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浮遊力に取り憑かれたら何かと捗った  作者: みきもり拾二
◆第三章 最強従者に、俺はなる!
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【47】マスター権限


「マスター権限発動による従者(アシスタント)コントロールは、何度も使えるスキルではありませんわ」

「うん、24時間に1回ね」

「『なぜそのようになっているか?』については、『何か理由がある』としか言えませんけど」

「でもきっと、その理由は重大なことなんだと思うの」

「それは『創造主たる大いなる意志』からの攻撃かもしれませんし、使用後の副作用かもしれませんわ。マスターにも、何らかの危害があるかもしれません」

「それは困るね〜。俺がどうにかなっちゃうだけならいいけどさ」

「でしょう? あたしもロココちゃんが心配ですのよ」


 三人は朝食を済ませると、武器の試技室へやってきていた。ここで凪早(なぎはや)ハレヤのランクアップとサブクラスの取得に加えて、マスター権限の発動によって凪早ハレヤが霊魂状態になるかどうかを試そうというのだ。


「ですから、仮にハレヤの言うとおりの事が再現出来たといたしましても、あたしとしてはあまりお勧めできない方法ですわ」

「うん、ミュリエルの言いたいことはわかってるつもり。でもどうしても、試しておきたいの」


 ミュリエルはギュッとクマのぬいぐるみを抱きしめると、ツンと視線を逸らした。


「凪早くん、今回確認してほしいことは3つね」

「ほいほいさ〜、なんでも言ってよ」

「まずひとつは、地下牢の時と同じように霊魂状態になるか、ということ。もうひとつは、その状態でバグ玉制御を解除したらどうなるか、ということ。最後のひとつは、わたしの声が聴こえるかどうか、ね」

「オッケイ! 了解!」

「要は、『霊魂状態でもスキルが使えるのか?』『こちらの指示に従って動けるのか?』ということですわ」

「なっるほどね〜! よぉーっし、ワクワクしてきた! 俺はいつでもいいよ、蔦壁!」

「うん。じゃあやるね」


 蔦壁(つたかべ)ロココは頷くと、シャリーンと音を立てて錫杖を構えた。



「我、ロココ・ランカナル・アンドリアルモア・ウルベスムーンの名において


  汝、凪早ハレヤの御霊に代わりてその肉体を操らん!


 ────マスターズ・アドミナルパワー!」



 錫杖の頭部についたプリズムが真っ白な光を放った瞬間、凪早ハレヤは灰色の空間に突き落とされた。



 ◆



「おおおおおっ!……あれ? あの時とちょっと違う?」


 たしか前回は、真っ白な世界だったはずだ。こんなに灰色の世界ではなかったと、凪早ハレヤは思った。


 手や腕、身体を眺め回してみる。身体はあの時と同じように真っ白だ。

 足はやはり地面についていない。フワフワと、宙に浮かんでいる。バグ玉制御を解除している時とは違い、勝手に上昇したりしないが。


 辺りを見渡すと、黄緑色の光が薄く球体状に凪早ハレヤを包み込んでいた。さらにその外を、鉄格子が球状に取り囲んでいる。


 違うところがあるとすれば、ただの灰色な世界が広がっているだけ、ということだろう。

 辺りはしんとして静まり返り、物音一つ聞こえない。


「おーーーーーい」


 なんとなく、大きな声で叫んでみる。しかし、反応はない。木霊すら返ってこず、周囲は深閑として静まり返ったままだ。


「……蔦壁は何か指示を出してるのかな〜?」


 耳を済ませてみるが何も聞こえない。きっと蔦壁ロココの事だから、言ったとおりにしているだろうと凪早ハレヤは思った。


「えーっと、とりあえず……バグ玉の制御でも解除してみるかな?」


 このままじっとしていても仕方ない。凪早ハレヤは蔦壁ロココに言われたことを思い出し、両腕をクロスさせて構えた。


「────バグ玉制御解除!」


 その瞬間!


 「バシィッ!!」と音が響いて、凪早ハレヤの周囲で青白い電撃が迸った。


「おおおおおっ!?」


 思わずビクッとなって身をかがめる。


「うっひゃああ、ビックリした! でも、これもあの時と同じだ!」


 宙を飛び回る赤い宝玉が突進してきた時も、たしかに電撃が迸った。今の電撃も、凪早ハレヤの目には全く同じように見えた。


 電撃が収まったのを確認すると、辺りを見渡してみる。よく目を凝らしてみると、黄緑色の薄い光の周囲に、薄く青白い光が球状に包み込んでいるのが見えた。


「マスター権限が発動されてるからなのかな?」


 従者(アシスタント)の霊魂と肉体の接触を断ち、異世界ウォーカーに肉体のコントロールを奪われているというミュリエルの言葉を信じるなら、そういうことになるだろう。

 となれば、マスター権限発動中は、凪早ハレヤからのスキル行使はできない、ということになる。


「ううん! これじゃあの赤い宝玉も俺に近づけないけど、俺もあの宝玉を捕まえられないじゃん!」


 それでは霊魂状態に成れたところで意味がいない。凪早ハレヤはガックリと肩を落とすしかなかった。


「何か良い方法は無いのかな〜?」


 鉄格子を握りしめ、辺りを眺め回すしか無い。


 そうやってしばらくボンヤリしていた時だった。


「おおお?」


 突然、凪早ハレヤの周囲で青白い光がキラキラと煌めいて、灰色の世界に飲み込まれるように消えていったのだ。

 キョロキョロとあたりを眺め回して、よぉ〜く目を凝らして見る。


「……青白い光が消えた?」


 黄緑色の光の外を覆っていた青白い光の膜が消えているように見えた。


「マスター権限を解除したのかな?」


 とすると、なぜ自分が霊魂状態から戻らないのか?


 疑問は募るばかりだが、凪早ハレヤはクッと口を引き締めた。


「もう一回、スキルを試してみるか!」


 鉄格子から少し離れると、両腕をクロスさせる。


「────バグ玉制御解除!」


 鉄格子がキラキラと黄色い光に包まれて、音もなく掻き消える。


「おおおお!?」


 いつものように平泳ぎで手足を動かして見ると、スイーッとばかりに動き出す。灰色の世界を自由に動き回れた。


「キタキタキタキタキタキタアアアアアアアアアアア!!!」


 大声をあげながら宙を泳ぎ回ってみる。黄緑色の薄い光は、凪早ハレヤと共に移動しているようだった。


「弓も撃てるかな?」


 静止して弓を引く動作をしてみたその時。


「あれれ……」


 フワッと意識が遠のいて、凪早ハレヤの視界は暗闇に包まれた。







マスター権限は使えそうですけど、どうなんでしょうか?

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