第八話 遊園地ドキドキパニック!!
前回までのあらすじ
あははははは!!きゃははははは!!楽しい楽しい楽しい物語の始まりよ!!!今回は殺戮も悲しみもない!!あるのは笑顔と楽しさだけ!!まるで『落ちてあるアイスの棒を拾ったら当たりだった』みたいな!!あははははは!!はじまるわ!はじまるはじまる!!!!あははははは!!!
「おそいねぇ、三月さん」
「そうだね、春香ちゃん。もうすぐこないと学校に間に合わないよ」
少しづつ暑くなってきた日差しを浴びながら、二人のランドセルを背負った少女が立っていた。オレンジの髪をツインテールにしている少女は、大沢なのは。青髪であの毛が生えてるのは橘春香と言った。
そして二人が待っている少女。その名前は三月アリスと言って、赤い髪をロールにしている少女であった。
「ねぇ、そろそろ行かないとやばくない?」
春香が焦ったように足踏みしながら、なのはにそういう。おそらく時間は少し早く歩かないと間に合わないほどになってるのだろう。なのはも、遅刻はしたくない。というわけで、アリスを置いて先に行こうとした。
「あ、見てなのは。ヘリコプターだよ」
「ん?あ、本当だ……こんなところでも飛ぶんだねぇ」
いざ出発しようとすると、頭上のあたりをヘリコプターが飛んでるのが見えた。ヘリコプターがならず特有のプロペラ音を鳴らしながら暫く飛んでいた。
「ね、ねぇ。ずっとここ飛んでない?」
春香の指摘に対してなのはも頷いて肯定を表した。まさか。いや、そんなばかな。そんなことあっていいはずがーーー
そんなこと思っていると、ヘリコプターがゆっくりと降りてきて扉がバンと勢いよく開いた。開いた先には赤い髪の少女が拡声器を持っている少女がいた。そして、その少女は大きく息を吸って口を開けた。
《なのは様ー!!春香様ー!!一緒に学校に行きましょうー!!》
「いや、おかしいよね!!なんでヘリコプターで学校行こうとしてるの!?」
そう、その少女はアリスであった。そのアリスの行動に思わずツッコミを入れた春香。なのはも口をあけて、文句を言おうとした。
「そ、そうだよ!学校にヘリコプターで行ったらみんなの注目の的になっちゃうよ!!」
「ってそこかーい!!」
そんな二人の声はアリスの付き人のじいやの時間がないですよの一言で全てが消えて、ヘリコプターに乗らざるをえなくなった。
◆◇◆◇◆
「全く……三月さんのせいでとても恥ずかしかったよ……」
「あら、それはごめんなさい。でも、急いだ方がいいと思いまして……」
3人は無事に(と言っていいかわからないが)学校につき、今は昼休憩の時間になっている。3人とも机を合わせてお弁当を食べて、はなしをしていた。
アリスというのは、この三月小。しいては、この三月町を作った三月グループの一人娘で、俗に言うお金持ちであった。その為のあの行動なのだろうか。
「わたくし、一緒に登校するというのは初めてでして……」
そう言って恥ずかしそうに頭をかくアリス。その姿を見た後、なのはと春香は顔を向き合わせて、へへっと笑い、アリスの方に向き合った。
「三月さん!今度一緒に遊びに行こうよ!!」
「え?遊びに……ですか?」
「そうだよ。噂じゃ、もうすぐ新しい遊園地ができるらしいからそこにみんなで行こうよ」
近くに遊園地ができるのはおそらくアリスも知っていただろうが、アリスはその提案をうけたあと、少し悩むそぶりを見せてわかりました。と一言言った。
「ところで遊園地は何円あれば貸切ができるのでしょうか?」
「なんで貸し切るの!?普通に遊ぼうよ!!」
「え、貸し切るはダメですか?」
そんなどこかずれてるアリスの言葉に春香が突っ込むというよくわからない図が出来上がってるのをみて、なのはは思わず微笑む。
「遊園地に行くお金は……まぁ、お小遣いを削れば、なんとか……」
「え、春香ちゃん。それぐらい私が出すよ」
なのはがそう言った。実際ドリームダイバーとしての給料は多くもらっており、女子小学生にしてはありえないほどのお金を持っていた。しかし、なのはのその言葉を聞いて、春香は顔をしかめた。
「むぅ、確かに僕よりなのはの方がお金を持ってると思うけど……いや、確実に持ってるけど、あまりそういうことを言わないでほしなぁ。僕はなのはと対等の関係でいたいんだ。だから、僕のお金は僕が払うよ」
そう春香にいわれると、なのははあうっと、押し黙る。
「うふふ、春香様ってお優しいのですね」
「え。そーお?うふふ〜」
そう言って春香は嬉しそうに体をくねらせる。春香のリアクションは面白く、一緒にいて飽きることはない。
「問題は……そうだね。大人と一緒じゃないと……」
流石に女子小学生だけで遊園地に行くのは……ということで誰かいないかと3人でうーんとうなる。親やDr.トーマスはおそらく忙しいだろうし、アリスの付き人のじいやは、子供同士で楽しんでということで、その日はついていかないらしい。
「うーん。何処かに暇そうで優しい大人の人いないかなぁ……あ、そうだ!!」
突然思い出したように春香は手をポンとうち、二人に笑いかけた。
◇◆◇◆◇
「……で、あたしに会いに来たってわけか」
「そうなんです!こんなこと西園寺さんにしか頼めません!」
放課後。3人はいつもの名もない公園にて、何時ぞやにあった、パン屋の女店主。西園寺あかねに会いに来た。大人で暇そうで優しい。この三つを果たせる人がこの人しか思いつかなかったのだ。
「しっかしなぁ……あたしもその……プライドってもんがあるからなぁ」
そう言いながら頬をかくあかね。そして3人は顔を見合わせて、相談を始めた。どうやって誘うか話してるらしい。どこか微笑ましくてあかねは思わずかおが綻ぶ。
「あら、あかね。この子誰なの?」
すると、入り口から凛とした声が聞こえた。その方に視線を向けると、黒いスーツ姿であかねが歳をとったらこうなるだろうなと思えるような顔をした女性が歩いてきた。
「な、母さん……!!」
「え、あかねさんのお母さんですか!?……って、確か……」
なのはがそう言ってこの女性のことを思い出そうとしていた。そしてアッと言って顔を上げ、声を出した。
「たしか、増穂さん!お母さんの同期の……人、ですよね……?」
「あら、誰かと思えば大沢の娘さん……なのはちゃんか。ふふ、こんにちは」
そう言って増穂はふふっとほほえむ。そして、あかねの方に向き合い今まで何をあった聴き始める。
「遊園地〜?それぐらいいきなさいよもぉ〜どうせ、暇なんでしょ?」
「け、けどさぁ……プライドっていうかなんていうか……」
「そんなチャチなプライドすてなさいよ」
そんな会話が聞こえてくる。もしかしたら、あかねが付いて来てくれるかもしれない。その期待を胸にもって 会話が終わるのを待っていた。
「……はぁ、しゃーねぇ……いいよ、ついて行ってやる」
そう観念したようにあかねが言うと、春香はやったと叫んで飛び上がった。なのはは安心したように息を漏らし、アリスはふふふと微笑んでいた。
「ありがとう!増穂お姉さん!!」
春香が屈託の無い笑みでそう言うと、増穂がまんざらでも無いような顔で春香の頭を撫でる。
「おい、春香ちゃん。母さんはもう4ーーー」
そこまで言うと増穂はあかねの腹に思い切りパンチをした。カエルはが潰れたような音が聞こえてあかねは地面にうずくまる。
「さて、それじゃ、私はそろそろ家に帰るけど……あかねはどうする?」
「ぐっ……あ、あとでいくよ……あぐぅ……」
あかねが途切れ途切れにそう言うと、増穂はあらそう?といったあと、3人に微笑んでその公園をあとにした。なのははあかねの背中を心配そうな顔でさする。
「はは、サ、サンキュー……そうだ、行くところってもうすぐできる遊園地……だろ?」
そう聞かれてなのははハイと頷く。するとあかねはゆっくりと立ち上がりポケットをゴソゴソと漁っていた。そして、何かを一枚取り出した。
「これ、この前春樹っていうあたしの友達からもらったんだが……その遊園地のペアチケットらしい。あたしはこれでいくから、あと一人ぐらい友達誘いな」
「……は、はい」
その春樹という友人に、同情しながら、なのは達はあかねの提案を受け入れた。その時のあかねの顔はどう見ても悪気があるようには見えなかった。
◇◇◇◇◇
カタッ
暗い部屋にそんな物音が響いた。誰もいないかと思われたが、はじの何かがモゾリと動いたのが見えて生きてるものががいるのはわかった。
コツ……コツ……
今度はそんな足音が響き、だんだんとそのモゾリと動いた者の近くまで来る。そして、突然ピタリと止まりソレは、懐中電灯を使い、そこを照らした。
「やぁ、妹様」
「あら、ハキーカじゃない♪」
男性と女性の声が聞こえたかと思うと次に刃物の音が響いた、そして、ドスンと尻餅をつく音が聞こえてその、ハキーカと呼ばれた青年が手をゆっくりと上げて降参を表した。
「あら、あたらなかったの♪殺すつもりでやったのに♪」
「ははは。僕様をいじめるのはやめてほしいなぁ妹様。いや、ソンジュ様?」
「別に呼び方に怒ったわけじゃないわ♪ただなんとなく。人間がありを殺すぐらいなんとなくよ♪」
そう言いながらソンジュはケタケタ笑いだす。ハキーカは少し息を吐き、そしてゆっくりと立ち上がった。部屋は暗いため顔は見えなかったが、お互い同じように笑っているはずだった。
お互い、狂ったように。
「で、僕様がここに来た意味だけど……どう?あの話、多少は協力してくれる気になったかな?」
「あの話?あー……あれねあれ♪」
そう言ってソンジュは手に持った刃物。ハサミをかんっと地面に突き立てた。それを見たハキーカはヒュゥと口笛を鳴らしてそのハサミに視線を落とした。
「答えはノーよ♪何が悲しくて、貴方の力をつけるために私の力をあげないといけないの♪」
「うーん。悪い話じゃないと思うけどーーー」
そこまで言うと、ソンジュはハサミをビュンと投げ飛ばした。ハキーカは右ほほにそれを受けて赤い血がツッーと垂れて行った。
「うふふ♪それ以上口を開けないで♪殺すわよ?」
「は、ははは……怖いねぇ。うん。こわい……ふふふ」
ハキーカはそう言いながら自分の頬から流れる血に指を当てて、それを自分の口に持って行った。そして、血を下でペロリと舐めとった。
「それで?話は終わりかしら♪だったら早くここから出て行ってくれない?私今欲求不満なの♪貴方を襲って食べちゃうかも♪」
「それは、御免被るよ。じゃ、そろそろ退散しますかね」
ハキーカはそう言って暗い部屋からそそくさと出て行った。重い扉が閉まる音が聞こえて、ソンジュは大きく伸びをする。
「あーあ……」
そんなため息を漏らして、ソンジュは床に突き刺したハサミを引き抜く。そして、天井に向かってまっすぐ投げた。
「あの時は魅力を感じたのに、今はさっぱりね♪……あーあ」
ソンジュはまたため息をつきながら、後ろに置いてあった人形に手を伸ばした。いたるところから綿が出てるが、ソンジュはそれをだきよせた。
「この世界で一番狂ってるのは……」
そして、それを強く抱き寄せた。その内、人形の頭がブチッと音を立てて千切れた。それをソンジュは上に投げて、それめがけてハサミを投げた。
「一番狂ってるのは、誰かしらね?」
その人形は、ついに落ちてくることはなかった。
◇◇◇◇◇
「番号よーい!!いち!!」
「に!!」
「さ、さん!」
「よん」
「……ご」
色んな人が集まってる遊園地の前に、あかねとなのはたち3人。そして機嫌が悪そうな顔をした白衣を着た、眼鏡をつけた少女。カナエがいた。
「なんで、私がこんなところに……」
カナエがぶつくさ文句を言っていた。それをなのははなだめていて、あたふたしていた。
「だって、もったいなかったし。Dr.トーマスさんも言ってたじゃん。たまには外の空気を吸ってこいって」
「しかし……まぁ、パ……Dr.の言うことなら仕方ない。が……」
そう言って、カナエはあかねの顔をちらりと見た。あかねはそれに気づいてどうしたと声をかける。しかし、カナエはすぐに目をそらす。
(あの子……カナエちゃんっていうらしいけど……あたしのほうをチラチラ見てるし……何だろう……何だか、この子の顔を見るたびに、あいつらの顔を思い出す)
そう考えながら、あかねはポケットに入ってる、緑のスカーフをぎゅっと握りしめる。これを握ると、少し安心する。
あいつら……自分の欲のために、自分の欲するもののためには、どんなこともする。どんなものも殺る。あの敵達のことを彼女は思い出してた。
「あかねさーん!!はやくはやくー!!」
「ん?あーおう。あんまりはしゃぐなよ〜怪我しちまうから」
春香が元気にそういうのを、あかねは気付き、少し早足にそこまで行く。いまは、あいつら事を思い出さないでおこう。楽しもうと、あかねは思った。
そんな彼女の近くで小石がコロンと音を立てて転がっていった。
◇◇◇◇◇
「えっと、カナエさん……?」
「なんだ?なのは……キミは何かに乗らないのか?」
「え、あの……その……あ、あはははは」
なのはは先程から変わらない顔をしているカナエの隣に座っていた。しかし、カナエはずっと変わらない不機嫌顔で、なのははどうすればいいかわからなくなってきた。
絶叫マシーンというのに乗っている人たちの叫び声がその遊園地にこだまするたびに、カナエは何かブツブツしゃべっていた。
「なんで、あんなに叫ぶのに乗るのだ?意味がわからない……叫ぶなら乗るな。怖いなら乗るな。嫌いなら乗るな……人間というのは不思議すぎる……だからこそ興味深くもあるけど……理解できん理解できんぞ……何故マコトの筋肉ダルマはまだ体が痛いとか言ってるのだ……何故、あやめは病院の定期健診の日なのだ……!!」
そう言葉をしゃべるカナエは少し怖くて、なのはは一歩引きそうになる。しかし、なんとか踏みとどまり、何かしようかと考える。
あかねと春香はジェットコースターに何度も乗っていた。乗るたびにあかねの顔がだんだんと青ざめてきたが、なのはは何も言えなかった。逆に春香はきゃっきゃっしており、噂じゃ、ジェットコースターに乗りながら景色を撮影したらしい。
アリスはせっかくなのでと言って近くのレストランまで何か食べ物買いに行った。買いに行く時にジャンクフードについて、やれ、体に不健康だの、やれ、水道水の方がおいしいだの、どう聞いても間違った知識を嬉しそうに述べていた。
(もともと、リフレッシュのためにここに来たのに……カナエさん、何もできてないなぁ)
研究所から出るとき、Dr.トーマスからカナエの事を頼んだと言われたため、何かしたいが……
「あ、そうだ!!私何か飲み物でも買ってきます!!何か欲しいのはありますか?」
「……力水……」
「わかりました!!では、ここで待っててくださいね!」
この場から逃げ出したい気持ちと、何か話題を作りたいという気持ちで、なのははそそくさとココから立ち去った。
しばらく進んだ後に、自販機が置いてあった。なのはは力水というのを探していたが、見つからず、しかし水と言ってるので、天然水のボタンをポチッと押した。
自分のは何にしようかと考えながらボタンの上を指でなぞっていると、コツンと足に何かがあたった。何かなと思いそれを拾い上げると、それはお茶のペットボトルであった。
「あー、ごめんごめん。落としちゃったみたい」
若い男性の声が後ろから聞こえてきた。なのはは大丈夫ですよと言いながら、そのペットボトルを声の主に渡そうとした。
「ーーーっ!?」
「ん?どうしたの?何か僕様の顔についてるかい?」
なのはが驚いたのは無理もない。目の前に立っていた男性は、紫色の髪を伸ばして、足枷や手と首に鎖をつけている長身の男性であった。
そう、ソンジュというナイトメアと一緒にいた、ハキーカといったはずの男性が、目の前に立っていた。
「えっと……あの……」
思わずどもるなのはを見ながら、ハキーカは自分の顎に手を置いていた。そして、何かわかったように手のひらをポンと叩いた。
「この鎖のことが気になってるのかな?これは、俗にいうコスプレみたいなものだよ。うん、気にしないでね」
「は、はぁ……」
そこではないと言いたかったが、そう言ったらきっとめんどくさいことになるので、謎のもどかしさを覚えながらなのははぎゅっと天然水のペットボトルを握りしめた。
「そうだ、もう会えないかもしれないから名前だけ教えておくよ。僕様はハキーカっていうんだ。きっと、えらい科学者さんとかならわかるんじゃないかなぁ……」
と言って、ハキーカは変わらない笑みを浮かべる。思わずなのははゴクリと生唾を飲み込んで一歩後ろに下がった。
「さて……じゃ、君の名前を教えてくれないかな?」
ドクン。そんな風に心臓が一度脈を打ち、そしてだんだんとドクドクと、何度も何度も心臓が脈打ち始めた。
「わ、私は……大沢なのはです……」
消え入るような声でなのはそう言って、そこから転がるように走って逃げ出した。その走る後ろ姿をハキーカは見ながら、ペットボトルの蓋を開けた。
「なのはちゃん。ね……ふふふ、先輩としていろいろ教えてあげたいけど難しいね……ふふふ」
そう笑いながらペットボトルに口をつけてゴクリと飲んだ。しかし、笑いすぎたからはわからないが、飲んで直ぐにゴホゴホとむせてお茶を口から吹き出した。
◇◇◇◇◇
「はぁ、はぁ……た、だいごふぉ……げほ、ごふぉ、ぐおふぉ!」
急いで逃げてきたなのはを迎えたのは尋常じゃないほどの息切れと、いまだにブツブツ文句を言っているカナエの姿であった。
「カ、カナエさん……飲み物……買ってきました……」
なのははそう言って買ってきた水をカナエの方に差し出すカナエはブツブツ文句を言いながらペットボトルの蓋を開けて一気にグイッと飲んだ。そして一気に口から吹き出した。
「な、なのは!?これ力水じゃないじゃないか!!なんだ、バカなのか!?キミは幼稚園生以下か!?」
そう言いながらゴホッゴホッと咳をしながら文句を言うカナエ。なのはは何故怒られたかわからなかったが、後で調べてみたら力水は炭酸であり、天然水は天然の水。
「はぁ、はぁ……全く、私にはすべきことがあるというのに……」
そう言って今度は普通に水を飲んだ。なのははなんと声をかければいいかわからず、取り敢えず隣にストンと座る。
なんで、カナエがこんなにイライラしてるからなのはにはわからなかったが、とりあえずぼーっとしていた。
「あり?あんたらまだここにいたの?」
前から声が聞こえたと思うと、少し青ざめているあかねと、楽しそうにニコニコしている春香と、ハンバーガーをパクリと食べてまずいと繰り返してるアリスがいた。カナエは顔を少しだけあげてそのあとまた下に向ける。
「おいおい!なに辛気臭ぇ顔してんだ!もっと笑え!!」
そう言ってあかねはカナエの背中をばしんと強く叩く。あまりに強すぎてか、カナエはゴフォ!と思いっきり咳き込む。
「そうだよ!せっかく遊園地に来てるんだから楽しまないと!」
「そうですわ。しかしなんでしょうねこのあまりにも美味しくない産業廃棄物は……あ、いりますか?カナエ様」
「いらん。というかそもそも私は数合わせに付き合わされてるんだ。イヤイヤ来てるというのに、遊ばせようとするなど……鬼かキミらは……」
そう言ってカナエはギロリとあかね達を睨みつけた。もしかしたら、研究所にいすぎて人混みが大の苦手なのかもしれない。そしたら、悪いことをしたと、なのはは隣に座りながらそう思った。
「……たて!カナエ!スタンドアップ!ハーリーハーリー!!」
あかねは突然そう言って脇の下に手を持ってきてグイッと持ち上げた。カナエは離せ!と叫んで足を振り回すが、あかねに引きづられて何処かに連れ去られる。なのは達は顔を見合わせて二人を追いかけて行った。
「到着!カナエ、一緒にのるぞ!」
そして来た場所は、人の叫び声が聞こえ、遊園地では必ずと言っていいほど、そこそこの長蛇の列ができる、ジェットコースターであった。今は、人があまりいないらしく、すぐに乗れそう。
「や、やめろ!!こういう非生産的なものに乗る必要などあるだろうか!?いや、ない!!」
「反語で文句を言うな。きたからには乗らなきゃ損損。ってヤツだぞ」
そうして、泣き言をあげながら、しかし途中で吹っ切れたのか、自分の足で歩き出してそのジェットコースターのところまで歩いって言った。カナエはもちろんのこと、あかねの足もガタガタと震えてるのがわかった。
「あ、僕たちも乗りまーす!!いこ、なのは!三月さん!」
そういうわけで3人が追加されて計5人でジェットコースターに乗り込んだ。なのはは顔を青ざめて、春香は楽しそうにキャッキャッとはしゃぎながら。
そしてピーと出発する音が聞こえてゆっくりと、ジェットコースターは上がっていく。皆、ゴクリと生唾を飲み込んだ。
そして一番高いところまで来て一回止まる。そして、またゆっくりと。しかしだんだん早くジェットコースターは加速して急降下していく
「わぁほぉおぉおおぉぉぉい!!楽しいーーー!!!」
これは春香。
「キャーーーー……と、叫ぶものですわよね確か。キャーーーー」
これらアリス。
「あぁああぁぁああぁ!!あああーー!!あーーー!!」
これはなのは。
「ぬぁあぁああぁああぁ!!だー!!畜生!!なれねー!!」
これはあかね。そしてカナエはというと。
「ーーーーーー」
白目をむいていた。
◇◇◇◇◇
「……ここは……?未来の世界……なのか?」
何処までも暗い道の中で、カナエは周りを見渡しながら、そう呟く。
恥ずかしいことながら、どうやらジェットコースターに乗っていつの間にか気絶してしまっていたらしい。しかし、なぜか未来を見ている。カナエは意味がわからないと呟いて、ゆっくりと歩く。すると何処か遠くで戦いの音が聞こえた。
カナエは誘われるようにそこに歩いていく。そこには3人の人影が見えた。一人はカナエ。そして、戦っている二人は、一人は青い髪を伸ばしたドレス姿の女性。そしてもう一人は……
「……マコト?」
マコトであった。彼女は相手の青い髪の女性が振り回すハサミのようなものを、腕でうまいこと弾いて戦っていた。
しかし、マコトは隙をつかれたというように大きく弾き飛ばされる。そして壁にぶつかり、ゆっくりと下に落ちていく。
「い、いかん!!」
カナエはマコトに駆け寄ろうとするが、何か見えない力のようなものが働いて、そこに近づけず。逆に青い髪の女性がゆっくりとマコトに近づいていく。そして。
ズバン
そんな軽い音が響き、マコトの首は大きく跳ねられていた。あたり一面には血が舞い、そして、マコトの体から離れた部分も大きく飛んで舞っていく。
「な、なんで……」
カナエはそう言いながら膝から崩れ落ちる。なんという未来。悲しき、絶望的な未来が、彼女は見てしまった。それに彼女は知っている
「未来は……」
変えることができない。という事を、彼女は一番よく知っていて、だからこそ、彼女は今ここで悲しみに暮れていた。
それをあざ笑うように、マコトの肉体は人形のようにばたりと倒れて、青い髪の女性はそれをハサミで何度も何度も刺していた。
◇◇◇◇◇
「はぁ!?は、春樹何言ってんだ!?」
「ん、うぅん……」
「あ、起きた!よかった……」
カナエはあかねの叫び声によって目を覚ました。そして重い体をゆっくりと持ち上げて周りを見渡す。もう日が暮れ始めていて、人もだんだんと減ってきていた。
「ふざけんなよくそが……!!」
あかねはそう強気で、しかし体は弱々しく震えていて、手からスルリとスマートフォンが地面に落ちる。
「えっと、どうしたんですか?」
なのはが心配そうにあかねに声をかける。あかねは少し時間を置いた後、スマートフォンを拾い上げてそして、小さく呟いた。
「あたしの友人の妹の……美冬ちゃんが…………ってよ」
「え?なんですか?」
最後の言葉が聞き取れず、なのはは思わず聞き返す。するとあかねは少しだけ、深呼吸をして、今度はなのは達のほうを向いて口を開ける。
「美冬ちゃんが……無限睡眠症候群に……なったって……」
その一言をひねり出したあかねはまた深くうなだれた。先ほどまでの強気な姿勢は何処へやら。
楽しい時間はもう終わり。彼女達は、戦いから逃げられない宿命にあるということ。ただ、それだけであった。
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【次回予告】
「マコトさん完全復活だ!」
「ボクだって……ボクだってぇええぇぇえ!!」
「」
「ひとーーーーーつ!!」
【次回:09話 再誕。小さな勇者】
個人的には遊園地よりか水族館に行きたいです




