召喚士されし者 83・ユーキのいない三日間その5
あけまして、おめでとうございます
年末年始、特に面白い事もなく、ただ特番を眺める毎日、実に有意義・・・な訳ないだろうがぁよぅ(;・∀・)! ちくしょー
暇なら書けよって?
ですよね。はい。反省ですわ。
まぁ、悩んだんですわ。
話をね、こう、何日もね。無駄にね(泣)
今回は糞長いです。いつもの倍糞長いです。
おれもどうしてこうなったのか、分かりません。
あれですかね、構成力が雀の涙程しかないからですかね?はい、はい、分かります。
そんなこんなで、ユーキさんまたおやすみです。
いい加減出したいので、次で過去編にけりつけてやります。まだ続くのかって?ごめんね。続くの。構成力がないばっかりにね。
兎に角お待たせしました。
今回、ユミスさんとある人のお話です。
「━━━━監視所から?」
メイドからの知らせで赤の狼煙があがっている事を知ったあたしの手は、ピタリと止まった。
赤い狼煙は決まって非常事態の際上げられるものであり、意味合いは街への警告、及びギルド連合へ向けた緊急依頼要請だ。
土地柄、魔物の集団暴走が起こりやすいこの土地では、度重なる事案の早急な解決の為、街の周囲一キロ地点に幾つか監視所を設置している。この監視所は、目視による魔物の観測と、外界と街を繋ぐ情報の伝送地点を目的に設置されているのだが、余程の事が無い限りは御飾りのような施設なのである。
非常事態においては、狼煙を上げた後に伝達員が詳細を伝える為、早馬で駈けてくる事になっている。
「ギルド連合からの通達はまだ?」
「はい、お嬢様。私も先程気づいた所ですので、まだ連絡もとっておりませんでした。それで、あの、今ベル様が様子を見てくるとギルドに駈けていってしまいまして、その少々お待ちいただければ、と。」
「はぁ?あの子が?・・・・で、その狼煙はいつから?」
「少なくとも10分程前にはあがっておりました。」
「伝令員は着いてる頃、か。分かったわ。何か分かったら教えて。」
「はい。畏まりました。」
メイドは丁寧に一礼し、部屋を出ていった。
人の目が無くなり、あたしの気持ちは一気に緩む。
そして大きな溜息が知らず知らずに溢れ、机に突っ伏さずにはいられなくなった。
「・・・・はぁ。まったく。この忙しい時に。」
良くない事が続く。そしてその状況は一切好転しないと言うのに、問題ばかりが湯水の如く沸き上がり、正直うんざりだ。
記憶に新しい昨日の会議も大概酷い物だった。
あたしが口にした「レイベウロス」と言う言葉を切っ掛けに、会議は荒れに荒れた。レイベウロスの復活を信じている者は皆無に等しい状況ではあったが、伝説の存在であるレイベウロスの名と襲撃事件の被害の大きさは、街の権力者達から抵抗という名の牙をへし折るには十分過ぎたらしい。
お蔭で会議は責任の押し付け合いに変わり・・・いや、最初から押し付け合いはしていたのだけどね。うん。
まぁ、なんやかんやと、会議は一つの結論も出すこと無く延期となってしまった。
街の復興、襲撃者の対処、武祭の開催、話す事は幾らでもあるというのになんだと言うのだろう。
「自称レイベウロスは、多分まだこの街にいるだろうし・・・。あれだけ仕度金ぶっこんだ武祭は開催出来そうにないし。━━━なんでこうなるかな、あたしはただ武祭を開催するだけで良かったのに。無事武祭を取り仕切る事で当主としての実績を上げて、門下生達に示しをつける筈だったのに。・・・・これキリシマ拳竜術始まって以来のピンチじゃない?無理だから、こんなの乗り切れないわ。御先祖様ぁ、そんなにあたしが当主になってはいけないんですか?何が気に入らないんですかぁ。━━はぁ。アホ兄ぃー、今だけ帰ってこーい。」
あたしの泣き言が虚しく部屋に響いた。
これで何が変わる訳でも無いのだが、気持ち的には少しだけスッキリした、気がする。
元々あたしは当主になる気も資格も無かったのだ。
特別強くもなく、当主としての器も持ち合わせていないのだから当然だ。母方の姓を名乗らされている所から、周囲からも期待はされていないのは分かるだろう。
本来であれば、この問題で頭を抱えているのは正当後継者であり、あたしの実兄である、アホ兄ぃことクロム・ドラグナスの筈なのだ。
簡単に言ってしまえば、兄は天才だった。
武力は勿論の事、頭もかなり切れる。その上、人を惹き付けるカリスマ性も持ち合わせていた。当主の証とも言えるドラグナス姓を、10にも満たない内から名乗る事を許されたのは伊達では無い。
家族としての贔屓目を持ってしても、かなり非常識で理不尽な存在だと思う。
そんな非常識で理不尽な才能の持ち主であるあのアホ兄であれば、この状況にもなんらか手を打ち終えているのだろう。
そして報告を待つ間に、趣味である下手くそな笛を吹き鳴らし、悪魔でも呼び出しているかのような雑音を近所に垂れ流している頃だったのだろう。
それも全て、あのアホ兄ぃが「俺、音楽家になる!」とかふざけた事を言って出奔さえしなければ━━。
思い出すだけで頭の血管が切れそうになる。
あの去り際のアホ面は絶対に忘れない。今度あったら、股下のアホ兄を山の肥やしにしてやる。
「・・・はぁ。でもまぁ、言っても仕方ないか。いない者はいないし。今はこの状況をどうすればいいか、か。」
いっそアホ兄のように逃げてしまえれば、どんなに楽だろうか。
そんな考えが何度も過るが、それを行動に移そうとは思わなかった。いや、思えなかった。
全てを捨て逃げ出すには、この街に好きな物が多すぎたからだ。
父上やラーゴ、ベン爺や使用人達、キリシマ拳竜術の皆。
母上と過ごした屋敷も、代わり映えしない灰色の街角も、喧嘩っぱやい街の住人も、熱気に包まれた闘技場も、大切で大好きで、たった一つの自分の故郷なのだ。
アホ兄のように簡単に捨てられるものじゃない。
「━━━━はぁ。兎に角、今やることはやらないと。」
手元にあるベルを鳴らし、専属メイドであるマーガレットを呼ぶ。
扉の近くに控えていたのだろうマーガレットは直ぐに部屋に来た。
「ユミスお嬢様、お呼びですか。」
「うん。あの件は上手くいってる?」
「はい。あれからまた何人か、ユミスお嬢様の呼び掛けに応じる様子がありそうです。まだ、はっきりとした返事は頂けておりませんし、此方は無償と言う訳にはいきませんでしたが。」
「ん、いいよ。元からタダでやって貰うつもりはなかったし。」
「それと、残光様の一門と豚王様のお連れ様が既に先行捜索隊として街に出ている模様です。今だ有力な情報は出ておりません。」
「そっか。」
昨日の会議を終えた後、あたしは街の権力者に期待するのを止め、個人的に動き始めた。
本来ならキリシマ拳竜術家の一当主として事に当りたかったのだが、生憎とまだ正式に襲名されていない。当主代理でしかない今のあたしでは、事実上決定権を持つ古参の師範代達を動かす事が出来なかったのだ。
苦肉の策とは言え、他人をこの件に巻き込むのは気が引けた。
だが、これ以上対応が遅れれば取り返しのつかない事になる気がしていたあたしは、知り合いを通じて街の武芸者達にレイベウロス捜索の協力を要請する事にした。
すぐに呼び掛けに応えてくれたのは、闘技場の常連であった残光のアルカバーンや豚王ブーギーと言った名のある実力者達だった。事情を聞いた彼等はレイベウロス捜索に全面協力を約束してくれた。報酬金も用意していたのだが、アルカバーンとブーギーには断られてしまった。まぁこの二人にも、後で金銭以外のなにかで埋め合わせが出来たらと思う。
「・・・さて。後は、あの子が戻ってからか。」
ふと窓の外に広がる街並みに視線を移した。
目に映る街並みはいつもと同じように見えた。
平穏だった、大好きだった、あの頃と同じように。
◇━◇
エルキスタの戦士ギルドは相変わらず閑古鳥が鳴いていた。
この祭りの時期は割とこんな感じなので、いつもと同じと言えば同じなのだが、今日は何処か忙しない雰囲気がそこにあった。
まぁ、当然と言えば当然なのだ。何せ、非常事態を告げる赤の狼煙があがっているのだから。こうしてワタシが訪ねて来ているのも、その不足の事態が起きているからこそなのだから。
ワタシの名前はベルティーノ・グランテ。
上から見ても、下から見ても、左右どっから眺めて見ても、今をときめく新進気鋭の高ランクチーム「天狼の翼」の看板娘にして、天才、凄腕、美人魔法使いだ。
普段はチームで活動しているのだが、今は個人的な友人であるユミスに頼まれ、怪物退治の手伝いをしている。
まぁ、手伝いと言っても、まだ助言くらいしかしてないのだけどね。死霊術に関する事を、障りの部分だけちょこっと教えただけだ。
ユミスがワタシを頼ってくれた事は正直嬉しかった。普段からなんでも抱え込む奴で、本当に苦しい時も嫌な顔一つしないで頑張ろうとするから、いつも心配していた。
なりたくもない当主を引き受けた時だって、ユミスはお気楽そうに笑ってたけど、それは外面だけ。本当は悩んで苦しんでたのもワタシは知っている。
最近は次期当主のプレッシャーからか、高圧的な態度が目立っていたから、特に心配していた。柄にもなく、人に威張り散らす姿は見ていられなかった。
そんな、意地っ張りで頑張り屋でアホ可愛い友人が、初めて言ってくれたのだ、「助けて欲しい」と。
頼られた事で嬉しくなったワタシは、よく話も聞かずに「大船に乗ったつもりで任せな!」なんて事をほざいてしまった。それが運のつきだった。ユミスの抱えてた案件は、想像以上にヤバかった。
どういう訳か、伝説の武神レイベウロスが街を騒がせている襲撃者だと言うし、素晴らしき我が友ユミスはこの怪物を討伐するつもりだと言うし、もうなんだって言うんだ。
そんな訳で、不本意、いや、不本意でもないのだが、うん。
まぁ、ユミスの無茶を叶える為に、レイベウロス退治の策を考えていたのだがさっぱり考えつかなかった。あるく災害みたいな存在だ。簡単にはいかない。
あんまり思い付かないもんで、こうして現実逃避と気分転換を兼ねて、監視所からあがった狼煙の正体を確認しにギルドまで来ていたのだ。
着いたギルド内で知り合いがいないか見渡していると、依頼ボードを整理していた顔見知りのギルド職員、セラの姿が目に入った。
「セラー、やほ。」
「ベル?やっほー。どうしたのこんな時間に、今日依頼受けてたっけ?」
挨拶を返してくれたセラは首を傾げる。
「んーん。違う。依頼は受けてないよ。ウチのチームは祭りの間、休業中だからね。」
「ふぅん。まぁ、そうだよねー。実際、今働いてるのってよっぽど切羽詰まった連中か、酔狂な暇人くらいなもんだもんね。」
「ねぇー・・・って、そんな話をしにきた分けじゃないから!あのさ、赤の狼煙が上がってるは知ってるでしょ?詳しい事教えてよ。」
「ん?━━あぁ、その件ね。別に構わないけど、そんな大事にならなさそうよ?」
「そうなの?」
「うん。もう━━━」
バタンと、セラの声を遮るようにギルドの入り口がけたたましい音と共に開かれた。
セラの肩がびくんと跳ね上がった。
多分ワタシもだ。
恐る恐る入り口を見る。
そこには視線だけで人を殺せそうな額当て男と、岩みたいな顔をした熊のような男がいた。どっちもただ者ではない、危険な気配を漂わせている。
「あ"ぁ"ん?なんだこりやぁ?人がいねぇじゃねぇか!!」
「もう、出払ったのかもな。さっきの狼煙は緊急事態だけに上げられるもんだからな。」
剣呑な雰囲気を出しながら、ギロギロと二人の男がギルドを見渡す。
何あれ、怖い。
「何あれ、怖い。」
そうだよね。
怖いよね。うん。
目つきの悪い方が、ワタシ達に気がついた。
━━あ、やばい。熊の方も気がついた。
ズンズンと、男達が迫ってきた。
よく分からないけど、これ殺される奴だ。因縁つけられて、脅かされて、連れ去られて、売られて、最終的に殺される奴だ。
ワタシは護身用に隠しもっていた短杖を掴む。
最悪、ギルド内で魔法をぶちかましてしまう事になるだろうが、この際多少の被害には目を瞑って貰おう。と言うか、か弱い乙女のピンチなのだ。本当、切に、弁償とか勘弁して貰いたい。
目と鼻の先まで男が迫った所で、ワタシは短杖を引き抜いた。
そして━━
「吹きとぉっ」
「ちょっといいか?」
「べっ、へ、へぇ!?」
男は至って普通に、ワタシに声を掛けてきた。
敵対的な威圧感なんて欠片もなく、なんなら丁寧さに優しさも掛け合わせたような語り口調だった。
そんな相手に魔法をぶち込む分けにはいかないので、ワタシは魔法を放つのをなんとか踏みとどまった。
「っ~~~~~!あっぶな!ちょ、えっ、な、何っ!?」
ワタシの言葉に、額当て男が眉間に皺を寄せる。
「あ?━━あぁ。驚かせたのか、悪い。少し聴きたい事があっただけなんだ。」
とか言ってるんですけど?
セラ?
セラの方に視線を向けると、凄い勢いで首を横に振っていた。
いやいや、あんたが話しなよ。
この人達ギルドに来たんだから、十中八九、職員のあんたに用がある筈でしょ。
顔を青くしたセラは、ワタシの背中をバシバシ叩き、「話せ」と促す。
「━━━あぁ。ワタシが答えられる事なら、その、良いけど。変な事は聞かないでよ。ワタシが美人だからって。」
プライベートな事は答えられない。
ワタシは出会ったばかりの人間に心を開く程、安い女では無いのだ。
「そ、そうか。あんたの事は別に良いんだが。」
「はぁ!?こんな美人を前に別に良いって!?信じられないんだけど!!なんかあるでしょ!歳は?何処に住んでるの?彼氏はいるの?俺とかどう?とか!まぁ、全部答えませんけどねっ!!」
「お、お、おう。そうか・・・・。」
はっ、しまった!いつものノリでこんな危険そうな男に突っ掛かってしまった!
「あ、あの。忘れて下さい。・・・質問どうぞ。」
「・・・・あぁ。」
「・・・何やってんだよ、フリーク。」
額当て男の後ろにいた熊男が、可哀想な者を見る目でフリークと呼ばれた額当て男に話し掛ける。
「悪いな。このフリークって男は、女相手だと本当ポンコツでな。で、だ。知ってたら教えて欲しいんだがよ。赤の狼煙が上がってるらしいんだが、なんか知らねぇか?」
「え?」
どうやらこの男達、あの狼煙について聞きに来たようだ。
目的はワタシと同じ、なのだろうか?いや、良くない目的がある可能性もあるかも知れないが。
「悪いけど知らないわ。ワタシもそれを聞きにきたの。ね、セラ?」
急に話を振られたセラは少し恨めしげな視線をワタシに向けた後、首を縦に振った。
「は、はい。」
「悪いようにはしねぇ。話を聞かせてくれ。事と次第によっちゃ、黙って見てる分けにはいかねぇからな。」
「あ、あの、失礼ですが、メンバーの方ですか?」
「あ?違ぇよ。━━あ、身元とか分からねぇと駄目なのか?身元の証明書とか持ってねぇんだよな。俺様はガンレイ・ギルドレイってキリシマ拳岩術の次期当主やらして貰ってるもんだ。証明書代わりになるか知らねぇが、キリシマ拳岩術の印章なら持ってる。これでどうにかならねぇか?」
そう言ってガンレイと名乗った男が取り出したのは、持ち手部分に細やか装飾が刻まれた銀色に輝く印章だった。
「━━っ!?」
セラはその印章に息を飲み込み、ワタシは印章に目を奪われた。
高価そうに見えたからとか、そんな俗物的な理由では無い。
セラは兎も角、ワタシが目を奪われた理由はそれがワタシの知っている物に良く似ていたからだ。
「・・・キリシマ拳術、当主の証!?」
ワタシの言葉にガンレイが岩のような顔を歪めた。
怖っ。何、笑ってるの?
「ほぉ、知ってんのか。」
「・・・・まぁね。ワタシの友達にキリシマ拳竜術がいてね。」
「はぁ、そうかい。なら、身元の証明は出来たって事でいいな?話聞かせてくれ。」
ギロッと、セラを見るガンレイ。
小さい悲鳴をあげたセラは首をブンブンと縦に振りまくる。
「は、はいぃ!ギルドレイ様!御無礼、大変申し訳御座いませんでした!キリシマ拳術の方だとは露知らず!本当に申し訳御座いませんでした!」
平身低頭。ガンレイは目を丸くしているが、この街では特別珍しい光景でもない。
この街の人間はキリシマ拳術に心酔している者が多いから、その関係者となれば大体の人はこうなる。
ユミスくらいなのだ。
割と雑に扱われるキリシマ拳竜術の人間は。
「・・・構わねぇよ。」
「はい、ありがとう御座います!赤の狼煙についてお話いたします!エルキスタから北に10キロ付近、エルキスタに向かって進む魔物の群れを確認。現場を目撃した監視員の情報から、集団暴走である事を断定。ギルドマスター自ら討伐隊を編成。チーム[暁の矢][泥の檻]が依頼を引き受け対処に向かいました。最悪の事態を想定し、手の空いてるメンバーは街の警備に駆り出されました。情報通りであれば、向かわせたチームの実力は過剰戦力であり、此方に被害が及ぶ可能性は極めて低いと思います。なので、ギルドレイ様がご心配になられる事は何一つありません。」
セラは一気に捲し立てるように言い切った。
緊張していたのか、所々声が裏返ってはいたが、話は分かった。
だけど━━
「ねぇ、セラ。あんたの話にバートンさんが出てこないんだけど、あの人はなんて言ってんの?」
非常事態だと言うのに、元ランク8のアルベルト・バートンの名前が出て来ない。あの人であれば、これ以上無いほど的確な指示を出してくれている筈だ。ギルドマスターを信頼していない訳ではないが、あの人が言うのとは信頼度が違う。
実際、バートンの言に救われた事が何度もあったのでこればかりは仕方ない。
何より、アルベルト・バートンのファンであるセラから、彼を褒める言葉が欠片も出て来ない事が嫌に気に掛かる。
「さぁ、なんとも。と言うか、いないみたいなのよ。」
「いない?」
「うん。それで、代わりにギルドマスターがそう判断したんだけど。でもギルドマスターも実績あるし大丈夫だよ。」
セラは分かっているようで、まるで分かっていない。
実践を知らないセラにそれを分かってくれとは言わないが、ギルドマスターの言だけではあまりにも弱すぎるのだ。
ギルドマスターとアルベルト・バートンの経験の差は絶対だ。
ランク8と言う人外の領域で生き抜いた人間と、ランク7で怪我を理由に引退したギルドマスターとでは、文字通り格が違う。積んだ経験も、蓄えた知識もだ。
このエルキスタの街でアルベルト・バートンの言葉を指針に動いている者は少なくない。知っているメンバーだけでも百近くの人間がバートンの支持者だ。
それほどの人間が信頼を寄せている理由は決して伊達では無いのだ。
「どうした?そのバートンとかってのが言わねぇと駄目なのか?」
そう言ってガンレイがワタシを睨む。
「駄目って事無いけど。絶対の太鼓判は押せない状況って所かな?」
「ほぉ、そうか。そんなに信頼されてる奴なのか。ソイツは。」
「まぁね。ワタシも昔色々教えて貰ったし。あの人が言ったんだったら間違いないわ・・・」
「「「━━━━ん?」」」
「ふぇ?」
ガンレイ、フリーク、そしてワタシの声が重なった。
ワタシ達3人の様子にセラが情けない声をあげる。
「あ"ぁ"?なんだ、やけに騒がしいなぁ。」
「だな。俺ちょっと見てくるわ。」
「む、それならワタシも。」
◇━◇
フリークを伴いギルドの外に出ると、直ぐに騒ぎの原因が分かった。
大口を開けて上を見上げる住人達。
吊られて見上げると、そこにはあってはならない物があった。
「なっ、そんな、飛竜っ!?なんで街中に!?」
「おいおい。まじか。」
深緑の鱗で身を包んだ二翼の魔物、飛竜ワズガルド。
アスラ東部における空の絶対王者がそこにいた。
鋭い鉤爪で肉を切り裂き、強力な顎で骨を噛み砕く、竜の谷を根城にしている危険度ランクBの飛竜ワズガルド。戦士であればランク6以上の実力がなければ、討伐する事が出来ない正真正銘の化物だ。
そして、それは1匹では無かった。
幾つも大きな影が空を覆うように翼を広げいる。
たじろぐワタシを他所に、空を舞うワズガルドが飛竜特有の金切り声を上げ街の上空を大きく旋回していく。
耳に響く不快な音を聞きながら、ワタシの頭の中に最悪の光景が過る。
もし、今ギルドを騒がせている集団暴走が竜の谷を起点に起こってるとしたら。
北に生息している凶悪な魔物達が、飛竜に押し出されるように此方に向かってるとしたら。
それはもう━━━
「ユミスっ、に、早く、伝えないとっ!!」
━━街の存続すら危うい、最悪の状況が起きていると言う事なのだ。




