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天使な悪魔の絶対運命  作者: みきもり拾二
◆【第一章】悪魔を狙う天使の使徒
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(二)ゼノリス:金髪の男

 剣先の向こうから男が俺を見下ろしていた。男の左肩あたり、宙を漂う精霊プリズムの姿もある。


「テメー、ここで何をしてやがった? あン?」


 男の金色に染め上げた髪が風にヒュウと煽られ、耳のピアスがキラリと陽光を反射した。羽織るように着崩したYシャツの間からは、隆々とした筋肉が顔をのぞかせている。

 口元はニヤついているが、目は笑っていない。冷たい色を帯びて、一分の隙もなく、俺を見据えている。

 歳は俺と同じ高校生ぐらいに見えるが……とにかく見るからにヤバそうな雰囲気の男だ。


 俺が戸惑っていると、男がさも気に入らないとばかりに眉根を釣り上げた。


「答えろよ、ボロ雑巾。さもねーと……」


 不意に、男の精霊プリズムが黄色い光を帯び始める。俺に向かってかざしている細剣が、ピリピリと音を立てて電撃のようなものを纏い始める。

 精霊魔術だ。雷属性の精霊魔術で……俺に攻撃を加えようっていうのか?


 ふと、精霊魔術の育成プログラムで言われたことを思い出す。『一億総精霊魔術師計画』の裏で、増加し続ける『魔術犯罪者フェロン』のことを。


「(もしかしてコイツは……?)」


 見るからに悪そうな外見と言い、無作法な物言いと言い……!


「精霊プリズムはどうした、あ? 術符なんざ頭にくっつけて何してやがった、あ? おまけにひっでー混沌創……怪しさ満点、不審人物の三倍役満たぁテメーのことだ!」


 ……何を言ってるんだ? 男の言葉の意味が、すぐに飲み込めない。


「せ、精霊プリズムならここに……」


 言いかけてハッとする。いつも精霊プリズムがいる右後ろ斜めを指差すが、そこに精霊プリズムの姿は無かった。

 驚いて辺りを見渡すが、どこにも精霊プリズムの姿がない。


「ふざけんじゃねーっ、つってんだろがボロ雑巾!!!!!」


 やにわに、男が剣を逆手に持ち替えて振りかざす! 電撃がほとばしり、次の瞬間、俺めがけて剣を振り下ろしてきた!


「ひぃっ!!!!」


 咄嗟に腕をクロスさせて防ごうとする俺の足元で、「ドォン!!」と衝撃音が響いた。土埃と小石が勢い良くはじけ飛び、俺の身体にぶち当たる。

 恐る恐る目を開けると、股の間の地面が大きくえぐれて、男の細剣が深々と突き刺さっていた。


「『鬼人』あるところ悪魔あり! テメー、ミストの中で何してやがったって聞いてんだよ、ああ?!」


 キジン……? 悪魔……? ミスト……?


「あ……」


 ミストと聞いてハッとした。


「(そうだ……自販機のところでミストが発生したんだ!)」


 その時の光景が脳裏に鮮明に蘇る。響き渡るサイレンとアナウンスの声、白い靄に霞みゆく軒先、スマホの接続無しの表示……。


「(……そうだ、俺は確かにミストに巻き込まれたんだ……)」


 だがその後、自分の身に何が起きたのか……? それを思い出そうとするとあの鐘の音がまた響いてくる。ズキリとした頭痛と共に目眩がして、再び額を手で覆う。


 一体俺は……何がどうなってるんだか全くわからない!!!




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