第22話 ギルド認定試験(四/六)
あんまるがニヤついている。モンスターをうまく倒せたのが、よほど嬉しかったのだろう。
ともあれ、やはり戦闘は問題なさそうだ。
ぼちぼち歩いて、第二階層の探索を始める。ここからが本番、いっそう気を引き締めねば。
「あんまる。第五階層はボスを倒すだけだから、二、三、四階層の探索を、どれだけ早くクリアできるか、つまりモンスターの殲滅速度が重要になる。鮫丸の強化状態はどれほど続く? 維持コストはかかるか?」
「解除するまでだよん☆ 維持コストは必要なくて、衝撃波を出すたびに魔力を消費する仕組みー」
コスパもいいらしい。やはり神秘遺贈の家系は、強力なダンジョンスキルを発現するな。
姫虎の【六秒間の蛮行】も破格の性能を誇る強化系スキルだった。アレも確か、戦神の加護を受けた上杉の血筋がどうこう……、という話だったはず。
『あんまるちゃん強くなったな』
『前回の牛鬼戦でめちゃくちゃ成長した』
とはいえ、衝撃波の乱発は無駄な消耗を招くだけだろう。
「あんまるは石巨人を担当してくれ。それ以外は俺がやろう」
「段蔵くん、石巨人は苦手なん?」
「クナイも手裏剣も、基本的には人間用だ。ああいう石の塊には使えん。【風魔流忍法:吞牛之術】の割断なら通じるだろうが、あの巨体は影に収まりそうにない」
俺の影の大きさは、光源の位置と強さに左右されてしまう。足首くらいなら落とせるかもしれないが、安定しないのだ。実家同然の伊賀の奥里ならともかく。
……まあ、忍者拳闘術を使えば倒せないわけではないが。素手であのサイズの巨人を砕き切るのは面倒だし、時間もかかる。今回はあんまるに頼るとしよう。
「なるほどねー。おっけ☆ 石巨人は任せてくれい。……さっそく、次のが来たみたいだし」
あんまるの視線の先に、またしてもモンスターの一団がいた。
石巨人が一体。それに、オオカミとイノシシの群れ。それぞれ四頭ずつ。
「ふむ。それじゃ、手はず通りに」
さっと袖から取り出した手裏剣を六枚、両手の指の隙間に挟んで投擲。狙い通り、獣型モンスター六頭の眉間に刺さった。黒い霧にばらけて散る。
残った二頭は、忍者瞬歩術で急接近して、長クナイで首を落とす。致命傷だ。
『はっや』
『秒で草』
『反撃一切させないのヤバ』
「あんまる、道は開けたぞ」
「りょーかいっ、おりゃー!」
と、あんまるが石巨人に向かっていく。鮫丸の衝撃波斬撃を二発使って、すぐに石巨人も黒い霧になった。
『おつ』
『おつおつー』
また歩き出したところで「段蔵くんさー」とあんまるが俺を見た。
「やっぱり武器とダイブドレス作ろ? デカい魔術付与武器作ってもらえば、石巨人みたいなのが相手でも段蔵くん無双できちゃうよ? あ、日本刀にしようよ、アタシとおそろになるし」
「すまんが、忍具以外は使わないと決めているんだ」
「それってクナイと手裏剣? ……んふ、閃いた」
あんまるが例のデコデコした手帳になにか書き込み始めた。
『なんか企んでる顔だ』
『ノート取るの真面目で好き』
「おい。ダイブドレスは買わないからな。試験に集中しろ、あんまる」
「まあまあ。へへへ、まあまあまあまあ」
まったく。……ともあれ。
モンスターと接敵しても数十秒で殲滅可能だし、俺もあんまるも疲労はほとんどない。油断はしないし、舐めてかかりもしないが、アグレッシブに探索を続けていく。
そして、特に問題なく、第四階層までクリアし、第五階層への階段も発見した。
「あとはボスだけだな。荻谷さん、いま何分ですか?」
「まだ六十分も経っていません。……速いですね。過去最速だと思います」
涼しい顔で付いてきている荻谷さん。やはり凄腕の気配がある。
『最速とかすげー』
『しかも二人だぞ』
「これならボス層も問題ないでしょうね。ティタノマキアは石巨人が十体ほど出てくるだけの、複数討伐ボスですから……」
言いながら降りて行った先には、だだっ広いコロシアムのようなフロアがあった。その中央に、巨人の群れが――いない。ただ、黒い霧が渦巻いているだけだ。む。
「……あれ? なんもいないじゃん」
「待て、あんまる。あの霧はモンスターの残穢だ。おそらく、すでに殲滅されたんだ、ティタノマキアは」
「は? そんなのおかしいって、今日はアタシらの認定試験なんだから、他の人がいるわけ――」
あんまるの言葉を遮るように、なにかが轟音を立てて、天井から降ってきた。
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