天神 -天族について-⑦
『神族』にとって『天界』など箱庭と呼べるほど狭い世界なのだ。
故にウォンスを完全に消失させたソ=ノ=フォウドはそのまま炎で半分を焼き尽くすと流石に他の『天族』達も異変から全員が飛び出してくる。
「な、何だこれは・・・?!」
「お~お~。集まって来たな、虫けらどもよ。」
セイラムの呟きに反応した炎の化身を見ると彼らもこの大火事が誰によって引き起こされたのかがすぐにわかったものの、そこからどう対処すべきかまで頭が回らない。ただ明確な敵である事だけは誰もが理解する。
なのでまずはそれを討伐すべく訓練を受けてきた『天族』達が距離を置いて囲むように動いたのだが、大火のような髪を持つ『神族』は意に介さず何かを探すかのように周囲を見渡した。
「・・・ここにもいそうにないか?貴様ら、ア=レイという男を知らんか?」
質問する声から緊迫した様子は感じられない。どうやら『天界』を半分焼き払ったにも拘らず『天族』から向けられる怨恨などは一切気にしてない、もしくは一笑に付せる程の実力を持っているようだ。
「ア=レイか・・・私も名前だけは聞いている。警戒すべき相手だと。だがその正体はクレイス達も知らないらしい。」
「ほう?クレイス・・・ふむ。確かこの世界の地上に住む青年だったか?」
それでもセイラムは敢えて彼の名を挙げる。何故ならア=レイを探しているのはクレイス達であり、もし何かあっても傍にいるヴァッツが対処してくれると信じたからだ。
「ところで貴様は何者だ?」
「やれやれ、今日は何度名乗ればよいのだ。私はソ=ノ=フォウド。『神族』だと言えば何故ここにやってきたのかわかるな?」
「・・・『神族』の力はヴァッツが全て消去した筈だが?」
「それも教えねばならんのか。ア=レイだ。ア=レイによって私達は力を取り戻した。」
にわかに信じられない事実に周囲は騒めくがセイラムだけは冷静な面持ちを崩さず焦りを隠し通す。しかし何故ア=レイがヴァッツと似たような事が出来るのか。かつて時間を止めた中でも自由に動いていた彼の力と存在を今一度思い返しつつ瞬時に思考を巡らすと一つの推測が生まれた。
「・・・まさかヴァッツとア=レイは同一人物か?」
「いいや、私は親子だと聞いている。何だ?お前達は何も知らないんだな。」
あれ程の破格の力を持つ者などそういないという発想から導き出した答えはより残酷な事実に上書きされる。ただ相手は『神族』なので全てを信じるのは危険だろう。
この話は絶対にクレイスへ伝えるべきだ。
セイラムはどうやってそれを実行に移すかを考え始めた時、ウォンスがこの場にいない事を知って再び声をかける。
「ソ=ノ=フォウドといったな。貴様、既に何人かの『天族』を殺したか?」
「そういえば集団で遊んでいる奴らがいたな。そいつらの事かな?全て燃えて灰にしたよ。それがどうかしたか?」
『神族』に支配されていた時からそうではあったが怪我こそ日を跨げば全快するものの亡くなった者が蘇る事はない。つまり自分達はかけがえのない仲間を失ってしまったようだ。
「・・・セイラム・・・」
特に自分の右腕として一緒に付き従えさせていたウォルトには信じられないのだろう。彼らしくない驚愕に満ちた声を漏らすとこちらも決断を迫られる。
「・・・これ以上放置する訳にはいかんな。よってここで貴様を処分する。」
「面白い。やってみろ。」
『神族』に自分の能力が通用するのかどうかはわからない。だが何も発動させないまま戦いに持ち込むのは危険だと判断したセイラムは全ての同族だけが動けるように時間を止めてみる。
ところがソ=ノ=フォウドはそれを確認してからにやりと笑みを零したので戦うよりも先にまずウォルトに地上へ向かうよう手短に命令するのだった。
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