召喚士されし者 54・竜の根城
どうもです。
いつも読んでくださる皆様方。
感謝しております。
エルキスタは五つの区画で分けられている。
北区、東区、南区、西区、中央区の五つだ。
北区と東区は闘技場がある為か、闘技者関係の住人が非常に多いらしい。道理で通り過ぎる連中が、逞しい体をしている訳だ。
逆に残りの南区や西区は観光業に力を入れているらしく、宿や商店が乱立している商業区なんだとか。そして中央区は、ギルド連合の支部や政府機関がある、少し重苦しい感じの所だった。
俺が通ったのは、街の丁度ど真ん中。中央通りだけなので、区の特色はさわり程度しか感じとれなかった。まだ武祭まで時間はあるので、色々と見て回ってみたいものだ。
北区に入りしばらく通りを進むと、一際大きい屋敷が現れた。やはり灰色の外装に屋根が真っ赤だ。
街に入る前からやたらデカい家があるのは気づいていたが・・・。
「ユミス、あれじゃないよな?」
俺の問い掛けにユミスは首を振った。横にだ。
「あれよ。大きいでしょ!」
「デカいなぁ。ナダの貴族の家もデカかったけど、お前ん家のがデカいなぁ。本当に良いとこ御嬢さんだったんだな。」
「そうですね。ユーキ様に無謀にもケンカを売った人が、本当に御嬢さんだったなんて驚きです。」
「ぐふぅ!?ちょっ、その話は勘弁してよね。シア。」
「いいえ、これからもちょいちょい言っていきます。ユミスなら忘れかねないですからね。」
「うっ、幾ら私でも、そんな簡単には忘れないわよー、・・・えっ、と、多分。」
「ふふふ。」
おぉ。
すげぇ仲良しになっとる。
なんか親友っぽい。
仲良くなりそうな気はしてたけどさ、両方基本脳筋だし。
てか、俺もシア、とか呼んでもいいのだろうか・・・。駄目か、あれは親友専用か。
「どうした、おちび。羨ましそうな顔して。」
「なぁ、ロイド。」
「ん?」
「ユーちゃんて呼んでもいいぞ。」
「嬢ちゃんに殺されるからヤダ。」
「呼ばないと、俺が殺す。」
「悪鬼羅刹かお前は。」
そうロイドがツッコミを入れると、怒りを顕にしたシェイリアが割って入ってきた。
「貴様ぁ!顎髭!ユーキ様になんて事言ってるんですか!悪鬼羅刹って何ですか!その目玉はガラスですか、剃り上げますよその髭!!」
「偉大で可愛い悪鬼羅刹。」
「そ、それ、ん?まぁ、うん、・・・良いでしょう。」
「良くないわい。」
「じゃれ合ってないで行くわよーーー。」
「ご案内します。どうぞこちらへ。」
拳竜の二人に案内され、屋敷の門をくぐり鋼で作ってある玄関をユミスは勢いよく開ける。
「ただいまー!父上ー今帰りましたー!」
屋敷に大声が響き渡る。
すると、程なくして屋敷にいた門下生らしき者や、世話係りっぽい老執事が現れた。
しかし、その顔は歓迎しているような、そんな顔では無かった。何処となくよそよそしい感じだ。
老執事がユミスの前で深くお辞儀をする。
それにあわせ門下生らしき者達も一斉に頭を下げた。
「ユミス御嬢様、それにラーゴ。ご無事で何よりで御座います。して、この者達は?」
老執事は俺達を見る。威圧するような鋭い視線でだ。
同時にうっすらと殺気を乗せている。
何で気づいたかって?シェイリアが、俺の後ろで身構えたのが分かったからだ。
ロイドは・・・・あぁ、コイツは分かってすっとぼけてるな。
ユミスはそれに気づいているのか、気づいてないのかさっぱり分からないが、老執事に笑顔を見せた。
「ただいまベン爺。この人達は友達よ、友達!まぁ、拳刀術家の関係者だけどね!」
ユミスの様子を見て、老執事の殺気が霧散する。
どうやら、危険物扱いはされなくなったようだ。
「ほぅ。拳刀家の・・・・。武祭の件、どうやら上手くいったようですな。御嬢様、おめでとう御座います。」
「いいわよ、そんなの。それより父上は何処?修練場?」
そんな何気ないユミスの言葉に、老執事は目を逸らした。
「・・・ユミス御嬢様。取り合えずは、お客人方を応接間にお呼びしてはいかがでしょうか。長旅の・・・お疲れも御座いましょう。直ぐに、夕食の御用意をいたしますので。」
「あーー。それもそうね。・・・父上はいないみたいだし。じゃぁ皆は私についてきて、部屋に案内するわ!飲み物でも貰ってゆっくりしましょう。あ、ベン爺、この人達は私の家に泊まって貰うから、その準備もしといてね?」
「はい。かしこまりました。それと、ラーゴをお借りしても?」
「・・・・うんー。まぁ、いいわよー。またねラーゴ。」
「はい、ユミス御嬢様。」
ユミスに案内され屋敷を歩く。
玄関のホールもそうだったが、屋敷内も外見同様に竜岩石の灰色に染められていた。
そして通路にやたらと剥製が置かれていた。
「ユミス、コレ何。」
「ん?あ、コレ?私の父上が倒した魔獣の剥製よ。」
「コレ全部?」
「全部じゃないわ。拳竜の当主はね、就任する時に成竜の儀って言う儀式をするのよ。簡単に言うと、強い魔獣を単独で倒すの。そんで、その倒した魔獣を剥製にして、当主の証にするのよ。ここに並んでいるのは、各時代の当主達の儀の証。私も当主になる予定だから、その内ここに魔獣を並べて見せるわ。」
なるほどな。
儀式の証、ひいては当主としての証か。
見れば綺麗にしてあるから、相当大切な物なんだろうな。
「なぁ、シェイリア。拳刀家はないの?こう言うの?」
「聞いた事はありませんね。一応、師範代になる為に魔獣討伐は課題として出されましたけど・・・。あ、確か当主の代替えの時は、一騎討ちして勝てれば成れるはずですよ。」
「へー。そっか。」
「何だおちび。当主になりてーのか?」
「やだよ。面倒。」
師範代として一月過ごしたが、もう十分だ。
いい経験ではあったが、俺には合わない。
それに何より━━━━
「俺は召喚士だし。」
幾つかの剥製を通りすぎ、ユミスに案内され応接間にやってきた。
応接間は、うん。はっきり言おう。
自己主張が激しい部屋だった。
壁一面に金箔が貼られ、金の竜が描かれた屏風が置いてあり、真紅の革張りのソファーが備えてあった。テーブルは一枚の黒曜石を丁寧に磨いた一品で、鏡のように顔が映った。
極めつけは、壁に飾ってある、飛竜の頭部の剥製である。両の目に色違いの宝石が埋め込んであり、キバは白金の輝きを放っていた。
贅をこれでもかと凝らした部屋に、俺達はそれぞれ思った事を口にしていた。
「金銀財宝の山。まさしく竜だな。」
「そうですね、竜以外の何物でもないですね。」
「どんだけ金好きなんだよ。」
「いや、私はそんなに好きじゃないよ。こんなんより、お菓子の部屋とかのがいい。」
おい、次期当主。




