召喚士されし者 55・争いの火種
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あれから食事を御馳走になった俺達は、案内されるがままユミス家になっている別宅へと向かった。
別宅は本宅ほどでは無いにしろ、屋敷と言うには十分な大きさだった。用意された部屋は二部屋。俺とシェイリアに一部屋、ロイドに一部屋だ。
俺はシェイリアが風呂の準備している間、暇潰しにロイドの部屋に来ていた。今ロイドのベットでゴロゴロしている。
「もう、食えねえ。」
ソファーに腰掛けたロイドが、膨らんだ腹をポンポンと叩く。
見事なまでにポッコリ出たロイドのお腹。
俺は、駄目もとで聞いてみた。
「ちょっと叩いてもいいか。」
なんか生まれそうだ。
そんな思いを抱きながら。
「・・・いやに決まってんだろ。叩くって何だ、叩くって。」
「生まれそう。」
「なんも生まれないわ。仮に生まれるとしても、叩いたら駄目だろ。」
あっさり断られた俺は再びゴロゴロする。
「さっきから、ゴロゴロ、ゴロゴロ。一応俺のベットなんだけど。」
「柔らかいなぁ、このベット。いい匂いもする。」
「そのいい匂いはな、安眠出来るように執事さんが準備してくれたんだよ。ここで寝る、俺の為にな。いい匂いがお前の匂いになっちゃう前に、早く退きなさい。」
「・・・俺そんな臭いか?」
クンクンと体を嗅いでみるがよく分からない。
ローブを掴み上げ嗅いでみると、たしかに犬っぽい臭いがする。
「おい、おい。パンツ見えてるぞ、おちび。・・・はぁ、あのな、一応お前女の子なんだから、男の部屋でそう言うのは駄目だぞ。気をつけろ。」
臭いを嗅ぐ為にローブをたくし上げた俺は、確かにパンツ丸見えな状態だった。
「ふーふふふ。ロイドのすけぇべえ。」
「ほざけ、10年早い。」
「んだとコラ。」
ロイドと暫くじゃれあっていると、ドアがノックされた。
「ロイド、今良いだろうか?」
どうやら、ラーゴが来たようだ。
ロイドは俺を見る。
・・・ん?ああ、いいかって事?
俺が頷くとロイドはドアに視線を向ける。
「ああ。別にいいぞ。」
そうロイドが言うと、ラーゴが部屋に入ってきた。
なんだか屋敷で別れた時より疲れているような顔をしている。
ラーゴは俺に気づき足を止めた。
「いいから入ってこいよ。おちびにも聞いて貰った方が良い。」
「いや、その・・・。」
煮え切らない態度に、俺はぴんと来た。
「えっ!あれか、ユミスに告白でもすんのか!?」
「ぶっほっ!!??」
ラーゴが突然噴き出した。顔を真っ赤にして。
「な、なん、なんの事だか!?そ、そうじゃ無いんだけど、その拳竜家の話で。その。」
「そう言う事なら気にすんな。シェイリアの嬢ちゃんは確かに拳刀家に属しちゃいるが、俺とおちびは別だからよ。」
「そ、そうなの?ユーキさん?」
ラーゴが目を丸くして俺を見てきた。
俺は肯定の意味で頷く。
「・・・・そうか。いや、今更か。ユーキさん、ロイド、二人に聞いて貰いたい話があるんだ。」
「「?」」
そしてラーゴは静かに語り始めた。
「キリシマ拳竜術、元当主ハクア・ドラグナスが何者かに襲撃された。」
事の発端は、ユミス達がエルキスタの街を出てから5日程たった頃だったらしい。
その日、いつものように門下生を扱き、ハクアは街に出掛けたそうだ。武祭の打合せの為に、中央区にある役所に向かったのだとか。
しかし、それきりハクアは帰って来なかった。
翌日になり、ハクアが街の治療院に預けられている事を伝えられた執事さんは、数人の門下生を引き連れ直ぐ様当主の元に向かったそうだ。
そこで、執事達はハクアの無惨な姿を目にする事になった。
「命には別状は無かった。けれど、ハクア師匠はもう二度とまともな生活は送れないだろうって。実際、僕も見てきたけど、酷い状態だったよ。」
お腹をさすりながら黙って聞いていたロイドが口を開く。
「・・・・で、どうしたいんだ。」
「ロイド、力を貸してくれないか。これは友人としてではなく、冒険者である君への依頼だ。」
冒険者と呼ばれ、若干嬉しそうににやけるロイド。
「あ、お、まぁ、おう。━━内容をまず聞かせてくれ。」
おぉ、出来る男の顔だ。あれで本当に出来たらもてるだろうに。
「うん。君に依頼したいのは二つ。襲撃者の割出と、襲撃者の討伐の助力。その二つだ。」
今まで見た事もない程、ラーゴが殺気だった顔になる。
こんな顔を出来るもんなのかと、俺は眺めていたが、ロイドは冷や汗をかいていた。
コイツ、ビビったな。
「待て待て。討伐の手伝いだと?探すだけならまだしも、俺に戦えと?ラーゴ、今までお前は俺の何を見てきたんだ。」
「いや、君だからこそ頼むんだロイド。君の戦い方は旅の間に見させて貰った。確かに達人とまでは言えないけど、その冷静な判断力と空間把握の力は本物だよ。君のサポートが僕に必要なんだ。仮にも当主を倒す実力、もしくは方法がある相手だ。僕一人ではどうにも出来ない。」
「いや、でもなぁーー、あーーー、えーーーあっ、そう、報復的なのはいけないと思うなぁー俺は。」
おぉ、逃げおった。
「僕もそう思う。けれど、やられたのはハクア師匠だけじゃないんだ。」
ラーゴは懐から羊皮紙を取り出す。
そこには人名が記されているようだ。
「同じような手口で、ウチの門下生が10人以上被害にあっている。これからも被害者が増える可能性が高い以上、放っておく訳にはいかない。ユミスだって狙われるかもしれない。」
「待てよラーゴ。お前は、あれだ、武祭があるだろ。手伝いとか、ほら、色々あるだろ。」
ガッと、ラーゴがロイドの両肩を握る。
「頼むロイド!一緒に戦ってくれ!!」
ロイドは肩を揺すられ、頭がカックンカックンしている。
「わ、分かった、分かったって。・・・・引き受けてもいいが、期待するなよ?いざとなったら逃げるからな。」
なんとも格好悪い台詞を、ロイドは恥ずかしげも無く言った。
こう言う時は本当いい顔するなぁ、コイツは・・・。




