マジ、お綺麗な顔に似合わないのな。
♘⚔♞⚔♘⚔♞⚔♘⚔♞⚔♘
そして、週末の放課後には――――
「よし、やるかハウウェル!」
異様に嬉しそうな顔をしたレザンに捕まった。
「・・・ぁ~、はいはい」
まぁ、あれだ。約束があった。果たしたくない、約束が・・・
「……安請け合いするんじゃなかった……」
と、激しい後悔が襲って来る。
「うん? なにか言ったか?」
「手加減を求めるっ!?」
「フッ、遠慮することはない。お互い本気を出そうじゃないか!」
「いや、全然遠慮とかじゃなくてマジで言ってるんだけど」
「構えろ、ハウウェル!」
愚図愚図言うわたしへ、木剣を向けるレザン。仕方なく、わたしも木剣を構える。
始まったのは、嵐のような一方的な攻撃。
「っ!?」
ガツン! と、一撃一撃が重い打ち込みを、木剣の角度を変えてどうにか往なす。
「どうしたハウウェル! 暫く剣を振らないうちに腕が鈍ったんじゃないかっ!?」
「ああっ、そう、かもねっ!?」
つか、元からこんなもんだっての!
そもそもが身長、体重、リーチ、筋力、スタミナ、剣の腕。なに一つとして、わたしにはレザンに勝てるものが無い。
重い一撃を凌ぐ度、びりびりと腕が痺れる。
なんで弱いわたしに、コイツが執着するのかマジでワケわからん。
鍔迫り合いにならないよう、上から押さえ込まれないよう、引き腰気味にレザンの打ち込みを躱したり、往なしたり、肘や蹴り、拳を入れて離れたりと、どうにか微々たる反撃をする。
ちなみにレザンは、剣以外は使わない。相変わらず、正々堂々とした剣で・・・
わたしの足蹴りや素手での攻撃が汚いだとか、そんなことはどうでもいい!!
こちとら、奴の攻撃を凌ぐのに必死だ。若干命の危機を感じるような気もするし、怪我とかも怖いというのに、正々堂々だなんてそんな綺麗事言ってられるかっ!?
「フハハハハハっ!? 楽しいな、ハウウェルっ!!」
「はあっ!? 全っ然楽しくねぇんだよっ!?」
何度も言うようだが、わたしは必死だ。
こんな、弱い奴を相手に楽しいと言って笑う奴の神経がわからない。
「フッ、そろそろだな。行くぞっ!!」
ニヤリと、獰猛に笑うレザン。瞬間――――
「っ!?」
背筋がぞわりと粟立つと同時に、
「破ぁっ!」
裂帛の気合と強烈な打ち込み。
「ぅ、ぐっ!?」
その直撃を食らう前に、反射的に木剣の腹に木剣の刃を当て、辛うじて衝撃を往なした。木剣は飛ばされずに済んだが、手に、腕に、肩に、骨にまで響く重たい一撃だった。
「やはりなっ!? こうでなくては面白くないっ!!」
爛々と輝く瞳。楽しげな声。
「はあっ!? なにが面白いだよこの脳筋野郎がっ!? 手加減しろっつってンだろっ!! 今の手ぇとか肩までめっちゃ痛かったじゃねぇかよっ!?」
人が、痛い思いをしているというのにっ・・・
「俺の本気を止めるとはやるじゃないかハウウェル!」
「手前ぇ、殺気飛ばすなっ!?!? 本気出すとかマジやめろって言ってんだろっ!? 手加減を要求するっつってンだろうがっ!!」
「手加減など要らんだろうっ、さあもっと楽しもうではないかっ!!」
そんなやり取りをした後からの記憶が曖昧で――――
――――気が付けばわたしは、地面にぶっ倒れていた。全身が怠い。息が切れている。
「大丈夫か? 水飲めるか? ハウウェル」
心配そうに上から覗き込むテッド。
「み、ず……」
怠い身体を起こし、差し出された水を飲む。
「……はぁ、はぁっ……ありが、とう……」
水を飲んで礼を言い、
「で、どうだった? わたしがボッコボコにされてるところを見学しているのは?」
これまでを見学していたテッドに尋ねる。
「いや、なんつーかその・・・えっぐいわ! ハウウェル十分強いとか思ってたけど、レザンがなんか動きえげつない。あそこまでハウウェルボコる必要あんの?」
うんうんと頷く。
レザンの猛攻を、どうにかわたしが防ぎ続けるという、かなり一方的な打ち合いだったからな。
レザンは、もっと手ぇ抜いてもいいと思う!
あとついでに、わたしに絡むのもいい加減やめればいいと思う。
「うん? 楽しかったぞ! ただ、ハウウェルはスタミナがないのが残念だな」
爽やかに汗を光らせ、いい笑顔を見せる脳筋。わたしは汗だくで、立てないくらいにへばっているというのに。相変わらずの体力おばけめ。
「いや、楽しい楽しくないじゃなくてさ! つか、ハウウェルもハウウェルで、ブチ切れた後は目の色変えてレザンに向かってくし。お前らやべぇな!」
「へ?」
興奮したようなテッドが、なにやらよくわからないことを言った気がする。
「うむ。ハウウェルは、追い詰めてキレさせてからが本番だからな。然して強くはないのに、本気を出した俺相手に急所を取らせず、あそこまで粘り強い奴もなかなかいない。そして、剣を手放さない執念は凄いぞ!」
「は?」
諦めないのも、剣を手放さないのも、生き延びることを目標とするなら、当然のことじゃないか。
相手に勝てなくても、絶対に命を粗末にせず、格好悪くても時間稼ぎをする。仲間が来るまで。それは基本だと教わったことなのに。
「だよなー。まさか、ハウウェルの戦い方が、あそこまで泥臭いとは思わなかったぜ。マジ、お綺麗な顔に似合わないのな」
「??」
なにやら、テッドとレザンがおかしなことを言っている。・・・わたしが自分からレザンに向かって行く筈はないのに。なに言ってんだろ? おかしいな?
まぁ、わたしの戦い方が泥臭いことだけは認めるけど・・・顔は関係ないと思う。でも、それを口論する元気も気力も無い。
それから、怠い身体を起こしてストレッチ。
面倒だしもう動きたくないけど、このストレッチをするのとしないのとでは、翌日以降の筋肉痛の痛み度合が変わって来る。
「はぁ……」
水分を摂って、汗を流して、食事。
食欲は無くても、ある程度はお腹に入れて・・・それから、打ち身とかも冷やさなきゃ。
明日明後日は、身体がギシギシだろうなぁ・・・
✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰
読んでくださり、ありがとうございました。
ネイサンは剣士としての実力的にはあんまり強い方じゃないのに、簡単には負けないので、レザンはそこをめっちゃ気に入ってます。
自分から攻撃するのは得意じゃないけど、防戦だとなかなか崩せないディフェンダータイプですね。




