第20話 ハル
「ルシャをありがとう。小さい頃のルシャを見捨てないでくれて」
「当たり前のことをしただけだから。それに何もできなかったし」
「それでもありがとう。彼女に会えて救われたんだ」
ルシャに言って、川瀬を見張り台に呼んでもらった。リーメにはエルフの説明を頼んで、アリアだけ残ってもらった。
「アリアと恋人になれたのもルシャのおかげだし、心の傷を埋めるのにも彼女にはずいぶん無理させてしまった」
「篠原はなんか昔とずいぶん変わったな」
「陰キャだったしな」
「そうでもないよ。麻枝さんと一緒だったからそういうイメージはないな」
付き合っていたとは言わなかった。知らないわけではなく、アリアに配慮したんだろう。
「麻枝ってのは前の世界にいたとき、付き合ってた幼馴染。振られたけどな」
「篠原……」
「アリアには言っておきたかったんだ。振られて傷ついてた。たぶん胸の穴はその傷だと思う」
「ちょっとつらい」
「自己満足でしかない。ごめんよ」
「謝らなくていい。ぎゅってしてて」
アリアの手を強く握っていた。
「篠原。麻枝さんはその、ごめん。あと、おれも好きな人が居て、彼女は……断った」
「謝るなよ。お前、モテるもんな。誰とも付き合ってなかったし」
「おれはその――実をいうと――」
「言いづらい相手なの? 先生とか?」
「ちがちがっ、そうじゃなくて妹のアオが好きなんだ」
「なっ!?」
「お互い思いあってたって、あの白い部屋で知ったんだ」
白い部屋――地母神の居た、白い空間か。
「だからこの世界も悪くないかなって二人で」
「なるほど、そんな事情が」
「それともうひとつ。麻枝さんもここにいる」
「「ぇ……」」
◇◇◇◇◇
川瀬の話では麻枝もここに居るという。ただ、彼女は召喚ではなく転生を望んだらしい。あと、恥ずかしい話だが俺の寝言は三人とも聞いていたそうだ。
麻枝は――元カレが変なこと言ってるけどごめんね――とか言ってごまかしていたようだけど、焦りが感じられたと妹の蒼さんが言っていたそうだ。
そして川瀬たちは悩んでて遅れたが、麻枝は先に行った。そして俺はさらに遅れた。俺と川瀬で六年の差があるから、麻枝とはさらに差があると考えられる。
「麻枝のことはとりあえずいい。ひとつ聞きたい。川瀬さん――蒼さんがエルフの子供に会ったのは知ってるか?」
「知ってる。アオはその子にヒメって名前を付けて、木を切るなと必死に訴えていた。騎士団長が、放置すると魔王になると言って切り倒したんだ」
「やっぱりか。その子は大人のエルフたちが保護してる」
「本当か!? アオは取り乱して塞ぎこんでしまって、今も城に篭ってる。生きてるって知ったら喜ぶよ」
「川瀬さん――蒼さんのことは大賢者様からも聞いた」
「あの人いい人だよなあ。あとそう、名前はこっち風にハルとアオでいいよ。アリアさんも篠原の恋人なんだから、もう勇者様はやめてほしいな」
「じゃあ俺はユーキで。学校じゃ女の子、みんな苗字にさん付けで呼んでたから緊張するわ」
「えっ、あたしは?」
「最初、めちゃくちゃ緊張してただろ……」
「そうだっけ。あ、そうだね。そうだそうだ」
アリアは笑う。なお、川瀬のことはこのあとハルさん呼びになった。
「アリアさんはなんか高校生じゃないのに高校生みたいな雰囲気だよね」
「俺が日本でいたころの恋人みたいな関係で居てくれてるんだ。こっちは15で成人したらすぐ結婚して子供産むんだって」
「ああ、それでか。こっちの人って10才過ぎたらあっという間に背が伸びて12とかもう大人だもんな」
なるほどそういうことか。でかいと思ったんだ。孤児院の三人とも。
「あれ? そういやハルはあまり年変わんない?」
「こっちの人もそうだけど、召喚者もあまり年取らなくなるらしいよ。二百歳とか生きる人も居るらしいし」
「大賢者様みたいに?」
「あの人はなんかまた別な気がする。だって20代後半にしか見えないよね」
お師匠様はよくわからんな。
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