神界』は『神族』達を束ねられる真の強さを持っていないと。」
「・・・だからア=レイに頼る訳か。」
「そういう事だ。しかし私達の力を元に戻せる程の存在ならこの状況もどこかで見ている筈なんだけど・・・出てきてくれないね?」
自身も一度だけ『神界』に赴き、いくらかの『神族』と接した事から少しは情報がある。確かザジウスとはあの威張り散らしていた老人だ。しかし彼もヴァッツに力を奪われて何かを感じたのだろう。
だからア=レイからの提案を跳ね除け、力が戻った今も奴自ら『天界』へ干渉はしてきていないのだ。再び奪われる恐怖をしっかり脳裏に刻み込まれているから。
「さて、おしゃべりはこのくらいにしておこうか。私の目的も伝えた事だし、まずは『天族』を処理させてもらうよ?」
しかし何故ア=レイは『天界』を荒らすなどという条件を出したのだろうか?未だその正体すらわかっていないセイラムは答えの出ない疑問を残したまま戦闘態勢に入ると労力が実を結んだらしい。
「・・・君は誰?」
地上から静かな声がかけられるとそこにはヴァッツが上空にいるソ=ノ=フォウドを睨みつけていた。
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