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天使な悪魔の絶対運命  作者: みきもり拾二
◆【第三章】新生活は突然に
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(ニ)悪魔の館:敵か味方か

「さて、準備も整ったようだし、皆も揃ったようだね?」


 屋敷の大食堂。そこには、この屋敷の関係者全員が集っていた。

 上座についた盾冬教授が、立ち上がって部屋全体を見渡す。


 その左横に、俺は座っていた。

 俺の横には、ユリル、老婆の実原(みはら)さんが並び、次いでスナック経営の女性二人、川上さんと藤本さんが並んでいる。その対面には、雀荘経営の中島夫妻。そして席をひとつ開けて、下座には真舟質店の店員浅沼(あさぬま)さんが陣取っていた。


 メイドの永嶋さんと、執事の堀内さんは、給仕のためにそれぞれ左右に立って待機している。


 そして、俺の対面だが……某SF映画に出てくる犯罪組織の首領を思わせるような、でっぷりと太った夫婦が陣取っていた。


 ブヨブヨした肉が、服のあちこちからはみ出している。腕は丸太のように太く、顎は脂肪で隠れてどこにあるのか分からない。ほとんど首と一体化してるような感じだ。その顎肉か首の肉かはわからないがブヨブヨした皮膚に、縄目のような痣が浮き上がっていて、ぐるりと、二人の首を一周している。それがなんとも不気味で寒気すら感じる。

 さらには2人の前に置かれた料理の量が際立って多い。その光景に、なぜか食欲が失せる気がした。


 その横にはあの男の子。どうやらこの三人は、ユリルの家族らしい。


 ユリルは悪魔のはずなのに、どうして家族がいるのか……? 彼らも、同じく悪魔ということだろうか?

 俺はユリルを守りたいと思っているけど、じゃあ、この人たちはどうすれば……?


 席に座って以降、そんな疑問が沸々と湧いてきていた。当のユリルは、そんな俺の様子を気にする素振りもなく、宴の進行を穏やかに見守っている。


「……ああ、小倉くんがいないようだ」

「今日一日、誰も小倉を見かけてねえようですわ。大方、取材に出たっきり戻ってねえんでしょう」

「ふむ、そうなのか。まあ彼はいつも忙しそうだしね。では、これで全員としよう」


 頷くと、教授はワイングラスを手にとった。


「まずは、我らが邸宅に新たな住人を迎え入れたことをお祝いしよう。日向ナツトくん、ようこそわが邸宅へ」


 教授がワイングラスをかざすと、皆が俺に向かって同じように手にしたグラスをかざしてみせる。そのあと、めいめいにグラスに注がれた酒やワインを飲み始めた。


 ユリルも、俺の横でにっこり微笑んでいる。


「まさか、ナツトくんと一緒に暮らすことになるなんて」

「ホントだね」


 不思議な縁というか……。これが絶対運命の枷によって仕組まれたモノじゃなければいいが……。

 そんな不安も感じないではない。


「ではみなさん、食事をしながらで。ナツトくん、挨拶をしてもらってもいいかな?」

「あ、はい……」


 俺は席から腰をあげると、姿勢を正した。


「えっと、この度、ここでお世話になることになりました、日向ナツトと言います。えっと、高校生です。急な話で、自分もまだちょっと戸惑ってますが、どうぞよろしくお願いします」


 と言って頭をさげた。軽く拍手をもらって腰を下ろす。


「師匠はすげえんだぜ! A級モンスターもノーダメで倒すんだ!」


 さっきまで一緒にモンスレをやっていた男の子、ユリルの弟『イヅル』が得意げに声をあげる。ほんの1時間ほどだが、俺は早くも『師匠』にまで昇格したらしい。


「一緒に遊んでもらったの? 珍しいのね」


 ユリルが小首を傾げる。


「師匠、馴れ馴れしくってさ! 仕方なく相手してやったんだよ」


 食事を頬張りながらイヅルが生意気なことを言う。


「でも俺の姉ちゃんに気安く手を出すんじゃねーぞ。いくら師匠でも地獄の炎にくべてやるぜ?」

「ぶっ……!」


 イヅルの言葉に笑い声が上がる。ジミー・ケンゴーの戦闘前セリフを交えて笑いを取るとは、コイツ、結構やるな……。



「そんなことより、一体全体、なんでまた、ここへ来ることに?」


 のんびりとしているが抑揚のある声で、ユリルの父親が話しかけてくる。


「やはり気になりますかな?」


 教授がイタズラっぽい笑みを浮かべながら尋ね返す。


「さよう。なんせ我々は、皆、曰く付きですからなぁ」


 そう言って「ほっほっほっほっ」とユリルの父親が笑う。その間も、ムシャムシャと料理を手掴みで頬張っている。その横でユリルの母親が同調するように笑いながら、同じように手掴みで料理を食べ続けている。


 なんだろうな、これ……。


 さすがに薄ら寒いを超えて、異常を感じざるを得ない。しかし、他の住人たちにとってはいつもの風景なのか、それぞれに料理と歓談を楽しんでいるようだ。

 チラリとユリルの様子を伺うが、特に気にする様子もない。ステーキを小さく切り取って口へ運んでいる。


「ふむ。ナツトくんも気になっているだろうし、この席で伝えておくことにしようか」


 ナプキンで口元を拭うと、教授が腰をあげる。


「ああ、皆さん、食事をしながらで聞いてもらいたい。こちらの日向ナツトくんだが、実は……」


 チラッと俺の方を見て笑みを浮かべる。



「天使の使徒だ────我らが悪魔、ユリルくんを天使の前に引きずり出す運命を背負っている」



 教授の言葉に文字通り、その場が凍りついた。皆の視線が俺に集中する。それは冷たく、突き刺さりそうなほどに鋭い視線だった。

 ユリルも少し驚いた様子で、口に手を当てて教授の顔色を伺っている。


 それとは別に俺は一人、ユリルが悪魔であるという証言に身震いを覚えていた。すでに分かっていたことだが、教授からはっきり言われると、「やはり」と思わざるを得ない。


「キサマ、敵だったのか!?」


 浅沼さんが「バンッ」と机を叩いて立ち上がる。食事中でも濃いサングラスを掛けている。


「一体どういうことなんだ教授! そんな輩をここに迎え入れるなんて正気の沙汰じゃねえ!」

「まあなんていうことでしょう……!」

「天使……使徒……我が娘ユリルを……天使の前に……」


 皆の間に動揺が走っているのが手に取るように分かった。イヅルでさえ、口に入れた料理がこぼれているのにも構わず、俺の方をポカンと見ている。


 いや、これはちょっと……まずいんじゃないかな。なんで、こんな状況にしちゃうのか……。




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