57 ユミナの救援
「現れたな妖精風情が! わかっていますよ、お前はもう力が衰えているのでしょう? 我らがこうして森で自由に動けるという事こそがその証です」
「⋯⋯あなたの言う通り。私の力は⋯⋯弱まっています。ですが⋯⋯それが他に知られることは⋯⋯残念ながらありません」
「やれるものならやってみればいい。弱ったお前に何が出来る」
「⋯⋯愚かですね。自分のいる状況も⋯⋯理解できないとは。イリナさん力を⋯⋯借りますね?」
そう言ってユミナが手をかざすと、イリナの魔法で出した木々の根が伸びてトッティーン達を捕らえる。
そして次の瞬間、凄まじい力で締め上げるような音とうめき声が、辺りに響いた。
「おのれ⋯⋯妖精が⋯⋯」
抵抗しようとしたトッティーン達だが、それだけを叫ぶと根の中で意識を失った。
「危ない所でしたね⋯⋯間に合ってよかったです」
「ユミナ様、助けてくれてありがとうございます」
「たすかったの!」
(でも、どうしてここが?)
「街でエルフに襲われたという話を⋯⋯セイガから聞いていましたので⋯⋯私も森の端まで来ていたのです⋯⋯そして、遠くから暴れる音と⋯⋯ティトのあの姿が見えました」
俺が巨大化した事で、ユミナが俺達の存在に気が付いたようだ。
考えなしの行動だったが、結果としては正解だったと言える。
まあ、我ながら運が良かっただけなのだが。
そんな話をしていると、ユミナの後ろからセイガさんと数人の獣人が走ってくるのが見えた。
「セイガまずは⋯⋯不埒者を連れていく⋯⋯指示を出してください。それから⋯⋯応援を呼ぶ必要がありますね」
ユミナの指示で獣人達が動く。
ダレンさん達はまだ目が覚めていない。
意識のない二十人近くいる人間を、ここに来た者達だけでは運び出せないのは確実だ。
トッティーン達を、俺の出したツタで縛り上げて、獣人達が担いで森の中に走って消える。
(ダレンさん達は毒を盛られたみたいなんだ。毒は出来るだけ鑑定吸収を使って吸収したけど、まだ残ってるかもしれない)
「わかりました⋯⋯村に連れて行く前に⋯⋯治療をしてしまいましょう。ティト⋯⋯今から言うものを⋯⋯出してもらえますか?」
俺はユミナに言われた薬草とキノコを次々に出す。
それとは別に、セイガにも指示を出して、俺の持っていない種類の薬草を集めさせていた。
そして、集めた素材にユミナが手をかざすと空中で混ざり始める。
ユミナはイリナの魔法で出した木の根を使って、トッティーンを縛り上げていた。
恐らくユミナには植物を操る力があるのだろう。
最後に凝縮された滴を、イリナの買った中華鍋に入れた水に落とすと、濃い緑の液体に変わった。
「それを⋯⋯飲ませてください。⋯⋯エステル、あなたも飲んだ⋯⋯ほうが良いですよ?」
「私は毒なんて盛られてないわよ」
「⋯⋯森の魔力も⋯⋯混ぜる時にふんだんに⋯⋯入れました。しばらくは効きますよ?」
「⋯⋯いただくわ」
(よし。手分けして飲ませちゃおう)
「「おー!なの!」」
同じくイリナの鞄に入っていたお椀を使って、手分けして飲ませていく。
すると、表情はあまり変らないものの、伝わってくる感覚は楽になっているようだった。
一通り村人にも薬が行き渡った頃、獣人達が大勢を連れて帰ってきた。
そして、すぐに全員を背負う。
「⋯⋯それでは近くのシュニスの村へ⋯⋯向かいます。付いて来て⋯⋯ください」
ユミナが先頭になり移動を開始する。
その道中で、俺は力を使いすぎた影響か眠気に襲われてしまう。
「寝てていいの」
イリナにそう言われて、甘えても良いかと思い、俺はイリナの手の中で意識を手放した。




