(三)チームワーク:急所?
「こういう時、カズマがいてくれるといい囮になってくれるんだけど! ハノンちゃん、シールド展開とかできない?」
「お任せくださいですの!」
臨時補佐代理は頷くと、火山岩石化銃を地面に置いた。
「ロッキーくん、いきますですの!
──天より舞い降りし清浄なる雫よ!
光の園を潤す力となりて、我と我が信徒に祝福を!」
臨時代理補佐が両手を大きく動かして、手慣れた手つきで紋様を描き出す。そして右手をサッと振り上げると、肩に乗った青い小動物が青色の輝きを放った。
「防護シールド、展開!」
「ムッキュキューーーーーッ!」
臨時補佐代理が両手をサッと横に払うと、青い小動物が鳴き声をあげ、俺たちの目の前に青色に薄く煌めく半透明の膜を作り出した。
「これは……双破の防御シールドと同じやつだ」
違いといえば、臨時補佐代理の作り出したシールドは高さ3mほどの壁状だというところだろう。双破の作り出した防御シールドは球体状で、完全に俺たちを覆い尽くしていたが。
「これで大丈夫ですの!」
「サンキュー、ハノンちゃん! よぉし、あたしの腕の見せ所ね!」
副会長が矢をつがえ、宙に向かって斜めに弓を構える。
それとほぼ同時、防御シールドに波紋が広がって、黒いトゲを次々と受け止めていた。
「八百万の御霊よ! 破魔の炎となりて火の雨を!」
言いながら矢を解き放つ。副会長の精霊プリズムが赤く光り輝いて、矢の軌道に沿って、次々と火の雨を降らせた。
火の雨は魔物に降り注ぎ、すぐさま炎に包み込む!
「こんなこともできるんだ」
これには感心せざるを得ない。さすが、ゼノリス隊員なだけはある。
「でもこれじゃ前進できないわね。どうしよっか?」
副会長は冷静そのものだ。2体の魔物は炎に包まれのたうち回っているが、その向こうではすでに次の魔物が姿を現していた。
その光景に、ふと気づく。さっきから魔物は、地面に走るひび割れに沿って姿を現しているということだ。やはりあのひび割れの下に、魔物の何かが伸びているのだろうか?
「割れ目の下に、あいつらが出てくる何かがあるみたいですね。地面ごと爆破するとか、できたりします?」
「ひび割れた所を爆破すればいいのね? やってみるわ」
提案はしてみるものだ。副会長はすぐさま宙に向けて矢をつがえると、弓を引き絞る。
「八百万の御霊よ! 破魔の炎となりて破壊の力を!」
ビュンと矢が飛んで行くと同時、精霊プリズムが赤く光り輝く。そして弧を描いて矢が地面に着弾すると……。
ドオオオオオオン!!!!
轟音を響かせて、地面が弾け飛んだ。白い噴煙が上がり、視界を遮る。
「さぁて、どうかしら?」
副会長は次の矢をつがえながら白い噴煙を注意深く観察している。
爆発で立ち上った白い噴煙が徐々に晴れると、地面に深々と丸い穴が開いているのが見て取れた。
スマホを見ると、本館の方から伸びていた混沌反応が消えている。どうやら副会長の攻撃で、魔物の部位を破壊したようだ。
「……大丈夫そうですね」
「あはっ、そうみたい。地下茎タイプの植物なのかしら? 根っこを攻撃するといいみたいね!」
「『双破、矢茨。地表に現れるものを攻撃しても無駄なようだ。地中の根っこを攻撃しろ』」
「『そうじゃないかと思って、すでにやってます。効果があるみたいですね』」
「『チッ! 地面の中か!』」
ヘッドセットの向こうから二人の声が聞こえてくる。
「火山岩石化銃は2つとも俺が運びます。路地を出て、右手に別館があるのでそっちへ向かってください!」
「オッケー! いくわよ、ハノンちゃん! いざという時は、さっきみたいに防御シールドよろしくね」
「はいですの!」
副会長が建物沿いにオープンカフェへと小走りに走り出る。臨時補佐代理の後から、俺もついていく。
このあたりには混沌反応が出ていない。地下茎のようなものが伸びてきていないのだろう。
白い靄に薄く煙るオープンカフェには、パラソル付きのテーブルセットが整然と並んでいる。その広場の向こう、正面にイーマル百貨店の文字が掲げられた建物が堂々とそびえていた。
あれが本館だろう。その壁に、黒いひび割れが植物の根のように張り巡らされているのが目に映る。
「あのひび割れみたいなのは……魔物の一部でしょうね」
「さっきのからすると、そんな予感がするわね」
上の方まで見上げてみるが、白い靄で煙ってよく見えない。ただ、黒い筋の這い方を見る限り、魔物本体は3階より上にいるような気がした。
広場の右手には、本館と同じ色をした細長い建物が寄り添うように建っている。それが別館らしい。
別館の壁には、黒い筋が見当たらない。
「こちら日向です。オープンカフェ付近に魔物の気配はありません。作戦通り、別館から侵入を試みます」
「『ああ、そうしてくれ』」
隊長の言葉に、副会長と目を合わせて頷き合う。魔物に気取られないように、自然と息を潜め、足音を立てないように別館へと向かった。




