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天使な悪魔の絶対運命  作者: みきもり拾二
◆【第四章】天使の卵
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(三)チームワーク:単独で!

 天井から襲い来る黒いツルを掻い潜り、別館のドアを突き飛ばすように開け放つと、停止しているエスカレーターを全力で駆け上っていく。


「うおおおおおおおお!」


 アドレナリンが吹き出して、全身が熱く燃えたぎっていた。


「『チッ! 上からも下からも横からも来やがる!』」

「『信術解! 永久凍土の……くっ! 邪魔だ!』」


 ヘッドセットの向こうから聞こえてくる双破と矢茨の声に、余裕が感じられない。まだまだ激しくやりあっているようだ。


「『ハノンちゃん、後ろ!』」

「『はいですの!』」


 副会長たちもなんとか魔物を捌いているようだ。


 そうこうしているうちに、一気に6階まで辿り着いた。屋上の遊園広場はこの上だ。

 しかしどうやら、本館からしか行けないようになっているらしい。


 立ち止まって、スマホで青色反応の場所を確認する。さっきから一歩も動いていないようだ。おそらく、物陰にでも身を潜めているのだろう。


「無事でいてくれよ」


 祈るようにしてつぶやくと、火山岩石化銃(ゼノリスガン)をエスカレーター脇におろした。


 そして本館への短い連絡通路を渡る。

 本館6階のフロアに出ると、薄い靄に煙ってはいたが、魔物の気配は感じられなかった。


「日向です。本館6階まで来てみましたが、魔物の気配はありません」

「『注意するんだ、日向。隠れ潜んでいる可能性もある』」

「了解です」


 答えながら、足早に屋上への階段を目指す。階下から、かすかに爆発音が響いてくる。


「『双破です。これから上に向かいます』」

「『オラオラオラァッ! オレも上に行くぜ!』」

「『カズマ、双破クン! 4階か5階へ!』」

「『了解です』」

「『一気に魔物本体を狙うぜ!!』」


 どうやら、俺たち4班が押し気味のようだ。これなら、子どもたちの身柄さえ確保できれば安心だろう。


 屋上へと続く階段を駆け上がり、開きっぱなしの戸口をくぐって外にでる。


 スマホで青い反応の出ている位置を確認しながら、そろそろと近づいていくと……小さくすすり泣く声が聞こえてきた。


「……あそこだ!」


 動物型の乗り物が陳列された向こう、サーキットスペースの隅っこに、子どもたちの姿があった。


「おーい、大丈夫か?」

「だ、誰?」


 ビクッとして3人がこちらを振り向く。


「俺はゼノリスの日向。キミたちを保護しに来たんだ」

「『日向、無事に発見か?』」

「はい、3人とも発見しました。怪我は特に……無いようです」

「『よし、良かった』」

「別館の方へ避難させるべきでしょうか?」

「『ああ、それがいいだろう』」


 本館の混沌反応も、来た時からするとかなり小さくなっている。別館はもう安全そうだ。


「『こちら埜之平! カズマと合流したわ! 双破クンはどこ?』」

「『4階に来てますよ』」

「『コト姉! オレたちは5階に行くぞ!』」

「『そうね!』」


 あと一歩のところで魔物本体を追い詰められそうだ。


「キミたち、安全な場所に避難するから俺についてきて。大丈夫、魔物はゼノリスが今戦ってるから」


 子どもたちが大きく頷くのを見て、ニコッと微笑みかける。


「いい子だ。こういう状況でもしっかりしてるな。大したもんだよ」


 頭を撫でてあげると、それぞれ少し気を取り直した様子を見せる。いやあ、素直っていいな。


「とりあえず、みんな手をつなごう。はぐれないようにね。焦らずゆっくりで大丈夫だから。こっちだ」


 そう言うと、屋上出口へと駆け足で向かう。


「『いやがった! 魔物本体だ! オリャアアアアアアア!』」


 ヘッドセットの向こうから、矢茨カズマの勇ましい声が響いてくる。どうやら魔物本体と遭遇出来たようだ。


「『カズマ、無茶しないの!』」

「『うるせー! こんな時に特攻しねーでどうすんよ!!』」

「『僕も5階に向かいます!』」

「『ハノンちゃん、周囲の掃討から! 八百万の御霊よ!』」

「『はいですの!』」

「『邪魔だァ!!! どけコラアァ!』」


 相変わらず、矢茨は肉弾特攻の様子だ。まあいい。

 魔物がそっちにかかりっきりになってくれれば言うことはない。


「6階に降りたら、別館まで行くからね。みんな、しっかり手をつないで離れないように」


 もうすぐ戸口、というその時だった!


 いきなり床がグラグラと激しく振動し始めた!


「きゃああ!」

「うわわわっ!」


 驚いた子どもたちが俺の腰にギュッとしがみついてくる。


 そして「ドゴオオン」と大きな衝撃音が響くと同時、目の前に黒いどデカイ何かが飛び出してきた!


「『逃げられた!? 上!?』」


 ヘッドセットから副会長の驚く声。


 飛び出してきた黒い影は、白い靄を吹き飛ばし、「ドン」と地響きを立てて屋上に舞い降りた。


 吹き上がる白い靄の向こう、まるで大木のような黒い大きな影がうねっている。

 そして俺の頭より高い位置に、赤く真っ赤に光る目。さらにその上方には、どデカイ黒い混沌流が渦巻いていた。


「魔物本体!? ウソだろ!?」


 驚愕する俺にヒュンと風を切り裂いて、イバラのツルが伸びて来る!


「ぐああああっ!!」


 左腕にグルグル巻き付いてきたかと思うと、激痛が駆け抜けた! 子どもたちに当たらなかったのが幸いだ!


「『どうした日向!?』」

「魔物が下から現れました! 応戦中です!!」

「『チイイイッ! 勝手に逃げてんじゃねええ!!!』」

「『屋上まで逃げちゃったの!? なんてこと!』」

「『安全を優先するんだ、日向くん!』」


 口々にみんなの声が聞こえるが、それを気にしてる余裕もない。イバラのツルはグイグイと俺を引っ張り込もうとしている。


「向こうに向かって走れ! 逃げるんだ!!!」


 子どもたちに呼びかけるが、みんな泣き声を上げるばかりで動かない!


「くっそ!!!! 火の精霊魔術! 焼き払え!!!」


 俺の精霊プリズムが赤い光を放ったかと思うと、辺り一面にゴオと炎が上がる!


「熱つつつ!!」


 思った以上に火力が出てる! おかげでツルが焼き切れて解放された。

 燃え盛る炎の向こうで、魔物が「ギエエエエエエエエエエエエッ!!!」と大きな雄叫びをあげた。


 その頭上に浮かぶドス黒い混沌が、共鳴するかのように「ヒイイイイイイイイイイ!」と悲鳴のような鳴き声を上げる。


「まずい!」


 もはや逃げ回っている余裕はない!!




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