隠れ家にて
足が痛くて通常のペースで歩けない僕がルーアンに肩を貸してもらいながら辿り着いたのは、小川の側の木々に隠れた洞窟だった。
なるほど。水もあるし、ここなら誰にも見つからずに生きていけるだろう。
「ここが私の隠れ家よ。さ、寝床に横になって。水で冷やしてあげます」
ルーアンは持っていた木の棒を岩の隙間に差し込んで、『灯火』をつけた。いちいち唱えなくても魔法は使えるみたいだ。
「もう一人分の寝床はあるの?」
分かっていても、男として食い下がらない訳にはいかない。
「あるわけないでしょ!私はずっと、一人ぼっちだったんだから!フン、ちょうどいいわ、隠れ家の守りが手薄だと思っていたのよ。交代で見張りをしましょう!今晩は私がやるから、怪我人は大人しく寝てなさいよね!」
そう言い残して、本当にその場を去ってしまった。
見れば外は夜。『今晩の見張り』とやらを始めるなら確かに今だろう。
だがこの世界のことや、ここで自分が何をすればいいのかを知らない身にしてみれば、独り以上の暇な時間もない、と思っていたが、
「やっほー☆アタマの中からこんにちは☆アタシの声、聞こえます?」
本当に頭の中から聞こえるからギョッとした。
なんだ、と思っていると
「何だってそりゃ、アナタが開けた本の妖精ですよ!ヴィヴィっていいます、よろしくネ☆」
「魔本の妖精!?そんなのいんの?」
「ええ、そりゃあこの世界に飛ばしたのアタシですから、最低限のマネジメントぐらい出来ませんと☆アレですよアレ、魔法少女をサポートするマスコットキャラ的なアレ!それぐらい、魔本にかかればセルフでカバー出来るってワケです☆」
「えっ、飛ばしたって、じゃあ」
「帰れませんよ?そういう設定ですから☆」
「は?」
「だって言われてホイホイ帰してたんじゃ、どんどん現実世界での魔本の価値が低くなって、気がついたら○OOK・○FFで80円で売られてたりするんですよ!そしたらガンガンたらい回しにされて、さすがのアタシも干からびちゃいますよ☆」
「はぁ──────────────っ!?」
2度目の叫びが、隠れ家の洞窟にこだました。




