召喚士されし者 11・商港街道
太陽が高く上がった頃。
俺は最初の目的地であるエバーレントの町に着いた。
「それじゃユーキ様。私達は毛皮の換金にいきましょう。駅馬車に乗れる程度は欲しいですねー。」
「そだな。」
「3人分となると小銀貨6枚ってとこだな。」
俺とシェイリアの会話に、しれっと混ざってきたサリハン。
俺は流れるような動きで、サリハンの脛を蹴り飛ばす。
「ぐぁぁぁぁぁ!?バ、バカお前、脛は駄目だろ。脛はかじるもんで、蹴るもんじゃないんだぞ!」
「お前の脛なんてかじるとこないだろ。」
「汚さそうですしね。」
・・・シェイリア?
「まぁいいか。サリハン、うっとおしいからついてくんな。」
「仲間じゃねぇか?つれねーこと言うなよ、おちび。」
「俺が仲間になんのは、仕事の打ち合わせする夕飯の時だけだ。残念。」
「なぁっ!ぐぅ、そう来たか。」
「わかったわかった」と言いながら立ち上がったサリハンは右手をヒラヒラさせながら酒場へと向かって行った。
渋々去っていくサリハンの後ろ姿にシェイリアがガッツポーズをしたように見えたが、まぁそれはきっと気のせいだろ。
毛皮と余分な肉を買い取り専門の露店商に売りつけ、小金を得た俺達は町の広場へと向かった。
「おお!色んな店があるんだなー。おっ!見てみろよシェイリア。キンキラのオッサンがいるぞ、・・・つか、なんだあれ?」
「さぁ?なんですかね?」
「世の中には知らなくていいこともあるからなぁ。ーー知らないままにしておこう。それにしても随分賑やかだな、祭りでもしてんのか?」
辺りを見渡すと広場は露店とそのお客でごった返している。
町の規模から考えると妙な光景だ、お客が多すぎる。
「それはねこのエバーレントが商港街道を誘致した、三大宿場町の一つだからさ」
疑問に答えたのは露店のおっちゃんだった。
盗み聞きはいかんよ。
おっちゃんは売り物の地図を広げ、俺達に見せてきた。
「いいか嬢ちゃん、ここから北に向かっていくと、商港都市モウカルと言う港があるんだ。そこから城塞都市ナダに結ぶように整備された道がある、これが商港街道。流通の要所さ。」
「地図にはゴールドラインって書いてあるけど?」
「良いとこに気づいたな嬢ちゃん。そう、商港街道は流通の要所。当然人も集まる。人も集まれば物も集まる。人も物も集まれば金も集まる。だから、この国で一旗上げようとする連中がこぞって集まって商売するようになった。この街道は一攫千金を狙う商人達にとっての夢、金の鉱脈なのさ。」
なるほど、それでゴールドラインか。
「宿場町って言ったけど、宿なんてあんまりなかったよな?」
「そうですね、一軒だけでした。」
「あー。嬢ちゃんら、もしかして西から来たのか?」
「はい。グローリの町から来ました。」
「それじゃ知らんのも無理ないか。この町は広場を境に東と西とで自治体が違っていてな、西の連中は余所者嫌いで宿はいい顔されないんだよ。東にいけば何軒かあるから行ってみるといい。」
そうか、余所者嫌いか。じゃぁ西の酒場に入ったあいつは、さぞ面白い事になっているんだろうな。
「勉強になったよおっちゃん。じゃぁな。」
ガシィッ。
去ろうとした俺の腕をガッチリ掴んだおっちゃんがにこやかに語りかける。
「待てい、嬢ちゃん。せっかくだ、何か買っていってくれよ、安くしとくぜ。」
笑いかけるおっちゃんは、0がいっぱいの値札のついたマントを持っていた。




