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魔王さまは薬屋さんに夢中  作者: 真咲 透子
魔王さまのお屋敷編
8/28

8. その果実は甘いのか

 私はしばらくの間、自室謹慎きんしんを言い渡された。


 それはそうだよね。勝手に外にでちゃったもの。それに屋敷に太陽の光を入れてしまった。本当だったらこんなものでは済まされないはずだ。温情措置おんじょうそちであることは分かった。


 薬の調合はできなくなってしまったが、私の部屋に鷹がよく来るようになった。以前よりも退屈ではなくなったので、まぁ、良しとしよう。


 陛下からのお手紙も、頻繁にくるようになったからね!!


 最初は堅い文章でお返事を出していた私だったけれど、次第に面どう…いや陛下と打ち解けていき、気軽に手紙を書くようになった。最後の追伸に何が書かれているのかいつもドキドキしてるよ!私がなんて返信してるかは私の名誉のために黙っておくけどね!!



「これ、お願いね」


 陛下への手紙を書き終えた後、いつものように鷹に渡した。私と鷹は随分仲良くなった。今じゃ私の心の友だ。……鷹本人はどう思っているのか知らないけれど。


 私が鷹の背中を一撫でした後、窓の外へ飛んでいってしまった。はやく帰ってこないかなぁ。今行ってしまったばかりだというのに、寂しさが胸をよぎった。


(気分を入れ替えて本でも読もうかな)


 窓を閉めて、本棚へ向かおうとしていたときだった。



「光の国から来た娘ってあなたのことなの?」

「──!?」


 突然ノックもなしに大きな音を立ててドアが開いた。これは、大波乱の予感がする。



「わたくしはセレナ。オルベン地方を統括している魔王よ」

「……リリアです」


 セバスチャンさんが自室に紅茶を持ってきた後、彼女──セレナさんは言った。色々聞きたいことはあった。でもその前に、


「魔王?」

「そうよ。あぁ、光の国から来たから分からないのね。闇の国には統括とうかつしている地方ごとに魔王がいるのよ」


 魔王さまって複数いるんだ!!カルチャーショックを受けた。


 セレナは長い黒髪に赤い唇、気の強そうな目じりを持った美少女だった。なんで闇の国の人はこんなに色っぽい人が多いんだろう。私と同い年ぐらいに見えるのに。


「あなたが魔王の花嫁ねぇ」

「………」


 上から下までじろじろと観察される。……お願いだから、胸で視線を止めるのだけはやめて。傷つくから。


「まどろっこしいことは嫌いなの。だから単刀直入に言うわ」


 セレナさんの意志の強い黒い瞳と目が合う。


「──あなたを外へ出してあげましょうか?」


 私は驚きで言葉も出なかった。


 セレナさんの話はこうだ。彼女と魔王は幼馴染で、婚約者候補だった。ありきたりだけれど、まんざらでもなかったらしく受け入れていたらしい。ところが、いきなり魔王さまが光の国から娘を花嫁にしようと、強引に屋敷に連れてきた。



「……私は彼を愛しているの」


 紅茶を飲みながら彼女は言った。


「時が来ればここの魔王と結ばれる、ずっとそう思っていたわ。……なのに」


 急に私が現れた、と。その鋭い瞳に思わず身がすくんだ。魔王さま何やってるの!?お相手いるじゃないですか!!私よりも美人で自信ありそうで胸もあって……あれ、視界がにじんできた。


「あなたのことを調べさせてもらったわ」


 あらやだ怖い。何を調べられたというのだろう。


「あなた、薬屋の孫なんですって?……しかも回復魔法が使えない」


 よくご存知ですね。でも、最後の言葉は必要なかったんじゃないかなぁ?やめて、いたい。


「だから必死で勉強をしていて、医学校へ通う予定だった……私がその夢を叶えてあげるわ」

「えっ?」


 へ?今なんとおっしゃいましたか!?


「あなた、嫌々ながらここへ嫁いできたのでしょう?しかも敵対している闇の国に。私が後ろ盾になって、医学校へ入学させてあげる」


 なんですって!?これはまたとないチャンスなのでは……?


「ほとぼりがさめるまで、闇の国の医学校へ通えばいいわ。卒業した後、光の国へ返してあげる。そこで薬屋を継ぐなりなんなりすればいいじゃない」


 私はあなたがここにいてもらったら困る、あなたはここから出て光の国へ戻りたい。利害が一致していると思わない?


 セレナさんはにっこりわらった。なにそれ。とても素敵な提案ですね!でも一つだけ不安があった。


「でも、もしばれてしまったら」

「私は魔王よ?そんなヘマはしないわ」


 彼女は自信たっぷりに言った。私の不安、なくなりましたね。魔王ってすごい!!でもあれ?魔王さまも魔王じゃなかったっけ?


「……いいわ。よく考えてちょうだい。次来たときに返事をもらうから」


 セレナさんは席を立った。部屋から出る直前に


「断ったらどうなるかも………よく考えなさいね」


 怖い!私何されるの!?彼女はやはり魔王だった。


 光の国のこと、陛下のこと、薬屋のこと、おじいちゃんのこと……魔王さまのこと。色んな思いや考えが、頭の中をよぎる。


「……どうしよう」


 途方もない小さな呟きが、部屋に落ちた。



 結局。


 私はその甘い誘惑から逃れることなどできなかった。セレナさんは満足げに微笑んでいる。


「よろしくお願いします」


 私は差し出されたその手をとった。


「交渉成立ね」

だいたい→

魔法+学校=魔法学校

この物語→

魔法+学校=医学校=!?


次回あたりから、学園編になります!


あれ?この物語ほとんど魔法使ってないですね。


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