第九話 再誕小さな勇者
前回までのあらすじ
あたしの名前を覚えているか?あたしはあかねだ。
前回はなのはちゃん達と遊園地に行ったんだ。そして最後の仕上げとばかりにジェットコースターに乗ったら、カナエが気絶。んで、介抱してたら突然電話がきて。内容が、あたしの大切な友人。春樹の妹。美冬ちゃんが、無限睡眠症候群になった話だった。
楽しいことがあったら、なぜか悲しいとが起こる。それは、年齢関係なく訪れてしまうという、辛くも、受け止めるべき現実。
しかし、逆のことはうまく言えない。悲しいことがあったら、また悲しいことが重なる。実際はそんなことはなく、ただただ偶然である。
が、さすがにこの偶然は重なりすぎた。カナエが見た、マコトが死ぬという未来(今の所、誰にも話してはないが)。そして、あかねの友人の妹が無限睡眠症候群にかかったという話。この偶然は重なりすぎた。
(マコトが死ぬ……そんなことあるはずが……いや、あってはならない)
カナエはそう考えて、あかねの車に乗っていた。近くには、緊張した顔をしたなのは達が座っていた。
「おいおいお前ら。そんな暗い顔すんなよ!もっと笑顔だぜ!」
あかねはそう気丈に振る舞うが、無理してるのはカナエにも。そして、なのは達にも簡単に分かるほどであった。
車はぐんぐんと加速していく。あかねの焦りと比例するかのように、加速をしていく。
「…………」
無言が車内を包みむ。これ幸いにとカナエは思考に入った。未来の世界。それが正しいのか否か。いや、どうやってその未来に行くのか。
(未来は変わることはない……と、したら、いつかこの世は終わってしまうのだがな。でも、いつか来るとわかっておけばなんとかなるかもしれない)
しかし、あくまでもそれは観望。もし、未来を本当に変えることができるなら、それ相応の対価がいる。別になる、代用品が必要である。
(例えば、マコトの代わりに私が死ぬとかな。が、そんなことはしたくもないし、そもそもそんなことしても未来が変わるはずがない)
未来を変えることはそもそも、許されない行為だ。いや、そもそもできないのか。小さな未来なら変えることはできるが、大きな未来はほぼできない。
(こんな時、あの人なら恐らく世界が終わっても何もしない。あの人なら大切な人のために全力を尽くす……あの人なら……)
そんなことを考えていると、車がキキッーと音を立ててとまる。どうやら目的地に着いたらしい。あかねは少し急ぎながら、車から出て行き、カナエ達もドアを開けてあかねをそそくさと追いかけていく。
「美冬ちゃん!!」
あかねが言う友人の妹の名前を叫びながら仕事場のドアを開けると、そこには3人の男性とベッドの上で寝ている一人の女子中学生がいた。
ベッドの上で寝ているのは恐らく美冬ちゃんなるお方。そして、男性の二人はDr.トーマスと小野悟であろう。そして、もう一人の段席。彼は、あかね達に気づくと安心したように、そして少し悲しい顔で声を出した。
「あかね……」
「すまん、春樹……遅れた」
春樹とあかねが言った。というわけで彼は春樹ということになる。服装はスーツのズボンに、半袖のカッターシャツとそこにネクタイを少し緩めにつけて、その下に、赤い文字で『太陽』と大きな文字で書かれているシャツを着ていた。
「……え、春樹って、小峠先生のことだったんですか!?」
「ん!?な、なんで大沢と三月さんが……?」
春樹は少し混乱しながら、そう言った。彼はなのは達が通う小学校の先生で、なのはの担任であった。服のセンスが残念だが、そこそこ生徒からの人気はある。
「えっとですね……私、実はドリームダイバーをやってまして……」
「はぁ!?そ、それは本当か……いや、今はいい。いやよくないけど……ああー!!兎に角!美冬が大変なんだ!!これで丸1日寝続けてんだ!」
そして春樹は美冬の方を向く。当の本人は、気持ちよさそうに寝ているだけだが、丸1日という言葉。普通そこまで寝るのはありえないため、美冬は無限睡眠症候群にかかってると言えた。
「だが、今ここにいるのは、なのはちゃんだけあやめちゃんは病院だし、それにマコトちゃんは……」
「オレが、どうしたって?」
悟の言葉を遮り、誰かがドアから中に入ってきて、ゆっくりと歩いてきた。青いジャージに、赤いポニーテール。そして鼻の上にはってある絆創膏。
「マ、マコト先輩!!」
「へへっ。マコトさん完全復活だ!」
そう元気に言うマコト。なのはは強い憧れを込めた瞳でマコトの方を見ていたが、カナエはなんとなく、彼女の顔を直視できなかった。
(こんなに元気な奴が死ぬわけがない……きっと今日見た未来は間違いなんだ。また、今度見てみるか)
カナエはそう言い聞かせる。そうしないと気が変になってしまいそうでそして、そんなことを考えている自分にも少し嫌気がさして。自嘲気味にフッと笑う。
そうこうしてるうちになのはとマコトはドリームダイブをしたらしく、二人ともぐっすりと寝ていた。カナエは二人のサポートをしようと思い動こうとするが、ふと、ギリリと奥歯を噛み締めてるあかねに目が止まった。
「なぁ、あかねさん」
その時なんとなくカナエはあかねに声をかけた。この言葉はきっとかけないほうが平和かもしれない。しかし、カナエにとっては、そしてあかねにとっても。
「ドリームダイブ。してみないか?」
「……え?」
きっと、意味があるはずだった。
◇◇◇◇◇
「っつつ……久しぶりにしたら、身体中が痛いぜ……」
「ははは。私はもう慣れましたけど、でもやっぱり痛いですよねぇ」
なのは達は美冬の夢の中に来ていた。場所はなのは達が住んでる三月町そのままで、少し周りを探索してみる。
しかし、どこにもナイトメアや、美冬がいる形跡はなく、二人は顔を見合わせて、どうしようかと話し合おうとした。その時、ピピピと機械音が聞こえた。
《……ーあー!聞こえてるか君たち。私だ。カナエだ》
「お、カナエじゃねぇか。そういや、通信機がやっと直ったって聞いたな。早速だ。ナイトメアがどこにいるか教えてくれないか?」
そう言って、通信機からカナエの声が聞こえて、マコトは現実世界にいるようないつも通りのノリでその声に応えた。
なのははちらりと自分がつけてるドリームコネクターに視線を落とす。どうやらこれから通信が来るらしい。機能をつけたのか。いや、機能がついてるのを一から作ったのか。
《それじゃ、簡単に案内をしよう……そのまま真っ直ぐ歩け。そしたら目的に周辺に着くだろう。というか、きっと声が聞こえる》
なのはたちはカナエに言われるままに、指示通りに歩いた。しばらく歩くと、カナエの言った通りに少女の泣き声が聞こえてきた。
その声を頼りになのは達は歩いていく。すると、深い青の髪をサイドポニーにした少女がうずくまって泣いていた。
「み、美冬さんかな……」
そう言いながら、なのははその少女に声をかける。美冬らしき少女はなのはの声を聞いたとき、ピクリと体を動かしてボソリと言葉を呟いた。
「違う……」
「え?ど、どうしたんですか?」
「違うっ!!」
その叫び声に反応するように、周りの地面が揺れた。そして、ビルの谷間から何かが飛んできた。それは、顔は黒いが、魔法少女のような服装をしており、尻尾を生やしてライトグリーンの髪をツインテールにまとめていた。
「なに、この人……」
「しらん。どちらにせよ……」
マコトがそういうと同時に、その少女はどこからか剣を取り出して、鞘から剣を抜き出して、その場で大きく振った。
「友好的な態度……ってわけじゃねぇみたいだな」
そして、なのはとマコトは構える。なのはは戦う術を持ってないため、マコトから一歩引く。
すると、その少女。いや、恐らくはナイトメアであると思うが、それがニヤリと笑いながら剣を上に上げてゆっくりと振り下ろしていく。
「……?な、なにをする気……」
「っ!なのは!!危ねぇ!!」
マコトが突然そう叫び、なのはは抱えてその場から大きく飛んで離れる。なのはは意味がわからなかったが、次の瞬間に理由がわかった。
なんと、さっきまでたっていたところにナイトメアの剣が突き刺さっていた。そして、そこ一帯が大きく切り裂かれたようにぱかりとわかれた。
「な、なにが起こったの……?」
「知るか!くそっ、病み上がりにはきついぜこりゃ……!!」
マコトはそう言いビルの後ろに隠れた。なのははその時、マコトがいつも通り頼もしく見えた。が、なぜかその頼もしさは一瞬にして消えてしまいそうなほど脆く見えた。
バシュン
「えっ!?」
「おいおい……まじかよ」
その時大きな音が聞こえた。すると、後ろにあったビルが跡形もなく消えていた。代わりにどこか遠くで何かが落ちる音が聞こえた。
そして、遠くでクスクスと笑ってるように見えるナイトメアがいたことにより、そのナイトメアの仕業だというのは決定的だった。
「つまりあれか。あいつの能力は、物を消し飛ばす……いや、強制ワープか?とにかくそんな感じか……」
マコトは冷や汗をたらりと流しながらそう言った。勝てるビジョンが全くと言っていいほど見えない。そんなこと初めてだった。
「……?なにか、声が聞こえませんか?」
ふと、耳をすますと、ナイトメアの後ろにいる美冬がブツブツと何かを言っていた。そして突然大きく声を荒げて叫ぶ。
「なぜ!なぜみんなボクのことを守ろうとするんですか!ボクのせいで誰かが傷つくのは見たくないのに……!!」
「ダカラコソ、ぼくガチカラヲカシテアゲルヨ」
叫ぶ美冬にそっと寄り添ってそう優しくいうナイトメア。そして、ナイトメアはニヤリと笑い剣をやみくもに振り回した。剣先はなぜか見えなくて代わりに、なのは達の近くに何度も何度も現れる。
「だっ、くそ!!」
それを避けるので手一杯でマコトは攻撃のタイミングを見失っていた。なのはも同様で、戦う術を持ってないし、それ以前にマコト以上に危なっかしい動きで攻撃を避けていた。
「ちっ、しゃーねぇ……奥の手だごら!」
マコトはそう叫んで右手を突き出した。すると手につけてる巨大なグローブが一直線に飛んで行った。まるでロケットパンチのようで、なのはは思わず驚きの声を上げる。
しかし、そのロケットパンチはナイトメアに当たらなかった。なんと、当たる直前にまるで何かに吸い込まれるようにどこかに消えていき、そして次はナイトメアの後ろを飛んで行ったからだ。
「はぁ!?オ、オレの攻撃もワープさせることができんのかよ!」
そう言った瞬間今度はそのうちロケットパンチがマコトも目の前に突然現れた。マコトは避けることができず思い切り顔面にあたりそのまま飛ばされ、壁にぶつかった。
「ぐはぁ!?」
壁に強く打ち付けられたマコトは口から血を出して地面に倒れこんだ。しかし、マコトは倒れこみつつも軽くなった手を使って右に大きく飛んだ。倒れそうになっていたところには剣がタケノコのように生えていた。
「あ、危ねぇ……くそったれが!」
マコトはそう言って、足に力を思い切りこめて踏み込む。それを見たなのははそうだと思い出した。マコトにはアレがあった。いくらワープを使えるといえど、目視できなければ意味はないだろう。
そしてマコトは足を限界まで踏み込んで、ニヤリと笑った。そして、ナイトメアの方を睨みつけながら、口を大きく開いた。
「行くぜ!超ダッーーー」
カキンッ
その時、何かとても小さな金属音が聞こえた。なのはもマコトもそこに少し視線を落とす。そこには小さなハサミが刺さっていた。
その時の一瞬の隙。それだけでナイトメアが攻撃に入るのには十分だった。ナイトメアが剣をまっすぐ突き刺すと、マコトの腹の前にグワンと突然剣が現れた。
その剣が深々とマコトに突き刺さり、大きく切り上げられる。マコトは身体中から血を出しながら後ろに倒れた。なのはは悲痛な声を上げながら、マコトに近づく。
「えっと、能力発動!!」
ポワンと光が見えて、マコトの体をなのはは一旦固定した。この前得たなのはの能力。名前はまだなかった。
「マ、マコト先輩大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ……大丈夫……って、あれ?」
マコトはゆっくりと立ち上がろうとした。しかし、体が震えて立ち上がることができなかった。まるで生まれたての小鹿のように、ガタガタと震え続けるマコトは、とても悲痛だった。
「は、ははは……くそ、動けよ……」
乾いた笑いで自分の足を強く叩くマコトは知らなかった。想像以上にソンジュのハサミというのに精神を貪られているということを。
そんな隙を逃すわけはなく、ナイトメアは剣を横に突き出してそのままゆっくりと振り払った。すると、なのは達の近くに剣先が現れてそれがなのは達の命を借りとらんと襲いかかってくる。
「は、ははは!みてください!ボクだってやれるんですよ!!一人で、戦える。だから、もう!関わらないでください!!」
「ーーーっ!!」
なのははもう目を瞑ることしかできなかった。刻一刻と迫る命が聞ける瞬間を待つしか、やれなかったのだ。
「ーーーたくっ、世話がやけるぜ」
しかし、攻撃は当たらず。代わりに幼女のような声と、誰かが自分たちを運んでることが起こった。
紫のマントをはためかせ、セーラー服のような衣装を着た小さな幼女。彼女はなのは達を抱えて飛んでいた。しばらく飛んだ後、なのは達を地面にそっと下ろした。
「後はあたしに任せな。お嬢さん方」
「あ、あなたは……」
その時の幼女の背中は、小さく頼り甲斐のないように見えたが、なぜかなのはには大きく、頼り甲斐がある背中に見えた。
「お?あたしか?……よっしゃ。久しぶりにアレしとくか」
その幼女はそう言ってニヤッと笑い、そして大きく息を吸い込んでいた。その時、美冬は何か大切なものを見つけたかのように、口をパクパクとしていた。そしてその幼女は口を大きく開けて叫んだ。
「ひとーーーつ!!
助けを求める声が聞こえたら!
ふたーつ!!
どこからでも駆けつける!
みっつ!!
そしてその名を胸に刻め!!あたしの名前はーーー
ーーー魔法少女。マジカル☆アナザーだ!!!」
◇◇◇◇◇
「……今から5年前。欲望の権化と、正義の権化が命を懸けて戦った……しかし、その戦いはテレビで放送はされたが、ほとんどの人は覚えてない……か」
パタンと、ハキーカは本を閉じて、一息をつく。彼は今、レーヴ達が住んでいる、夢の中にいた。その夢を誰が見てるかは、一切わからないが。
「しかし、ねぇ。その魔法少女というのは、本当に存在してたのかな」
ハキーカはそう言って大きく伸びをする。ガセネタかもしれない情報だが、それでも少しは気になる。
ヒュン
そんな時、何かがハキーカめがけて飛んできた。ハキーカはそれを持っている本で受け止めた。本には深くハサミが突き刺さっていた。
「あははは♪当たらなかったわ♪ま、今の私は機嫌がいいから許してあげるわ♪悔しいけど、あなたのおかげでね♪」
「それはどういたしまして。でも、ハサミで狙うのは少しアレすぎないかな?」
ハキーカはひょこっと顔を出した青髪で、青を基調にしたドレスを着た少女。ソンジュという少女がいた。彼女はウフフと笑いながら、ハキーカのところまでトコトコと歩いてきた。
「あはは♪だってそういう様式美だもの♪」
「いらないよ、そういう様式美なんか」
ハキーカはそう言いながら、ソンジュがいきなり突き出したハサミを避けた。ソンジュもハキーカもあははと笑い始めた。じつは、二人ともどこか似ているところがあるのかもしれない。
「あ、そうだ。レーヴ様が探してたよ」
「あら♪理由は知ってるくせに♪貴方がこの前私に会いに来た時に脱出口を作ってくれてたんでしょう♪」
そうだっけね。と言いながら、ハキーカは新しい本に手を伸ばす。ソンジュはその本をハキーカの肩を掴んで、上から覗き見る。
「えっと……過去の無限睡眠症候群の患者……大和田……?誰かしらね、これ♪」
ソンジュはそう言って無邪気にハキーカに問いかける。ハキーカは目を少し上げてまた本に視線を落としてわからないと言った。
その答えに、ふーんとつまんなさそうにいうソンジュは何か思い出したように手をポンとうって、ハキーカに話しかける。
「実はねハキーカ♪私さっきマコトくんにすこーし挨拶してきたの♪その時のマコトくんと言ったら……う、うふふ♪あぁ!思い出すだけでぞわぞわしちゃう!レーヴお姉様に味わさられた快感とはまた違った快感を感じちゃうわ♪」
体 ソンジュは体をくねくねと動かして顔を興奮したように真っ赤に染め、よだれを垂らしていた。それにハキーカは全く気にしてなかったが。
「……あ、大変♪そろそろお姉様がここに来る気がするわ♪じゃ、また今度ね♪」
「……わかったよ。じゃあね、妹様」
そして優雅に笑ってソンジュはどこかに走り去っていく。その時ハキーカの横を通る時にぐさりとハサミを直接突き立てたのは、言うまでもない。
ハキーカは大きな叫び声をあげて椅子から転げ落ちた。ソンジュはクスクスと楽しそうに笑っていた。
◇◇◇◇◇
「がぁあぁぁあああっ!!」
ドゴン!そんな音を響かせて幼女。アナザーは地面に叩きつけられた。ナイトメアが強制ワープで叩きつけたのだ
「ハハハ。カッコヨクトウジョウシタノニモウボロボロジャナイデスカ。ミジメデスネ」
「ア、アナザーさん……!!」
なのははもうすでにボロボロになってる
アナザーに心配そうに声をかける。
アナザーの姿は実は過去にテレビで見たことがあった。あの時のアナザーは、手品師の風貌の少年か少女と戦っていて、そして勝っていた。
しかし、今はどうか。いくら強いと言え、あまりにもボロボロになりすぎではないか。アナザーが弱いという事実を認知せざるをえなかった。しかし
「けっ……それで終わりかよ。軽いなぁ……マタルやエレンホスの方がもっと痛かったぜ……」
「ナ、ナニ!?」
フラフラと揺れながら、ゆっくりとアナザーは立ち上がった。その姿を見て、また別の強さをなのはは見たような気がした。
ナイトメアは少し驚くが、すぐに気を取り直し剣を大きく横に払った。そしてアナザーの横腹に深々と突き刺さる。アナザーはそこから赤い血を出しながら、苦痛に満ちた声を上げる。しかし、それでもまっすぐと突き進んだ。
そして高く飛び上がり、上空からナイトメアめがけて拳を振り下ろした!ナイトメアは少しまた驚くが。落ち着いて手を前に突き出すと、アナザーの姿がまたふっと消えて、遠くの地面に勢いよく落とされる。
「がっはぁ!!!」
「アナザーさん!!」
倒れたアナザーに向かってなのはは走って近寄ろうとする。が、アナザーは手を振りこっちに来なくていいとした。なのはは悩むが、足を止めることを選んだ。
「お前……多分美冬ちゃんだろ……?ははっ、やんちゃになったな……」
「……なんで……なんで……」
美冬は震えながら、地面を踏み続けた。そして大声でアナザーたちに声を叫んだ。
「なんでボクをまた助けるんですか!!いつだってそうだ。ボクが困ったら、悲しんだら、無償で手を差しのばしてそして傷ついていく……嫌なんですよ!前から前からずっとずっと!!ボクだって、ボクだってぇええぇぇ!!」
そう叫んで美冬は地面に手を叩きつける。そんな美冬にゆっくりとナイトメアは寄り添って行き、頭をポンポンと撫でる。
「ソノタメニ。ダレカニタヨルデハナクダレカニタヨラレルタメニぼくハイルンダヨ」
ナイトメアはそう言ってふふふと笑う。アナザーはそれを聞いた後、ゆっくりと立ち上がり、そしてまたゆっくりと歩き出した。
「あたしは……美冬ちゃんじゃないから、気持ちなんてわからない。もし、本当に嫌だったら、本当にすまなかった」
そう言いながらフラフラと歩くアナザーにナイトメアはぴくりと反応し、そしてまた剣を突き出した。ワープにより眼前に現れる剣先をもろに目に受けるアナザー。
「でもなぁ……」
「ヒッ!?ナ、ナンデウゴクノデス!!」
しかし、アナザーはそれでもゆっくりと歩き出す。剣先を伝い血がポタリと地面に落ちても、それでも進む。
「残念だが、美冬ちゃんがいくら言っても、あたしは美冬ちゃんに手を差し出すぜ。それは何故か。そんなもんあたしが知るか。ただ差し出したいから差し出すんだ」
いつの間にか、美冬の前にアナザーは立っていた。そしてアナザーは手を開いて差し出した。美冬は泣きそうな顔でその手とアナザーを見た。
「フザケルナァ!!」
突然ナイトメアがそう叫びアナザーの腹を蹴り飛ばした。無防備に後ろに吹き飛ばされたアナザーをキッとナイトメアは睨んだような気がした。
「ぼくハボクダ!イチバンボクノコトヲワカッテルンダ!!ダカラ、オマエハココデコロス!」
無茶苦茶だ。なのははそう思うが、ナイトメアは御構い無しにめちゃくちゃに剣を振り回した。するとアナザーの体は無数に斬り刻まれていく。
「なぁ、美冬。聞いてくれるか?」
斬られながらもなお、アナザーは口を開ける。美冬はゆっくりと立ち上がってアナザーの言葉を待っていた。
「人に頼るってのは。手を差し伸べられるってのは、恥ずかしいことじゃねぇんだ。だって、そんだけ周りの奴らが、お前のことを気にしてくれてんだぜ?。一番恥ずべきことはな、人に助けられるのが当たり前って思ってるやつだぜ……美冬は、そんなこと思ってない。お前は十分、強いよ」
「ダマレダマレダマレ!!」
ナイトメアはそう叫んで剣を勢いよく突き出した!すると、その剣は何度も何度もワープを繰り返して、アナザーの腹に深く突き刺さる。しかし、それでは終わらず、そのまままっすぐと壁に当たるまで刺さり続けた。
釘を打ち付けられたように壁に固定されたアナザーは腹から血を流していた。それを見たナイトメアはニヤリと笑い、上空に高く飛んだ。
「ハハハハ!!ヘラズグチヲタタカセナイヨウニシテヤル!!」
ナイトメアはそう叫んで手を上に大きく振り上げた。すると大きな裂け目のようなものが現れて、周りにあるビルを食べるように巻き込みながら、ゆっくりと降りていく。
「えっ!?」
なのはが驚いた声をあげて上空を見上げる。するとそこには先程食べられるように吸われていった、無数のビルの破片などがゴゴゴと音を立てながら落ちていってる光景だった。
「オシツブサレテシマエ!!ハハハハ!!」
そんな声が聞こえたかと思うと、その声が聞こえなくなるほどの大きな音と、ナイトメアの笑い声が響いた。
それを見た美冬はばたりと倒れる。そして、ナイトメアはその美冬をちらりと見た。美冬は、後悔のようなものを感じまでいた。目から流れる涙は、彼女の後悔を表していた。
「サァテ、ソロソロヒキヌコウカナ」
ナイトメアは、そう言った後、ゆっくりと剣を引き抜いた。ズブズブと音を立ててその剣先がだんだんと見えてきた。
「……よぉ、やっと近くであえたな……!!」
アナザーが、体がボロボロなりながら、ナイトメアの剣を強く握りしめていた。そして、その剣を引き抜くときについてきたのだ。
「マジカル……!!」
「ヤ、ヤメロォォオォォォォオオォ!!」
瞬間、アナザーの拳が青く光り、そして巨大に見えるほどのオーラをまとった。
「インパクトォ!!!」
ドゴン!!
アナザーは大きく叫んだ。そして、ナイトメアの顔に深々と拳が突き刺さり、そして遠くに吹き飛ばされていく。
ベチャリと音が聞こえて、ナイトメアはだんだんと消えていった。そして、アナザーは、ゆっくりと美冬の前に降り立った。そして、少し恥ずかしそうに手を差し出した。美冬は目から涙を流しながら、その手をパシンと強く握った。
「よかったですね!マコト先……って、あれ?」
なのははマコトに声をかけようとした。しかし、なぜかマコトの姿はどこにもなかて、まるで、霧のように消えてしまっていた。
「…………」
マコトは実はいた。遠くの物陰からなのは達を見ていたのだ。しかし、すぐに視線は自分の足に移る。自分の足はガクガクと滑稽なほどに震えていた。
「……オレ、ビビってんのか。あのソンジュのやつに……そして戦いに……」
そうぼそりと呟いたマコトはゆっくりと、元来た道を歩いていった。その後ろ姿は、何か覚悟を背負ってるように見えた。
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【次回予告】
「これをさっきマコト先輩が!?」
「みんな大好きハキーカさんだよ」
「早くお金を持ってきなさい!」
「戦えねぇんだ」
【次回:10話 マコトの真実 前編】
お疲れ様です。前回から大幅にあいてしまいましたね。すみません。
今回は前回の主人公、あかねと美冬二人にスポットを当ててみました。やはり初代主人公。描きやすくて楽しかったです。
次回はついにマコト先輩の話。お楽しみに




