(三)二刀流:悪魔術がダメならば!
「くっ!!!! 混沌よ!!」
俺の呼びかけに、混沌が復活する。瞬間、魔物が俺めがけて大量の液体を吐き出してきた!
ブワッと投網のように広がって、俺の周囲を包囲する!!
「深影忍法!『逆境転身』!!!」
ボンっと煙に包まれたかと思うと、瞬時に俺の身体は魔物の頭上に移動していた! モンスレでも悪評高い、瞬間移動技だ!!
背後で「ザバア!」と大量の液体が地面に撒き散る音がして、猛烈な匂いが漂ってくる。喰らっていれば命は無かっただろう。
危険を察知した魔物がバサリと羽ばたいて、後ろへ大きく飛び退いた。入れ替わるようにして、魔物のいた場所に俺はスタリと着地する。
「ケエエエエェェェェ」
魔物は一声あげると上空へと舞い上がる。そして俺の頭上を旋回し始めた。こちらの手の内を知って警戒しているかのようだ。
「同じ手は通用しないか……」
空を見上げつつ、大きく肩で息をする。額から大粒の汗が流れ落ち、少し疲弊しているのを感じていた。
トドメを刺すチャンスを逃してしまった代償は大きそうだ。しかし、相手が空高くいるうちは、俺に上手い手立てが無い。頼みのモンスレには、空中戦が無いからだ。
飛び道具キャラの技や遠距離魔法を使う手もありそうだが、相手の動きが予測できない上にあの滑空スピード。当たるかどうかもわからないし、隙がデカすぎるのも難点だ。
「……飛んで、空中戦を挑むしかないか?」
緊迫した戦いの中で慣れないことをするには勇気がいる。それにさっきの魔物の雄叫びも気になる。モンスレのモンスターがやるアクションキャンセル攻撃に似ていた。悪魔術で飛行できたとしても、その最中にあれをやられると致命的になりかねない。
「どうするか……どうすればいい?」
迷って思わず、左手首の『絶対運命の枷』を見る。
「これを使えば、もしかすると……」
あの雄叫びの中でも、精霊魔術なら大丈夫なんじゃないだろうか? 確信は無いが、試してみる価値はありそうだ。いざとなったら、『逆境転身』で逃げ切るしか無い。もしもそこを反撃されると、ジ・エンドだが……。
思考を妨げるかのように、上空の魔物が一声鳴いて、あの液体が降り注いでくる。
慌てて駆け出すと、俺のいた場所に大きな液体の塊が降り注いだ。むせるような臭気が辺りに漂う。
どうやらジワジワとこちらを弱らせる作戦のようだ。このままでは、公園に隠れている少女にも危害が及びかねない。
ゼノリスが来るまでこのまま時間を稼ぐのもありだが、こんなところを見つかると、かえって厄介な気がしてならない。戦いに打って出たからには、俺の手で決着をつけたいところだ。
やるしかない。今はその時だ!
意を決すると、降り注ぐ液体を避けながら、俺は絶対運命の枷を起動した。盤面が緑色に発光し、白い針をグイッと動かす。あの音声が頭の中に響いて、俺の精霊プリズムが白く発光した。
「風の精霊魔術よ! 俺に飛空の力を!」
精霊プリズムが紫色に発光すると、まるで強い追い風を受けたように背中がグイっと押された。
「うわっとっと!!」
思っていたのと違う効果に、体勢を崩して地面に転がる。
「ストップ! ストップ!!」
俺の声に精霊プリズムの発光が緩やかになる。どうも風属性の精霊魔術だけでは、加速できても空を飛ぶまでは無理なようだ。
この間にも、魔物がしつこく液体を撒き散らしてくる。
「くっそー! どうすれば……」
必死で思考を巡らせる。確かモンスレのアンナ様は、重力の魔法で浮き上がっていたはずだ。
「土の精霊魔術で重力制御!」
精霊プリズムが緑に発光すると、フワリと両足が地面から離れる。
「風の精霊魔術で上昇!」
瞬間、強風を背に受け、俺の身体が空へと急上昇を始めた! しかし!
「ちょっ! うわっっ!!!」
上手く体勢を制御できない! 俺の身体は猛烈な勢いで魔物に向かって突進する!
「うわあああああああああああああああああああああああああ!!!」
酷い! 自殺行為だ!!




