42 そして呼び出される関係ない商人
館に戻った俺達はすぐにヴァルタさんに、招待客の内の一人にイリナが襲われた事を伝えた。
ヴァルタさんは目を見開いた後、すぐに俺達に謝罪してトッティーンの身元を調べてくれた。
そして、すぐに捕らえるべく騎士を向かわせたが、襲撃が失敗した後すぐに逃げたようで、消息は掴めなかった。
トッティーンがマルス共和国の商人と言う事実から、この街に店舗を持つマルス共和国の別の商会長であるアガーレがいま呼び出されている。
俺達の隣にはガーガル辺境伯もいる。
大変なプレッシャーの中、事件を聞かされたアガーレは顔を青くして謝罪した。
「この度は、我が国の商人の起こした不始末、誠に申し訳ございません。しかし、決してマルス共和国のエルフの商人が全員トッティーンの様な考えではないことだけはわかっていただきたく⋯⋯」
アガーレさんが跪き汗を滲ませて弁明する。
それに、付け足すようにヴァルタさんが説明する。
「ティト殿から聞いたトッティーンの言動の内容から察するに恐らくは『魔力の高いエルフで世界樹を作り出す』事を目的としているテロ組織のマームの一員であったと思われます」
「マームか⋯⋯世界樹を信仰しているエルフの中でも異端者たちと聞くが、まさかこの都市にまで入り込んでいようとわな」
「イリナ様の魔力の大きさに目をつけたのでしょう」
「平気で誘拐のような事もする奴らだ。今後の対策も兼ねて、マルス共和国には抗議と協力の打診を送る。情報が出揃うまでイリナの嬢ちゃんにはカイトに留まってもらうが良いよな?」
「かまわないの!」
ひとまずはイリナの安全を確保するため、もうしばらくカイトに留まることになった。
話し合いが終わると、セイガさんがばつが悪そうにイリナに謝ってきた。
セイガさんの話では、どうやらあの時のギルドであったセイガさんの友人達がトッティーンに情報を漏らしてしまったらしい。
この街までトッティーンの護衛を努めていたらしく、報酬を受け取る時についうっかりイリナと俺の事を使用人に言ってしまったようだ。
(まあ、まさか同じエルフであるトッティーンがイリナを襲うとは思わないもんなー。そもそも、冒険者登録している時点で隠してなかったし)
気になるのは、ユミナ様が少し関わっていそうだったことだ。
前に森にエルフはいないと言い切っていたことから、森に来たエルフを追い出したりしたのかもしれない。
だが、さすがに直接「エルフと因縁あるの?」とは聞きけないのでそのことは保留にしよう。
昨日の今日で街に繰り出す気にもならないので、館でお肉パーティーだ。
スパイスの大盤振る舞いをして楽しんだ。
ガーガル辺境伯にも出した所、目を血走らせて勧誘されたが、一ヶ月分くらい出す事で納得してもらえた。
かなりな高額で買い取ってくれたので、当分は路銀には苦労しないだろう。
そして⋯⋯
(ふー。やっぱり日本人は風呂だよなー)
「ノエル泡いらないの!」
「あっ、イリナちゃん逃げちゃったら洗えないよー」
「こう言うのもわるくないわねぇー」
なんと、お礼とばかりに大浴場まで使わせてもらえたのである。
この世界に転生してから初めて入る熱い湯船に、俺は心も体も癒されていた。
イリナやノエルと一緒に入る事になったが別に意識はしなかった。
クッションや布団になっているので、いまさらである。
(俺もすっかりスライム生が板についてきたなー)
このまま湯船に解けてしまっても良いかも、そんな事を思いながら俺は湯に浮かんでいた。
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