いやん、ジャックさんったら不潔っ!
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午後の授業が終わって放課後。
「なー、なー、この話知ってっか? こないだのことらしいんだけどさ。貴族の男子生徒が、馬車が来なくて困ってる平民のおじょーさんを校門前に置いてけぼりにして一人で馬車に乗ってさっさと帰っちまったって話。あれって、貴族的にどう思うよ?」
かっぽかっぽと馬に揺られながら、テッドが聞いて来た。
なにやら、どこぞで似た話を聞いたような気がするけど・・・なんだっけ?
「ふむ。余程切羽詰まっている状況下や身内の不幸などでもない限りは、その女子生徒の為にも、置いて行くのが妥当な対応ではないか? なあ、ハウウェル」
「え? マジで? その男子酷ぇって怒ってる平民連中結構いるみたいだぞ? ちなみ、冷静な奴らは、その女子、寮に帰ればいいんじゃね? 派らしいけど」
「ふぅん・・・」
「それで、なんで困ってンの放置して置いてきぼりにすんのが、その女子の為になんの?」
「うん? それはあれだな。要らぬ不貞疑惑を避ける為だろう」
「ふてー疑惑?」
きょとんと首を傾げるテッド。
「ま、簡単に言うと、例えば……どこぞのジャックさんには、結婚を約束した女性がいます。OK?」
「おう。未来の奥さん持ちのジャックなー」
「で、その約束をした女性がいるのに、ジャックさんは別の女性と二人切りで個室に籠って、数時間外に出て来ませんでした。さて、それを見ていた人達は、その二人のことをどういう目で見ますか?」
「いやん、ジャックさんったら不潔っ! ヒドいわっ、この浮気者っ!? 別れてやるんだからっ!!」
黄色い裏声が、架空のジャックさんを詰る。なかなかに芸が細かい。
「ま、そういうことだね。婚約者がいるのに、馬車という密室の中で男女が二人きりで数時間も一緒に過ごしていたら、世間的にどう思われるか? ってことでしょ」
「ほう、成る程」
「それに、未婚なのに男と密室で二人切りになっていた女性の評判も悪くなるし」
「あー、確かになぁ。そりゃ、男よりも女の子の方がダメージでかいわ。変な噂立ったら、お嫁行くのすっげー大変になるもんなぁ」
うんうんと納得した様子で頷くテッド。
「結論から言うと、その置いて行かれたという女子生徒は、男子生徒ではなくて女子生徒を頼るべきだった、というワケだな」
レザンも頷く。
「そうなるんじゃない?」
「結果的に、女子の為には置いてきぼりにする方がいいのかー」
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それから暫くは、『校門前置いてけぼり事件の男子生徒と女子生徒は、どういう行動を取るべきだったのか?』という議論があちこちで交わされているのを目撃した。
結論は、幾パターンかあるようだ。
『馬車に乗せてあげるべきだった』という人の多くは――――「女子生徒が可哀想」「困っている人を無視するなんて、人として最低」「男の風上にも置けない」……などの意見があるらしい。
『馬車に乗せるべきではない』という人の多くは――――「女子生徒の行動が淑女として有り得ない」「困っているなら、同性を頼るべき」「学園に相談すればよかったのでは?」「もしも男子生徒に下心があったらどうする?」「むしろ、未婚女性なら置いてけぼりにした件の男子生徒に感謝すべき」「もしかしたら、女子生徒の方が下心があったのでは?」……などの意見があるらしい。
「女子生徒の方が下心があったのでは?」という穿った女性からの意見が出てからは、『乗せなくてよかった』という意見の方が優勢になって来ているようだ。
更には、「助けられたことを盾に、男子生徒から変な要求とかされたら気持ち悪いじゃない」という意見が出てからは、『女子生徒を助けるべきだった』と強硬に主張する男子生徒を見なくなった気がする。
まぁ、どうでもいいんだけどね。
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読んでくださり、ありがとうございました。




