召喚士されし者 75・深き眠りの底で
くはぁっ!死ぬかと思った!
3000が一瞬でポンすると、なえる所か死ねますよね?え、軟弱だって? ・・・・。
(;・∀・)うん。すまぬ。
いつも読んでくれる皆、ありがと御座います。
ユーキさん、あの人に会います。
「・・・・・はて?」
見知らぬ場所だ。
何処とも知れない、見知らぬ場所。
「・・・・ああ?まぁ、なんだ、分からん。」
辺りを見渡すと何処かの一室らしく、正面に見えるドア以外には何もない部屋だ。というか一面青なのが凄く気になる。
壁も天井もドアも青の一色、頭がおかしくなりそうだ。
「まてよ、ここ、何処かで見たな。」
記憶を遡ってみれば、どうにも覚えがある。
前世の時か?いや、日本でもこんなキテレツな部屋を持ってる奴は奇人変人の類い、平凡な俺には縁がない筈だ。
ボーッとする頭で考えていると、不意にドアが開かれた。
「お久し振りですね。黒須様。」
ドアの先には銀色の髪を肩口で切り揃え、白いワンピースをきた青眼の可愛い女の子がいた。
「くろす?・・・ユーキなんだが?」
「また記憶が混濁していますね。はぁ、動かないで下さい。」
少女が俺の額に自分の額をあわせる。
額が暖かくなるのを感じると同時に、頭の中である光景が脳裏を駆け巡る。
あと、凄く痛い。
「あだだだだだだだ!!」
俺は痛みにもんどりうって、床を転げ回る。
アホか!馬鹿!痛い、超痛いんですけど!?
「何してんだよ!前回はこんなの無かったろがこらぁ!嫌がらせか!」
「思い出したようで何よりです。黒須様。」
「あぁ・・・・・。」
思い出した、俺は黒須トウジだった者で今は召喚士のユーキだ。
そして目の前のコイツは・・・・・。
「あぁ、・・・・うん。まぁ、な。」
「思い出したけれど覚えていない。と、そう言いたいのですね。このお仕事を任されてから転生者と会うことは無かったですが、記憶が消された訳でもないのに忘れますかね?普通。大概ですね貴方は。━━━シャリオです。」
あ、そうそう。
それだ、シャリオ。
「・・・あ、もしかしてまた死んだのか?まじか?」
「まだ何も言っていませんが・・・・。まぁ、死にそうではありますね。魔力を得たようですが、無限に湧いてくる訳ではないのですよ?使いすぎれば、そりゃ死にます。貴方が倒れたのは魔力欠乏症と言う、魔力ありきの世界ではよくある病状です。魔力版の過労みたいなものですよ。」
ああ。じゃぁまだ死んで無いのか。
うん、良かった。
「じゃぁ、死んで無いのに、なんでここに?」
「お尋ねしたいことがありまして、お呼びいたしました。丁度死にかけで、魂は簡単に呼び出す事が出来ましたので。」
「それ、本体から魂抜けてんじゃん。死んでるのと何が違うんだよ?」
「ご安心を。肉体は維持してありますし、それに元々備わっている魂もあります。壊れかけではありますが、ほんの少し生きながらえるには十分でしょう。」
あー、しれっと言っちゃったよこの子。
気にしないようにしてたのに。
備わっている魂って、元の人格の事だろ?うわぁ、俺肉体横取りした事になるじゃんかよ。
「?何にショックを受けているのか分かりませんが、行きましょう。話しは簡潔に済ませますので。」
シャリオに連れられ、テーブルのある部屋に着いた。
薦められて席につくと、何処から取り出したのか、シャリオがこじゃれたカップに紅茶をついで差し出してきた。
「私のブレンドです。どうぞ。」
飲んでみると、紅茶だった。
いや、俺わかんねーから、紅茶の味とか知らんし。
「うん、まぁまぁだな。」
俺の表情を見ていたシャリオが何を思ったのか、お菓子を取り出した。高そうなクッキーだ。
それと箱を取り出した。黄色い、レモンティーとか書いてある箱だ。
「・・・貴方には此方の方がよろしいようですね。」
そう言うとティーパックを取り出した。
おい、舐めるなよ。俺にだってな・・・。
あっ、お湯を注ぐなよ、紅茶交換しないで。ちょっとは調子に乗らせて。見かけだけでも知ったかさせて。
「それでは、なるたけ簡潔にお尋ねします。黒須様。」
「ああ。つか、それって拒否権ある?」
「無いです。見る気になれば、貴方の記憶を根こそぎ見れますし。あ、この方法だと、先程の痛みの比では無いですから、よく考えて発言下さい。」
「なんでも聞いて下さい。」
さっきの比じゃないとか、アホか。
「では。・・・そうですね、まずは貴方を転生した時、目の前には誰がいましたか?」
目の前?
「・・・・・・・うん?いなかった、と思うけど。」
「そうですか。では、転生された時、周りに変わった物はありませんでしたか?」
変わった物ねぇ?
「ないなぁ。周りは岩だらけで洞窟だった。まぁ、強いて言えば、なんか円みたいなのが足下にあったような━━━━うん分からん。」
そう言えば、あの洞窟ろくに見てないんだよなぁ。
今思えば、なんで調べなかったのか、まるで分からん。
あの街の生き残りで洞窟の話をしたのは誰一人いなかったし・・・。あれ?なんでだ?
「それは認識阻害の魔術かもしれません。お答え戴きありがとう御座います。」
「あ、うん。いやまて、なんで相槌うてんだよ。」
「少し、心の声を訊かせて戴きました。」
会話の必要性!
「無いですね。」
無いのかよ!
・・・・はぁ、まぁいいか。
「では、次が最後になります。」
「三つだけかよ。別に良いけどさ。」
「貴方は今の世界で、貴方を知る者に出会いましたか?」
━━━━━はぁ?
「どう言う意味だ?」
「出会ってはいないようですね。それでは━━」
「待てよ。戻す前に聞かせろよ。どう言う意味だ、今の質問は?」
シャリオは今、俺を知る者と言った。
それは、今の俺では無い。かつての俺、黒須トウジの事。
「そうですね。貴方もまったくの部外者と言う訳ではありませんし、他言しないと言うのであればお話しましょう。」
「転生とかの事も話して無いぞ?改めて約束しなくても話さねーよ。それに約束とかで縛られると、逆にうずうずする。」
「・・・・・はぁ、まぁ、いいでしょう。どうせ、私共の事は普通の者は信じないでしょうし。とは言っても、あまり言いふらさないで戴けると幸いですが。」
「おう。」
「・・・・・。」
おう。全然信じてない目だ。
「貴方が転生されたのは、事故と言って差し支えない物でした。」
「まて、待て、うぇいと!事故だと!?」
「はい。本来であれば記憶の初期化を行い、その上で魂の回廊におくられ、ランダムに世界に分配されたのち赤子に転生する筈だったのですが・・・・。貴方は誰かに魂を喚び出され、手続きを色々すっ飛ばして転生してしまいました。」
喚び出された、だと?
「召喚術、に近い物です。ですが、貴方が知っているそれとは、恐らく次元が違う代物です。何せ、我々の王の御前である転生の回廊に干渉し、魂をかっさらっていったのですから。我々に近い者、もしくは匹敵する者、或いは我々すら理解に及ばないまったく未知の現象。まぁ、最後の可能性は低いでしょう。我々の知らぬ事など、人間の思考くらいな物ですから。貴方を含む人は実に意味の分からない生き物です。」
いきなり貶されたんですけど?
なんか人類代表で貶されてんですけど?
「話を戻します。私は貴方の転生に思うことがあり調べる事にしました。貴方の死から、転生された間に、なにかがあると思いまして。それで、調べていく内に、二つ分かった事があります。」
「ほうほう。二つ?」
「一つは、生前貴方の身に起こった事故は意図してなされた事。もう一つは、貴方のいたかつての世界に干渉した者がいた事。その二つです。」
・・・・・・。
まてまて、待て。
俺の死が?なんだって?
「貴方は、殺されたのですよ。」
「誰が・・・。」
「貴方の世界に干渉した者でしょう。我々ではありません。」
殺された?
あの事故が、誰かによって起こされたってのか。
「何が目的だ?」
「分かりません。ですが、奇妙な事が一つ。これの事故の被害者、その魂の数がどうにも足らないのです。」
「足らない?」
「丁度二人分、足らないのです。代わりに、壊れかけた魂を一つ回収しましたが。」
壊れかけた魂。
それって。
「転生か?」
さっき、シャリオは俺のユーキの本体には、元々備わっている魂があると言った。そしてそれは壊れかけていると。
もしそれが、俺の転生が原因でそうなっているのであれば━━
「恐らくは、そうでしょう。生き物の中に宿る魂の数は原則一つです。二つが共存することはまずありません。とすれば、生きる残るのはより強い魂です。その為、弱い魂は自我を失い崩壊するでしょう。そうなれば壊れた魂は塵となり、いずれ魂の回廊におくられ、時間は掛かりますが再生されたのち、まっさらな魂として再び転生される事になるでしょう。」
「魂は治るのか?」
「治る、とは少し違いますね。・・・・リサイクル的な?」
「あぁ、わかった。何となく。」
ん?それなら、この回廊に監禁してる魂も・・・。
「それは出来ません。そうですね・・・・混ぜるな危険的な?」
あぁ、何となく分かった。
どんだけ執着すげーんだよ。
「で、その壊れた奴はどっちの魂なんだ?」
「それは勿論、転生された元になった方、現地人の方です。」
うむ。成る程。
「それでは、そろそろお送りします。あまり留めておくのもあれなので。」
「勝手に喚んどいて。」
「まぁ、そうですね。」
どうせ帰るなら、クッキーは貰っておくか。
お土産だな。
「魂だけの存在が物を持ち運べる訳無いでしょう。」
あ、そうだね道理だ。
だから、そんな目で見るなよ。
「そう言えば、とやかく言わないのな、俺の事。」
「はぁ・・・・?」
「シャリオは魂の管理人みたいなもんなんだろ?俺が今の世界にいるのはイレギュラーで、それを正したりはしないんだなってさ。」
「起きてしまった物は戻せません。そこにあるならば、それが貴方の居場所なのでしょう。それをどうこうしようとは思いません。」
「ふぅん。俺は他人の人生をぶっ壊したんだぞ?」
シャリオの目にあった光が消える。
これから放たれるソレは、感情から出る言葉ではない。
もっと事務的な、心のない、冷めた言葉だ。
「罪の意識を感じるかどうかは、どうぞご自由に。最初に言いましたが、人の罪など私には些細な事です。それで、善だの悪だの、天国だの地獄だのと言った下らない枠に嵌めようとも思いません。魂は巡る。それだけですから。」
それだけ言うと、シャリオの目に光が戻る。
「ですが、これは、そうですね。不思議と縁のあった貴方に、私個人からかける、ささやかなアドバイスです。気にするな、です。」
「勝手だなぁ。」
「月並みではありますが、勝者が敗者にかける言葉はありません。精々胸をはってその人生を享受して下さい。彼女には直、新たな旅立ちが待っているのですから。公私混合と言われかねませんが、魂の崩壊など本来あるべきでない終わりを迎えた彼女には、転生のさい少しサービスいたしましょう。それくらいは許されてしかるべきですし。」
さっきリサイクルっていった癖に。
なんか方法はあるんだな・・・。
「それを聞いて少し気が楽になった。あ、済まん、帰る前にこれだけ訊かせてくれ。これで本当に最後だ。」
「はい?なんでしょう。」
これだけは聞かないとな。
なんて言ったってなぁ。
「俺が死ぬ原因をつくった奴は、俺の世界にいるのか?それと、いなくなった魂はどういう奴だ?」
一応仇だもんな。
俺の。
「・・・・お答えしかねます。」
「いるんだな?」
「・・・・。」
それで十分だ。
「それでは、貴方の旅がよい物でありますように。」
俺の足下に魔方陣が現れる。
最初に見た物とはやはり違うようで、見たことがないタイプの物だった。
召喚はよくやってるけど、されるのはこれで二回目だから、なんか新鮮だな。うん。
それにしても、面倒な事を聞かされてしまった。
まぁ、望んで聞いたんだが。
復讐をしようとは思わないが、これ以上好き勝手にされるのは、なんかむかつくし、見つけたら絶対しばこう。ボッコボコにして簀巻きにして、火山口に放り込んでやろう。うん。
魔方陣の輝きが強くなり、光が俺の視界を覆う。
そして、いよいよ帰ろうとした時。
シャリオは言った。
「消えた魂のうち一つは、[黒須セイカ]と言います。」
は?
「どうぞ、よい旅を━━」
そこで俺の意識がまた途絶えた。
シャリオさん暇ってマジですか?
の
コーナー
シャリオ「」じー
テレビ「生きてるってなーんだろ?生きてるってなぁ~に?!生きてるってなーんだろ?生きてるってなぁ~に?!」がやがや ドウシタナノオニィチャーン!
シャリオ「生に意味などありません。しいて言うなら、至る者を探しているのでしょう。」マジメー
テレビ「おにぃちゃんもぅうんざりだよぉ、夕飯コロッケばっかりじゃないかぁ。
今日もコロッケ、明日もコロッケ、明後日もコロッケ。
何のために生きてるのかもぅわからなぃんだよぉ!」
シャリオ「コロッケ、いいじゃ無いですか。毎日コロッケでも、全然いけますよ、私は。今私は、生きてると言う訳ではないですけど、仮に命があれば、コロッケの為に生きれますよ、私は。」キリッ
テレビ「ダイジョブ、ダイジョブーテリーを信じてー、ダイジョブ、ダイジョブーテリに任せてー。」
シャリオ「ああぁ!駄目です!それは罠です!信じてはなりません!あぁ!おにぃちゃんの頭の上に!熱々の湯飲みがぁ!あぁ!」あわわー
テレビ「うぎゃぁぁぁぁ!テリー!何してんだよー!!あ、あっついじゃないかぁ、怒るぞぉ!」ゴメンオニィチャーン!
シャリオ「駄目です!許してはつけあがります!お仕置きせねばなりません!罪には罰を!報復です!テリーに湯飲みを!」
テレビ「生きてるってなーんだろ?生きてるってなぁに━━━」
シャリオ「あぁ!また、またやり逃げですか!テリー!これは許せません!駄目です!うむむ、やり返している話は無いのでしょうか・・・?」ゴソゴソ
数時間後━━━
シャリオ「罪などと、曖昧な物で、貴方の処遇は決めません。ですが、テリーには罰を」くっ
魂「!?」
シャリオ
趣味、テレビ鑑賞
注、[鑑賞対象が古い]
◇━◇
笑う犬、もっかい見たい、小須田部長。




